メシマズ妻と料理上手な夫の、ほのぼのごはん。

笛路

メシマズ妻と料理上手な夫の、ほのぼのごはん。

 

 

 

「なにこれ…………うん、まぁ、食べれる」

 

 私は料理が苦手だ。

 ちょっと気を抜くと、ダークマターのようなものが生成されてしまう。

 夫は何を出してもちゃんと全部食べてくれる、優しいヤツだ。

 ちょっと口うるさいのが玉にきず

 

「何作ろうとしたの?」

「タコライス」

「…………タコ、ライス?」

 

 タコライスを知らないのかなと説明したら、「いや知ってるけどね」と困ったように笑われた。

 じゃあ、なんで疑問形で復唱されたんだろ。

 

「先ずね、タコライスって、白米、ミンチを炒めたもの、ダイストマト、レタス、チーズ。あとは温泉卵とかだよね?」

「ぽいね!」

「あ、うん。で、これキャベツだけど?」

「レタスなかったから」

 

 基本的に買い物も料理も、夫が仕事から帰ってきてから作ってくれる。

 共働きで、私達の帰宅時間は大差ない。

 私は掃除等が担当。

 

 稀に夫が残業とかで遅くなる、そんなときは私が作るか、下準備だけしておく。

 

「あ、うん。そういえば使い終わってたね」

「うん」

「トマト、まるごとだね?」

「なんかね、『まるごとトマトのタコライス』ってレシピの写真がお洒落だったの! これ!」

「あぁ、本当だね。レシピ見たんだね。えらいえらい」

 

 よしよしと頭を撫でてもらえた。

 撫でられると、ほわほわした気持ちになるから、とても好き。

 

「うん! 美味しそうな写真探したんだよね!」

「……あ、写真だけを、見たのね。うん」

 

 また困ったように笑われた。なぜだ。

 

「写真とかなり違うけどね。うん…………なんで、オーブンにかけたの?」

「キャベツ生だし、芯硬そうだし、トマト大きいし、ミートソース冷たいし、とろけるチーズとろけさせたかったし。焼きたくない?」

 

 夫が、「市販のミートソース使ってるから食べられたのか」とか何かボソボソと呟いていたけど、聞き流しといた。

 

「まぁ、うん。ご飯作ってくれてありがとね。美味しかったよ」

「ふふん!」

 

 なんやかんやの事情聴取はあるけど、結局いつも『美味しかった』って言うんだよね。

 素直じゃないんだからっ!

 

 

 

 私がご飯を作ったときは、皿洗いは夫がしてくれる。

 キッチンから「おわっ⁉」とか「あれだけの料理になんでこんなに洗いもの出るの?」とかなんか叫んでるけど、無視。

 

「ねー、明日チャーハン食べたい! あと餃子もー!」

「はいはい。お皿洗ったら餃子作るから包むの手伝ってね?」

「仕方ないなぁ」

「ははっ! ありがと」


 明日は、パラパラチャーハンと、ジューシーな餃子に決定!

 今からよだれが止まらない!

 

 

 

 ─ おわり ─

 

 

 

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メシマズ妻と料理上手な夫の、ほのぼのごはん。 笛路 @fellows

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