香気
茅川 百々花
【完結済短編】1話
季節が春から夏に移り変わる頃、この関係に日が差してくれない事すら忘れて、あたしたちはひたすらに体を重ね合わせていた。
上に被さって汗ばんでいる私を、やや上目遣いで見る彼女の瞳。ソレが心拍と共に激しく揺れる。
これでもかと頬を紅潮させながら腕を絡みつけてくる。
愛おしいと思うと同時に、その瞳の中にあたしがいない事を、既に理解していた。
「ごめんね」
彼女が零した、なんともやるせない言葉。
自分が盲人だから謝ったのか、あたし達が同性だから謝ったのか。
そんな覚束無い考えを振り切るように、彼女自身に自分の香を聞かせる。
零した言葉を自力で忘れさせるように。
香気 茅川 百々花 @manmaru_oO
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