「3、2、1」の合図で

冬城夏音

第1話 落ちこぼれ

 「校長先生からのお言葉です」


 「皆様ご入学おめでとうございます。これから皆様には警察官として楽しいことだけでなく、悲しいことや辛いこと等様々な経験をすると思います。ですがそんな時はお互いに助け合いながら頑張ってください」


 「校長先生ありがとうございます。この後、入学生の皆様には一人一個コンビを配布します。これからの警察官人生の武器として共に過ごしていきます。大切に扱う様にしてください。これにて入学式を閉式します。入学生はその場で待っていてください」


 俺は正式に警察官としてこの「第八高等警察学校」に入学した。


 俺はここで三年間、寝泊まりして夢である「立派な警察官」になる。


 「それではこれから皆さんにコンビを配ります。ですが騒がずに次の指示を待ってください」


 隣から会話が聞こえてきた。


 「あのただの鉱石が手に取ると武器に変わるんだろ?」


 「嗚呼」


 「俺、スナイパーライフルが良いな~お前は?」


 「俺は無難にライフルかな」


 「そう言えば今年の落ちこぼれは誰になるんだろ」


 「短剣のことか?毎年一人か二人いるらしいが、多くの警察官が銃のせいで銃の強化部品のみが売れ、それに伴って近距離である短剣の強化部品が作られない。考えると悲しい世の中だよな。人々を護りたいのに金目的のせいで護れないのだから」


 「本当だよな」


 俺は絶対に落ちこぼれになんかにならない。


 俺は必ず銃を手に入れて「立派な警察官」に絶対になる。


 遠くから自分はどんな武器だった等の会話が聞こえてきた。


 俺はワクワクしながら自分の番を待った。


 隣の二人は望み通りではないが二人ともショットガンを手に出来、喜んでいた。


 「次はお前だ」


 俺は緊張しながらコンビをアタッシュケースの中から取り出した。


 コンビは鉱石の様な状態から溶けるように形を変えていった。


 これのコンビは短剣に姿を変えた。


 「今年の短剣はお前だったか。まあ短剣だって活躍出来ない訳じゃない。頑張れよ」


 そう先生は苦笑いで言った。


 周りから笑い声と安堵の声が聞こえてきた。

 

 俺は絶望した。


 これじゃ「立派な警察官」にはなれない。


 俺は次の指示が出るまで自分の足元を見続けていた。


 すると笑い声の標的が俺から外れた。


 


 「それでは各々のコンビの種類の担当教員がいるのでそちらまで向かってください。拳銃は左前方、ライフルは左後方、ショットガンは右前方、スナイパーライフルは右後方、マシンガンは私の所まで。その他の銃はその場で待機。それでは解散!」


 俺は短剣の担当の先生が説明されず、先生ですらこんなに対応が違うのかと落胆した。


 担当の先生を見つけなければと思い、辺りを見渡していた。


 すると一人の同級生がこちらを見ながら歩いてきた。

 

 ピンク色の髪と水色の瞳に惹かれているとその同級生は言ってきた。


 「あんた短剣なんでしょ?私も短剣だからよろしく」


 俺は冷たい態度に怯えながら言った。


 「嗚呼、よろしく」


 「ってか私らの担当教員って誰なの?それすら言ってくれないって酷すぎ」


 「それは同感するけど、何故怒ってるの?」


 「別に怒ってない、これが普通なの」


 「そ、そうなんだ……」


 仲間が居たことは嬉しいが、この人と上手くコミュニケーションを取れる気がしない……。


 そんなことを思いながら再び辺りを見渡していた。


 すると一人の背の小さな少女がこちらに向かって歩いて来て、言った。


 「お主ら、短剣じゃろ」


 俺は目一杯、思考を巡らせた。


 もしかして、こんな幼い女の子が担当するのか?


 腰まで伸ばした長髪、145cm未満の身長、そして全てを見透かす様な綺麗な瞳を持っていて何故、語尾に「じゃろ」なんて付いているんだ?


 考えれば考える程、謎が深まる。


 「さてはお主ら、今何故こんな見た目の奴が目の前に居るのだと不思議に思っておるじゃろ」


 「はい、その通りです」


 「ではその問いに答えよう。それはわしがお主ら短剣の担当教員だからじゃ。因みに言っておくがこれでも今年で32じゃ。名前は鈴道 楓(りんどう かなで)じゃ。これから二人ともよろしく」


 「わしの自己紹介はこれで良いとして、二人の名前も聞かせてもらいたい」


 「俺は藤堂 蓮(とうどう れん)って言います。これからよろしくお願いします」


 「私は桜形 春(おうがた はる)よろしく」


 「それじゃあまず寮に移動じゃ。短剣の説明はその後じゃ」


 二人の個性が強いお陰で少し気は楽になったが、それが心配でもある。


 この先、俺はちゃんと立派な警察官になれるのだろうか……。

 

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