第11話『茶筒の檻の正体』

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記


011『茶筒の檻の正体』   





「これはガスタンクだわよ」



 茶筒の檻の写真を見ると、老眼鏡もかけないで、あっさり言った。


「だって、お祖母ちゃん、こっちのは中身が無いんだよ、ただの檻だよ!」


 証明写真を撮りに行った日の檻だけになった写真も見せて説明する。


「昔はガス圧が足りないとかで、あちこちにガスタンクがあってね、溜めておいて少しずつ流したり、ガスを融通しあったりしたとか。それで、ガスが少なくなったら縮むんだよ」


「ええ、ほんとう!?」


「ガス会社に勤めていたわけじゃないから専門的なことは分からないけどね、みんな、そう思ってたよ」


「な~んだ……」


「そんなのググったら出てくるでしょ」


「んなの、いちいち検索しないよ。それに、茶筒の檻だって思ってたし。ひょっとしたら、ガンダムとかエヴァの格納庫とかさ……ほら、コンセプト似てなくなくない?」


 もう一つ別の最近の写真を見せてやる。


「え、なに、CG?」


「違うよ、実物大ガンダム。横浜にあるんだよ。ほら、動画もあるよ!」


「え…………お、おお!」


「中学の授業が終わった次の日に行ってきたの、壮観でしたよぉ!」


「なるほどぉ…………お祖母ちゃんの時代は鉄人28号だったからねぇ、テレビで実写版とかやってたけど、着ぐるみのショボい奴でねぇ。こいつは男前なロボットだねえ。だれか操縦してんの?」


「うん、中にパイロットが入ってグイグイやんの。完全にシンクロすると死んじゃうんだよ、で、使用を禁止されたりとかね」


「なんか、おっかないねえ。鉄人は正太郎くんがリモコンで操縦するんだけどね……ほら、こんなの」


 杖代わりにボールペンをクルリと回して3Dの映像を出すお祖母ちゃん。


 さすがに、スマホでも魔法には敵わない(^_^;)


「……なんか、デブで足短い」


「昔はこうだったのよ……おお、ガンダムも飛ぶか!?」


「設定じゃ飛ぶんだけどね、さすがに飛びません(^_^;)」


 確かに、しゃがんで片膝たてたポーズは期待しちゃうけど。せめて、走れ!……とかね。


「なるほど……こういうの見たから、ガスタンクの鉄骨とか見ると思っちゃうわけだ」


「まあね……他にも、駅前はこんな感じでね……」


「ああ、そうだそうだ。70年は万博の年だったんだ!」


 商店街に流れる三波春夫の『世界の国からこんにちは』に目をへの字にするお祖母ちゃんも可愛い。


 自粛しているつもりだったけど、いつの間に撮ったんだという写真や動画とかあって、自分でもビックリ。


 明日は証明写真ができあがる。


 それを受け取りに行って、その次は、いよいよ入学式。


 わたしの時空を超えた越境入学が本格的に始まる。


 ワクワク


 お祖母ちゃんと、いろいろ話したせいか、明日は写真を受け取りに行くだけなのに、ちょっと興奮して夜更かしをしてしまった。




☆彡 主な登場人物


時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生

時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女

宮田博子


 


 

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