第7話
「長雨だな……」
「はい。これでは、河を渡れませぬ」
「兵士を休ませておけ」
「約束の期日に間に合いませんが?」
「構わん」
今俺は、袁術討伐に進軍していた。本当は孫策の仕事だったんだが……。
だが、長雨がその足を止める。
俺は知っている。これで曹操は、兵力を大幅に減らす。
無理に付き合う必要もない。天が俺に行くなと言っているのだ。これが天命なのだろう。
寿春に着いたが、戦争は終わっていた。曹操は、途中で引き返していたのだ。
「如何なさいますか?」
「袁術も食料を得られていない。そして、曹操からの連戦になる。短期決戦だな」
「はっ!」
全軍突撃を命じた。
そして……、一日で寿春を落とした。
ふぅ~。俺の戦術眼、賞賛しかないよ。
その後、報告を聞く。
「袁術が逃げただと?」
「はっ。地下通路があったみたいです」
だが袁胤は、捕えた。三国志演義で玉璽を護った人物だ。正史では違うが。
そして、玉璽を奪う。
ふっ……。自分が怖いぜ。
転生知識無双。十全過ぎるほど活用してしまっている、自分に恐怖心を抱いた。
「玉璽は緘口令を敷け。献帝に知られると面倒だ」
「「「はっ!」」」
部下の質も上がって来たようだ。俺の王威に当てられれば、当たり前か。
礼儀作法もなって来た。
後は中央の衣服を調達すれば、今度誰も俺を蛮族と呼ばなくなるだろう。
これで、寿春に用はないな。
◇
寿春の統治はしない。そうすると、曹操が寡兵を連れて戻って来た。
「曹操殿すまなかった。長雨で足止めを食らってな」
「寿春を落としてくれたんだし~。結果オーライよ~」
ふっ……。曹操も分かっているな。――キラン
「良かったのか? 寿春を曹操に委ねて」
「曹操は、献帝を保護している。今は対立を避けるべきだ」
「う~ん。兄者を疑うことはないんだが……、もったいないな」
「それよりも、孫策を叩くぞ!」
「「おお!!」」
仇敵は、滅ぼさないとな。それと、孫策の配下が欲しい。
そうすれば、江南江東は安定するはずだ。
◇
長沙に軍を進める。陸兵と水兵で夏口・江夏を落とす。ここは、元々黄祖が納めていた土地だった。攻めると、孫策の兵も下がる。統治がなっていない。
そして、長沙に迫った。
ここで、降将が大勢来た。意外だったのは、甘寧が来たことだな。
長沙では、十分な報酬が得られず、貧乏生活だったのだとか。一族も養えなかったらしい。
戦闘になることもなく、孫策は、野に降った。
「周瑜と魯粛は、孫策について行ったのか……。まあいい」
放浪生活……。孫策の再起はないな。あっても、江南江東から遠い土地だ。
◇
「呉の四姓と呼ばれる有力豪族を集めろ」
俺がそう言うと、次の日に集まり盟を交わす。
覇者と言うのは、便利なモノだ。呼べば来る。
そして、まだ若い陸遜を見つけた。俺の小間使いとして雇う。
将来に期待だな。
「江南江東を得て、人材も集まった。治安もいい。さてどうするか……」
孫権は、ここから動かなかった。
だが俺は、それだけで満足する王の器じゃない。
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