第2話
「徳王様、ご指示通り、敗残兵を一ヵ所に纏めました。一人たりとも逃しておりません」
「……ご苦労」――キラン
――バサ
俺は、獣の革でできたマントをひるがえした。
そのまま、広場へ向かう。
「おお、厳白虎殿。これはどういうことか?」
「
「なんと!?」
俺の頭を見ろよ。血まみれだろうに。
昨日、不意打ちを受けてんだよ。
王たる俺は、逃げずに受けたんだけどね。痛ぇんだよ。
つうか、二度とゴメンだ。
その後、密偵狩りが始まった。
とりあえず、顔見知りや、同郷の者で確認し合い、誰も知らない者は、隔離処置とした。
ふっ……。自分の才能が怖いくらいだぜ。
「そして……、孫策の真の目的も、王たる俺にはお見通しだ!」
俺は、食料庫へ向かった。
◇
本来誰もいないはずの、食糧庫……。だが、静かな息使いを感じ取る……。
「火気厳禁の場所なのに、大量の薪とはな……」
薪を蹴り飛ばして、大きな音を立てる。
衛兵が気が付いたようだ。
遅いんだよ。異変に気がつけよ。どう考えても、誰かが作業した跡じゃん。兵糧を焼かれる前段階じゃん。
そして、背後より刃物が向かって来た。
――ガキン
「ふっ……。いかに王たる俺でも二度目の凶刃を受け止める度量は、持ち合わせていないぞ!」
「くっ。蛮族風情が!」
その後、数合打ち合うが、俺がバッサリと叩き切ってやった。
ここで、衛兵たちが来た。
「徳王様? これはいったい……」
「食料庫周辺の薪を片しておけ。それと、この者を埋葬してやれ。身元が分かる物は持っていないだろうしな」
「……これは、とんだ失態を」
衛兵たちは、震えている。
処罰を恐れているんだな。
だが、ここは度量の大きさを示す場面だと思う。王の器だよな~。
――バサ
俺は、マントをひるがえして、無言で衛兵の横を歩いた。
処罰なんかしないよ? 今は、味方が一人でも欲しい場面だからね。
その後、食糧庫には二十四時間の見張りがつき、後顧の憂いが取り除けたな。
俺は、玉座で色々な報告を聞く。
「兄者! 戻ったぞ!」
「厳輿か。孫策軍はどうなっている?」
「大分膨れ上がっているぞ!
ふぅ~。
俺がため息を吐くと、場の空気が引き締まったのを感じる。
「いいだろう。本物の王の器を見せてやろう。王威だ!」――キラン
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