摩訶不思議

小林勤務

第1話 あのよ

 オッス! オラ、ご……


 ごほん、ごほん。

 ああ、そっかそっか。

 わりいわりい。

 ちょっと、今ここで名前を名乗るわけにはいかねえんだ。


 みんなは最初のフレーズで、オラが誰だかわかるよな?


 まあ、色々とめんどくせえことになっちまうからよ、みんなは勝手に脳内変換してくれればいいや。

 でもよ。

 ちっと不安だな。

 必殺技の名前とか出したほうがいいのか?

 オラ、場合によっちゃ変身しちまうからよ。

 ま、そんなのいらねっか。

 おし! そんなわけで、話の続きなんだけどよ……

 んん? ちっと待てよ。


 オラ、いってー何の話してたんだっけ。


 普段、村の畑で野菜作ってっから、オラ、あんまし頭とかよくねーぞ。

 イチから、思い出すから待ってくれねえか。

 イチから……

 あっ!


 イチじゃなくて、、ち……、いや、やっぱしだめだ。


 わりいわりい。

 あいつんことも、今ここで名前を出すわけにはいかねえんだ。

 でも、だいてえ、みんなはわかるよな。

 じゃあ、これからは紛らわしいけど、イニシャルってゆー便利なもんがあっから、これで話を続けることにすっぞ。


 まあ、Cのやつが最近、全然やらせてくんねえんだ。

 あいつ、ケッコン当初は飽きるぐれえ向こうから求めてきたのによ、最近は全然だ。

 オラも最初はケッコンって、なんかうめーもんだと思ったんだけど、って食べもんじゃなくて、きもちいもんだったとは思わなくてよ。毎晩、やりまくったんだ。

 でもよ。

 最近、Cのやつ、オラに見向きもしねえで息子ばっかり相手にしてんだ。正直、オラも最初はどうでもよかったんだけど、なんか、妙にムラムラしちまってよ、全然寝れねえんだ。

 なんだかんだ言っても、Cはあっちはものすげえでけえからよ、隣で寝てると、なんつーか、ムラムラしちまうぞ。戦ってもねえから、あっちには変身したくねえんだけど、どうにもこうにもいかねえんだ。


 オラ、うめーもんは好きだけど、それ以上にきもちいもんも好きだぞ。


 なんか、ぶ……

 はは、わりいわりい。あいつのこともイニシャルってやつで話すわ。

 Bは頭いいからよ、オラに言ったんだ。

 人間は三大欲求があるってよ。

 うめーもんと、ねることと、きもちいもん。


 オラ、全部ねえとだめだ。


 そんなんでBに、どうしたらいいんだって詰め寄ったらよ、あいつこんなこと言ったんだ。


 勝手に風俗いけばってよ。


 オラ、てっきり風俗って、なんかうめーもんでも食わせてくれるもんだと思って、早速、金もって飛んでったぞ。

 なんか、黒服のいかちい兄ちゃんが客引きやってんなと思ったら、まさかのYでよ。オラ、おでれえたぞ。如何にも怪しい店の前で、酔っ払いとかに声かけてんだ。


 Y! こんなとこで何してんだ。修行はどうしたってよ。


 そしたら。Yのやつ。

 サービスしてやるから、Bには言うなってよ。


 Bにばらすも何も、おめえらとっくに別れてんだろってずっこけたぞ。

 そしたら、そういう意味じゃねえってことで、店んなかに入ってみたら、これまたおでれえたことに、あいつらが勢揃いしてんだ。

 Pのやつ、普段神様だなんだそんなことやってるくせに煩悩を抑えられねえって話だし、Vなんか逆に修行しすぎてバカになっちまったようで、全然変身が解けねえから、ここで発散してるんだと。

 だから、YはBに内緒って言ったんだなって、オラあんまし頭よくねえけど、やっと理解したぞ。

 結局、あいつも後ろめてえってことで、待合室ではお互いなんも喋らなかったな。

 もうすぐ、生き死にをかけた試合も始まるってえのに、オラたち何してんだかなってよ。

 ま! 逆にこういうことでもしねえといい試合できねえしな。


 そんなことで、一時間ぐれえ待ったら、奥の部屋に呼ばれたんだ。

 あ、そうそう。

 Pにやつ、むっつりのくせしてメガネかけてインテリぶってたのが笑えてよ、部屋に入ってもしばらく笑ってたぞ。

 部屋のなかには、すっげえあっちがでけえ女がいてよ。

 金髪のミニスカートで可愛いんだ。

 しかも、その女が誘ってきやがんだ。

 オラ、そこで初めて風俗って、こういう店なんだと理解したぞ。


 お金ってすげえなってよ。


 なんでも、世の中が大変なことになってるから、皆、どんどん仕事がなくなってよ、街中泥棒は出るわ、人は殺すわ、こんな可愛い子までこんなことしてんだ。

 世も末だよな。早く平和な世の中にしねえとよ。

 でもよ。

 そんな境遇をかわいそうだなって、一瞬、同情したんだけど、やっぱり理性が働か無くてよ。


 だって、お金さえ払えばなんでもやらせてくれんだぞ。


 色んな道具もあったけどよ、オラ、道具には頼りたくねえんだ。

 道具なんかに頼っちまったら、何のために修行したかわからなねえし、卑怯なマネだけはしたくねえからよ。


 オラ、今まで溜まりに溜まってたから、思わず変身しちまったんだ。

 そしたらよ、その女もでけえ声だすんだ。

 オラ、めっちゃ興奮しちまって、も1だけじゃおさまんなくてよ。

 2,3,4,5,6,7,ってよ。

 とうとう最後までいっちまった。

 まるで、Pみてえに、オラも神様になった気分だった。

 何倍も修行したみてえだった。

 まさか、Vのやつもこれで修行してんじゃねえか。

 あんにゃろー、今までこんないいもん内緒にしやがってよ。あとで、Bに言いつけてやろうか。


 でもよ、すげえよな。

 何がって。

 世の中、摩訶不思議なことが多すぎっぞ。


 だってよ。

 その女、めっちゃでけえ声だしてたしよ。

 オラも様子見ながらでえじょうぶなのかなって。

 Cには、もう止めてって泣き叫ばれてからよ。


 いてえいてえって。


 何度もがでるたびに、オラも興奮しちまって。


 ケッコンってうめーもんじゃなくて、きもちいもんだと理解したんだ。


 でも、オラも金払ったしよ。

 Yのやつから、この店は何でもしていいって言われてたしよ。

 じゃあ、金さえ払えばいいんじゃねえかって。

 そんでよ。

 オラもやっべーと思ったんだけど。


 とうとう――


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