実験記録 ××××年8月6日 その3

外傷の治癒ちゆ能力について検証。左腕上腕部に、メスで深さ約1㎝、長さ3㎝の切り傷を付ける。写真撮影で記録。市販の傷テープを貼り付け、傷口を保護。傷の治り具合を数日かけて観察する事にする。


ついでに、肉片を採取。細胞培養できるか検証。試しに肉片をシャーレに播種はしゅしてみる。初代培養がうまくいけば、細胞を増やせるかもしれない。ゾンビの細胞培養など、誰もやった事が無いだろう。血清や培地のストックが大量にあるのは幸運だったが、問題はCO2インキュベーターの使用に必要な炭酸ガスだ。新たに納品される見込みが無いため、節約しながら使おう。


そういえば、夏だというのに、汗をかいた様子はない。ゾンビは汗をかかないのだろうか。

右腕前腕部の適当な領域を油性マジックで囲む(写真参照)。蒸留水で湿らせた脱脂綿で、その領域内をふき取り、脱脂綿ごとニンヒドリン溶液で反応させたところ、紫色に発色した。汗に含まれるアミノ酸に反応したと考えられる。次に、その領域を水で良く洗い、傷テープを上から張り付けた。

対照実験として、同様に私の左肩を水で良く洗い、傷テープを張り付けた。

1時間後、傷テープをはがし、湿らせた脱脂綿で肌をふき取り、先ほどと同じ操作を行った。

結果は、私の脱脂綿は濃い紫色に染まったのに対し、ゾンビの脱脂綿は、ほとんど染まらなかった。(写真参照)

つまり、生きている人間と比較して、ゾンビは殆ど汗をかかないと考察された。

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