第7話

「長雨だな……」


「はい。これでは、河を渡れませぬ」


「兵士を休ませておけ」


「約束の期日に間に合いませんが?」


「構わん」


 今俺は、袁術討伐に進軍していた。本当は孫策の仕事だったんだが……。

 だが、長雨がその足を止める。

 俺は知っている。これで曹操は、兵力を大幅に減らす。

 無理に付き合う必要もない。天が俺に行くなと言っているのだ。これが天命なのだろう。



 寿春に着いたが、戦争は終わっていた。曹操は、途中で引き返していたのだ。


「如何なさいますか?」


「袁術も食料を得られていない。そして、曹操からの連戦になる。短期決戦だな」


「はっ!」


 全軍突撃を命じた。

 そして……、一日で寿春を落とした。

 ふぅ~。俺の戦術眼、賞賛しかないよ。

 その後、報告を聞く。


「袁術が逃げただと?」


「はっ。地下通路があったみたいです」


 だが袁胤は、捕えた。三国志演義で玉璽を護った人物だ。正史では違うが。

 そして、玉璽を奪う。

 ふっ……。自分が怖いぜ。

 転生知識無双。十全過ぎるほど活用してしまっている、自分に恐怖心を抱いた。


「玉璽は緘口令を敷け。献帝に知られると面倒だ」


「「「はっ!」」」


 部下の質も上がって来たようだ。俺の王威に当てられれば、当たり前か。

 礼儀作法もなって来た。

 後は中央の衣服を調達すれば、今度誰も俺を蛮族と呼ばなくなるだろう。

 これで、寿春に用はないな。





 寿春の統治はしない。そうすると、曹操が寡兵を連れて戻って来た。


「曹操殿すまなかった。長雨で足止めを食らってな」


「寿春を落としてくれたんだし~。結果オーライよ~」


 ふっ……。曹操も分かっているな。――キラン



「良かったのか? 寿春を曹操に委ねて」


「曹操は、献帝を保護している。今は対立を避けるべきだ」


「う~ん。兄者を疑うことはないんだが……、もったいないな」


「それよりも、孫策を叩くぞ!」


「「おお!!」」


 仇敵は、滅ぼさないとな。それと、孫策の配下が欲しい。

 そうすれば、江南江東は安定するはずだ。





 長沙に軍を進める。陸兵と水兵で夏口・江夏を落とす。ここは、元々黄祖が納めていた土地だった。攻めると、孫策の兵も下がる。統治がなっていない。

 そして、長沙に迫った。

 ここで、降将が大勢来た。意外だったのは、甘寧が来たことだな。

 長沙では、十分な報酬が得られず、貧乏生活だったのだとか。一族も養えなかったらしい。

 戦闘になることもなく、孫策は、野に降った。


「周瑜と魯粛は、孫策について行ったのか……。まあいい」


 放浪生活……。孫策の再起はないな。あっても、江南江東から遠い土地だ。





「呉の四姓と呼ばれる有力豪族を集めろ」


 俺がそう言うと、次の日に集まり盟を交わす。

 覇者と言うのは、便利なモノだ。呼べば来る。


 そして、まだ若い陸遜を見つけた。俺の小間使いとして雇う。

 将来に期待だな。


「江南江東を得て、人材も集まった。治安もいい。さてどうするか……」


 孫権は、ここから動かなかった。

 だが俺は、それだけで満足する王の器じゃない。

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