斉田さんは動かない

@J2130

第1話 いい人なんです

 斉田さんという人がいました。


 いい人です、ちょっと個性的ですがいい人です。

 絶対に悪い人ではありません。


 僕は長い間、ベビー用品メーカーのシステム室にいて販売物流システムを担当していました。


 斉田さん、物流にいたことがありました。

 その前はトイ事業部だったと思います。

 真面目でがたいもよく、おとなしくて…

 趣味はボディービル…

 かっこいいでしょ。


 僕が物流に異動したときにもまだそこにいて、パーツセンターを担当していました。


 面倒な棚割りをやっていたり、本当に真面目でコツコツタイプでしたね。


「堀さん…元システム室の中村さんっているじゃなですか…」

 斉田さん、ちょっとうかない顔をして話しかけてきました。


「ああ今は財務部長のね…どうしたの…」

「言われたんですよ…」

「何を…」

「普通は棚番に O(オー)とかI(アイ)とか使わないって…」

 斉田さん、棚番を整理して非常にいい棚割りにしてくれていました。

 わかりやすくて、さすが「斉田さん」って思っていたんだけれど。


「失敗でしたかね…」

 だいぶ気にしていました。


 そういえばこの前の監査のときに中村さん来ていたな…

 僕が新卒でシステム室に入る前に生産部へ異動になったんだよな…中村さん。


「わかりやすくていい棚割りだと思うけれどね…中村さんがね…」


 A001とかB101とか順番に棚を振ることはよくあります。

 わかりやすいですよね。

 でもO(オー)と0(ゼロ)とか、I(アイ)と1(イチ)とか見た目で判断できないことがあります。


 なのでO(オー)棚、I(アイ)棚をあえて作らないこともあります。

 でもね…


「いつも素人というか新しい人がくる職場ならそうかもしれないけれど、ここは何十年も働いている人が何十年もピッキングしているんだからさ…。逆にN棚の次がいきなりP棚だったり、H棚の次がJ棚になるほうが混乱するよ…」


 少し物流を知っているとオーとかアイとか使わないってね、そうゆうことを言う人もいるのです。


「ここはベテランしかいないんだから、斉田さんの棚割り、すごいと思うけれどな…」


 正直に応えました。本当にそうですからね。


「いいんですかね…」

「いいんだよ! 斉田さんの職場、テリトリーなんだから」


 そんなこともありました。

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