実験記録 ××××年8月6日 その4

DNAとRNAを抽出。

ゾンビの組織片を抽出液中ですり潰し、蛋白質分解酵素プロテアーゼを加えて恒温漕ウォーターバスで60℃4時間保温。

フェノール抽出、続いてクロロフォルム抽出、エタノール沈殿ちんでん操作を行い、DNA沈殿物を得る。これをエタノールに入れたまま、-20℃で保存。

別の組織片(ボリュームにして10μlほど)をエッペンチューブに入れ、トライゾール200μlを加えてホモジナイズ。後でRNA抽出に使用するため、そのまま-20℃で凍結保存。1ダースほど作っておく。


視覚について評価するため、目を調べる。

ゾンビの目を観察したところ、白濁はくだくしている。写真参照。

捕獲した時(約12時間前)よりも、白濁が進んでいるように思える。

白濁しているのが角膜なのか、それとも眼球全体なのか、眼球を取り出して調べたいところだが、今回はやめておこう。

ペンライトの光を至近距離まで近付けて左右に動かすと、それにつられて眼球も動いているため、光を感じているようだ。

しかし、ライトをさらに近付けても、瞳孔どうこうに変化は見られないため、視覚があるのかは疑わしい。


呼吸について調べる。

外部から観察したところ、ゾンビの胸部も胸も、ほとんど動いていない。

煙草たばこに火を点け(本当は線香せんこうを使いたいところだが)、ゾンビの鼻の前に差し出し、煙の動きを観察した。

煙は、鼻の前で動く事は動くが、ほんのわずかな動きだった。回数は、1分間に2回から3回。ビデオ映像参照。

つまり、ゾンビの呼吸は非常に浅く、呼吸回数も人間に比べると極端に少ないと判断された。

ちなみに使用した煙草は、このゾンビのポケットに入っていたものだ。

煙草を所持していたという事は、喫煙者きつえんしゃだったのだろう。

しかし、煙草の煙を積極的に嗅ぎに来る様子は見られない。ゾンビ化した後は、生前の嗜好しこうから解放されると考察される。


腸内細菌ちょうないさいきんは、どうなのか。

興味はあるが、捕獲してからの数時間、全く排泄はいせつしていない。

穿いていた下着も、あまり汚れていない。ゾンビになると糞尿ふんにょうを出さなくなるのだろうか。

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