一度授かると人生が終わると言われる職業の遊び人。今、クランから追放ではなく休暇を言い渡された遊び人は、スキル≪一緒に遊ぶ≫で新たにスキルを手に入れ夢にまで見たダンジョンへと向かう。

もう我慢できない

第1話


 僕はプレイ。


 王都の冒険者クラン黄金郷エルドラドで研究者として働いている遊び人。


 遊び人と言ったのは、この世界は成人すると神様から一人一つの職業が与えられるんだ。

 この神様から与えられる職業によって、スキルを覚えたりするんだけど……僕は、外れだったらしい。


 僕のは夢は、ダンジョンや遺跡を探検する冒険者になることだったけど、この与えられた職業のせいで、研究者として働いている。


 まぁ、少しでもダンジョンや遺跡に関わっていたかったから……。

 そんな僕が今日も研究室で仕事をしていたら、人事部の人から呼び出しを受けたんだ。




 コンコン


「失礼します。すいません、こちらにプレイさんはいらっしゃいますか?」

「はい。プレイは僕ですが?」


 僕はそう言って手を上げる。


「あなたがプレイさんですね。私は人事部の者ですが、うちの部長が話があると言っておりまして、至急人事部長の部屋に向かってもらってよろしいでしょうか?」

「はい。わかりました。すぐに人事部長の部屋に向かいます」

「よろしくお願いします。では私は失礼します」


 人事部の人は頭を深く下げると研究室から出ていく。僕は人事部の人が研究室を出て、部屋から離れるのを見計らって声をかけられる。


「おい、プレイ何かしたのか?」


 僕と人事部の人のやり取りをこっそり聞いていた研究室の同僚が声をかけてくる。

 研究室の同僚の言葉に僕は思い当たることは無いと答えるが、最近流行っているある事を思い出す。


 それはクランからの追放。


 僕が所属する冒険者が集まるクラン黄金郷エルドラドは大きなクランの一つたけど、数年前に他のクランにはない人事部ができた。

 その人事部はとても優秀で、僕みたいな外れ職業でも適性のある仕事を見つけて雇ってくれる。


 僕以外にもクランの仕事に適性のある人を探して雇っていくと黄金郷エルドラドは急速に成長した。

 それは他の大手クランも黄金郷エルドラドの話を聞いて、人事部を作りはじめるほどに……。


 だけど大手とは別に、中小クランは成長する大手クランの影響をうけてか、運営が厳しいクランでは以前と比べてクランから追放される冒険者が増えてるって聞いた。


「いや、何もしてないと思うんだけど……」

「だよな。クソ真面目なプレイが人事部から呼ばれるなんて、いったいなんだ? もしかして……何か新しい部署を作るからそこに移動を言われるのか?」


 僕が何も失敗をした覚えがないと伝えると、同僚は僕には想像もできない事を口走る。


「もしかしたら、栄転なのかもしれないぜ?」

「いやいや、僕みたいな遊び人にきちんと仕事をもらえてるだけでもありがたい事なのに、そんな事は絶対にないよ」


 僕の言葉に同僚は困った顔をして話を続ける。


「それこそ。プレイは何を言っているんだ? 俺が知るクランのメンバーの中で誰よりも真面目にプレイは働いているぞ。もちろん、そう言っているのは俺だけじゃくクランの他の部署でも噂になっている。クソ真面目な遊び人がいるって。それを人事部が知っていてもおかしくないだろう?」


 同僚の過大な評価に、僕は間抜けな質問をしてしまう。


「そうなの?」

「ああ、そうだ。プレイはずっとまじめに働いてたんだ、きっといい話さ。いってこい」


 そう言って同僚は僕の肩を叩き、僕を送り出してくれるたのだが、僕の頭の中はクランから追放された人の話を思い出し、不安で一杯になっていた。




 コンコン


「どなたですか?」

「はい、遊び人のプレイです」

「ああ、あなたですか。どうぞお入りください」


 僕がノックをして自分の名前を答えると、部屋の中から男の人が返事をし、僕を部屋の中に招き入れる。


「失礼します」


 僕が挨拶をして部屋の中に入ると、大きな机の奥にメガネをかけた男の人が座っていた。

 その男の人は、真っ直ぐに肩まで伸びた青い髪と、眼鏡が相まってとても真面目そうに見える。


「こうして面と向かって話すのは、はじめてですね。人事部長のアールと言います。少し話が長くなるかと思うので、どうぞ座ってください」


 そう言ってアールさんは机の前に置かれたイスを僕にすすめてくる。

 僕がアールさんに言われるままにイスに座ると、アールさんが眼光を鋭くして僕に質問してくる。


「どうして呼ばれたかわかりますか?」


 ああ、やっぱりあれだよね……最近、流行っていると聞いていたクランからの追放。

 そうだよなね……こんな大手クランが、僕の様な遊び人を在籍させてたのが何かの間違いだったんだ。


「はい、僕みたいな遊び人は、このクランには不必要ということですね……」


 そう言った僕にアールさんから最終通告がされるんだろう。わかっている追放だ。


「は? あなたは何を言っているんですか? 人事部長の私が、追放する人をわざわざ呼びつけると思っているんですか? そんな事は、部下にしてもらいますし、そもそもこの黄金郷エルドラドに追放しなければならい様な人はいません」


 ん? どうも僕の予想とは違う答えが返ってきた。だけど人事部長が直々に僕なんかを呼びつけて、それ以外に何の話があると言うんだろう?


 ……ああ、わかったぞ。これは、僕から自主的にやめるように言わせるつもりなんだ。きっと部下の人では僕には自主的にクランを辞めさせることがてきないから、アールさんが直々に僕を呼んだんだ。


 きっとそうだ。


 だけど、僕も遊び人と言う職業でありながら、このクランに貢献できるように真面目に働いていたんだ……自分から辞めたいとは言えない。


「すいません、ではどういった話でしょうか? 僕には他に人事部長のアールさんから、呼び出しを受ける理由が思いつかないのですが……」


 僕がそう言うと、アールさんは困った表情をして話を続ける。


「なるほど……本当にクランから追放されると思って来たと……遊び人という職業でありながらこの真面目さ、まわりの人達の言う通りなんですね。なぜ、あなたの様な人に与えられた職業が、遊び人なのか……本当に理解に苦しみます」


 そう言ってため息をつくアールさん。


 でも……本当に追放じゃないなら何の理由で呼ばれたんだろう?

 僕が、難しい顔をしてうなっていると、アールさんが再び話しはじめる。


「しかも、自分の呼ばれた理由が、クラン追放以外に思い当たるふしが無いために、考えはじめますか……いいでしょう。そんな貴方に明瞭かつ短く、その理由をお教えします」


 なんだ、クラン追放以上の事を言われるのだろうか、全く想像ができない。

 そんな僕にアールさんは容赦なく続ける。


「では遊び人のプレイさん、クラン黄金郷エルドラドの人事部長のアールが言い渡します!」


 僕は、思わずゴクリと唾を飲み込む。


「休みをとりなさい!」


「えっ?」


 今、休みを取るように言われた? いやいや、そんなはずがない。僕みたいな遊び人に、遊んでいる暇はないはず。もう一度聞いてみよう。


「すいません、なにか聞き間違いをしたようで、もう一度お願いします」

「わかりました。プレイさん、重要な事なのでもう一度言います。よく聞いてください」


 そう言ったアールさんは大きく息をすう。


「プレイさん休みを取りなさい!」

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