そうじ屋の愉快なお仕事

ホタテ

mission《任務》

mission1

 そうじ屋とは!

 裏社会で悪事を働くやつらを抹殺する、暗殺組織の名である。

 決して、家の清掃を行ったりするサービスのことではない。

 裏社会にだってルールはある。

 そのルールを守らないやつらや、表社会に悪影響を及ぼす、警察でも手を出せないような連中を、秘密裏に消すのだ。


 あたしの名は、ソフィア。

 そうじ屋見習いの十四歳!

 立派なそうじ屋になるべく、日々奮闘中!

 ……と、言いたいところなんだけど……

 あたしは今、ピンチである!

 任務で敵拠点に潜入。

 あたしは通気口を通り、天井裏を攻めていったわけだけど。

 まさかの天井が崩落。

 潜んでいたあたしは、一瞬にしてその正体を現してしまった。

 しかも、落ちたその先は、敵のボスの上。

 つまりは、あたしの下敷きになっているということだ。

 そして、あたしは銃を持った怖いお兄さんたちに囲まれている。

 ――絶体絶命のピンチ!

 動けばあたしは射殺されるだろう。

 けど、向こうも動かない。

 あたしがどんな動きをするかわからないからだ。

 実に賢明な判断と言えよう。

 ――だが!

 安心して、お兄さんたち!

 あたしには何のプランもない!

 ……なんて言えるわけもなく。

 硬直状態がかれこれ数分は続いている。

 見習いのあたしには、この場を切り抜ける術もない。

 だからと言って、ずっとこのままのわけにもいかないし……

 あれこれと無い知恵を絞り出そうとしていたときだった。

 部屋の電気がパッと消え、辺りは暗闇に包まれた。

 普通の人は、明るい所から暗い所へ突然放り込まれると、何も見えなくなる。

 でも、あたしは違う。

 暗闇に目を慣らすことくらい、見習いにだってすぐにできる――。

 なんて、ちょっと格好つけちゃったり。

「ぐわっ!」とか「うっ!」とか、何やら悲鳴が聞こえてきたかと思えば、次々に人が倒れていくのが見えた。

 気がつけば、あれだけいたお兄さんたちは皆、あたしの足下に転がっていて――、持っていた武器は一度も使われることはなかった。

「……おい。いつまでボーッとしている。さっさとお前がその椅子代わりにしているオッサンを縛れ」

 一つの影があたしに近づいてきて、そう言った。「嫌だよ、こんな座り心地の悪い椅子」

 あたしの冗談は無視された。

「俺が何人倒そうと、ボスをったのはお前だからな。今回はお前の手柄だ」

「殺してないし……全然嬉しくないし……ねぇ、先輩。あたしのことバカにしてるよね?」

「うるさいな。早くしろ」

 くるりとあたしに背を向け、スタスタと歩いて行く。

「あー! もう! 待ってよぉ!!」

 あたしは急いで伸びているオッサンを縄で縛り、引きずって彼の後を追いかけたのだった。


 見習いのあたしには、先輩がいる。

 それがこの人、リン。

 年齢はあたしより一つ上だ。

 先輩は超絶クールで冗談も通じないし、あんまり笑わないし、むしろあたしに怒ってばかりだけど……

 文字通りの美少年である。

 イケメンというよりかは、美少年のほうがしっくりくる。

 先輩はあたしにとって憧れであり、いつかは越えなければいけない存在。

 小さい頃からずっと一緒にいて、あたしの面倒を見てくれて、何でもできて。

 大好きな人。

 そんな人を越えなければいけないと思うと、ちょっと苦しい。

 あたしたちは常に二人で、任務をこなし、共に成長していく。

 ……てことでいいんだよね?

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