第59話 妹も興味津々なようです。
私の全力メイドさんのお願いを、ルルの妹である
――恥ずかしいっ!! ……じゃなくて、絶対変な誤解されているよっ。穗純ちゃん、私のことすごい目で見ているし。
「えっ。あの、ごめんね、今のはちょっとした冗談みたいなもので……」
「あっ、そ、そうだよね。……お姉ちゃんのお友達さん面白いね。なんか可愛いし」
「あはは」
フォローしてくれたのだろうか、年下に可愛いと言われてなんだかいたたまれない気持ちになった。
苦笑いしつつ、依然として怪しまれているのを肌で感じる。できればルルにもなにかしら言ってほしいのだけど、
「お、お姉ちゃん!? どうしたの、鼻血出てるよ!?」
――こっちの問題もまだ解決できていないんだよね。……それと、鼻血!?
「るっ、
「ゆじゅひゃふぁん……名前も呼んでくれて……」
顔も耳まで真っ赤で、ポタポタと流れる鼻血も気持ち勢いを増しているような。怖い。
「ちょっと安静にしとこうか。ほ、ほらティッシュ……えっと、これ使わせてもらうよ」
手近にあったティッシュ箱からいくつかティッシュペーパーを抜き取って、ルルに渡そうとするがどうも受け取る余裕もなさそうだ。
仕方なくそのまま鼻に押し当てる。
鼻筋の通った白く可愛らしい鼻をそっと押さえて、背中をさすってみたが、これで正しい介抱なのだろうか。叩いたほうがいいんだったか。
「……あの、本当にお姉ちゃんとなにしてたんです?」
穗純ちゃんの敬語がなにか距離感を見せられているようだった。
――なにをしていたのか、……おねだり? いやいや、そんなの言えないし。
「すみません、
正気になったルルが、私からティッシュを受け取って、頭を下げた。
血の後が拭い切れず、ルルの可愛らしい顔に残っている。
白い肌が血に汚れている様は、非常に妖艶でなにか背筋を冷たくさせた。
「え!? ああ、うん。私は平気だけど……。薬利さんはちょっと鏡見てきたほうがいいかも? 服も平気?」
「はい。すみませんが……」
とルルはそそくさと洗面室へ向かった。
頭も冷やしてきてくれるといいんだけど。
ルルを見送ってから、床を軽く見回したが汚れてはいなそうだった。
血そのものに驚いてしまったが、たいした量ではなかったのだと思う。――いや、量の問題ではなく、ちょっとあれなんだけど。
「
「え? あ、うん、どうかしたかな穗純ちゃん」
気が抜けていたところで、名前を呼ばれた。
「お姉ちゃん、いつもと全然違ったんですけど……姫草さん、なにかお姉ちゃんのこと騙してませんか!?」
「ええっ!? だ、騙す!? 私が!?」
「お姉ちゃんちょっと天然で、すっごい純情なんです。だから上手いこと言いくるめられて、手を出そうなんて……してないですよね!? 妹が言うのもおかしいですけど、穗純のお姉ちゃん可愛いし」
「いやいや……」
――まさか、そんな誤解をされるとは思いもしなかった。
ルルの家族内での地位を守るために頑張ってフォローした結果、思い返してみれば私が必死に誤魔化すあまり、なにかやましいことがあるように映ったのかもしれない。
――だけどさ!?
正直、心外である。私が幾度となく襲われかけてきた被害者だというのに、まさかそんな疑いの目を向けられることになるなんて。
「本当のこと言ってくださいっ! お姉ちゃんになにかしようってつもりなら、穗純が黙ってないですからねっ!!」
「違うって、最初に説明したけどただの友達で」
「ただの友達がメイド服着ますか!? メイド服で料理作りますか!? ま、まさかいかがわしいサービスとかじゃないですよね!?」
「まず、いかがわしいサービスってなに……?」
穗純ちゃんがどんなサービスのことを頭に浮かべているのかわからないが、中高生であろう彼女にあまり変なことを考えてほしくない。
だいたいどこでそういう知識を仕入れているのか。
「わ、わかんないですけどっ!! なんかこうっ、メイドさんが家に来てあれこれしてくれるやつですよっ!!」
「……出張家事代行サービス?」
「そういう健全なのじゃなくて、もっとこういかがわしいやつですっ! 姫草さん、可愛いですしっ。きっといろんな人騙してきたんですよねっ!?」
「えええぇ!? そんなことは――」
してない、とはっきり否定したかったのだけれど。――姫プレイのことを言われたら、違うとも言い切れない。騙しているつもりではないけれど、私の可愛いところをちょっと利用してはいたような。
いや、穗純ちゃんみたいな本当に可愛い女の子の前で、自分可愛いからそれを悪用してましたみたいなの恥ずかしいんですけど。
「い、今言いよどんだっ!! やっぱりですっ、姫草さん、魔性の可愛さでお姉ちゃんのこと騙そうとしてるんですねっ!? 穗純のお姉ちゃんが可愛いから、お金だけじゃなくて手も出そうとしてっ」
「してないしてないっ!! あと、なにその魔性って!?」
「あのおねだりはなんだったんですかっ! ご主人様とかお仕置きとかっ!! 絶対そういうアレですよねっ」
「だからそういうアレっていったい……」
具体的にどういうことかはわからないけれど、完全に誤解されてしまったようだ。
どうしよう。私が被害者側だってどうしたらわかってもらえるんだろうか。
ルルの悪行ぶりを家族に教えてでも、自分の名誉を守るべきなんだろうか。
――穗純ちゃんにおかしいやつだと思われるのは、まあ最悪あきらめるにしても、この警戒ぶりだと『もうこれからはお姉ちゃんと遊ばないでください』みたいになりかねない。
なにか上手い言葉をひねり出そうとしていたところ、穗純ちゃんはやや赤らめた顔で、
「ち、ちなみになんですけど、い、いくらくらいなんですか?」
と聞いてきた。
「え? いくらって?」
「……姫草さんに、メイドさんとして可愛くサービスしてもらうのって、いくらくらいなんです?」
「えええぇ!? いや、いくらって……」
「ちっ、違いますよっ!? 別に、それ聞いて穗純も姫草さんにサービスしてもらおうって思っているわけじゃなくて、純粋に興味があるだけでっ。あっ、興味ってそういうことに興味があるわけじゃなくてっ!! 穗純がサービスしたいわけでもしてもらいたいわけでも――」
なにか急に慌て出す穗純ちゃんの真意を確かめたいような、あまり関わらないほうがいいような――そう思っていると、ルルがリビングに戻ってきた。
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