えっ!? 学校ではマリー・フォン・フランソワって名乗ってるの!? お前の名前、小松茉莉子じゃん!! ~同居し始めた田舎育ち女子は見栄っ張り拗らせてて、テレパシーが使える~
第1話 田舎で妹みたいに接していた茉莉子がマリーになっていた件
えっ!? 学校ではマリー・フォン・フランソワって名乗ってるの!? お前の名前、小松茉莉子じゃん!! ~同居し始めた田舎育ち女子は見栄っ張り拗らせてて、テレパシーが使える~
五木友人
第1話 田舎で妹みたいに接していた茉莉子がマリーになっていた件
とある県の山奥にある小さな村。
その村ではかつて江戸時代の飢饉を
偉い坊さんがなんで山奥に居ついたのか、小松豊大神は小さいのか大きいのかハッキリしろとか、ツッコミを入れたい気持ちもあるがそれはできない。
俺は
御亀村は本当に山奥にあるので、中学を卒業するとだいたい村を出て遠方の高校へ進学するのが慣例。
なにせ、最寄りの高校まで車で3時間。
最寄りの意味が分からなくなるほど遠い。
そこでお世話になるのが小松家の現当主。
小松
御年80の大ベテランだが、1日三食きっちり食べて、おやつも食べて寝る前にはバーボンを飲む、豪快なばあちゃん。
一族にも村の人間にも親切で世話焼き。
俺も高校進学から一人暮らしをしているが、
木造建築で少し古いが部屋は4つもあるし、庭は広いし、ご近所の皆さんは優しいし、当然家賃はタダ。
ありがたいしか感情は生まれてこない。
大学生になってからは奨学金とアルバイトで学費と生活費を工面しているが、実に快適な毎日を過ごしていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
ばあちゃんから電話があったのは、3月22日の昼過ぎ。
「おう。もしもし」
『おっす! おら、ばあちゃん!! そろそろそっちに
「準備してるとこだよ。駅で良いんだよな?」
『そうだよ! お土産に高い肉を持たせたからね!!』
「マジか! でもさ、今更だけど、もう1度だけ確認するよ? 俺、一応さ、男なんだけど? 今年から女子高生になる子と2人暮らしとか、まずくない?」
『茉莉子は平気って言ってたけど?』
「親戚のみんなも?」
『言ってた、言ってた! あんた、男子校から大学でぼっちしてるじゃないか! 年頃の娘どうこうする甲斐性ないだろ!!』
「いや、おう。まあ……。つーか、茉莉子だぞ? 妹みたいなもんじゃん」
『うんうん。そう言って、食っちまうのが今の流行りだもんねぇ。けどね、ヒジキなら大丈夫ってみんな言ってるんだよ! 草って言うだろ?』
「バカにされてるみたいだけど。草食系ね」
『二十歳過ぎて童貞で草ってみんな言ってる!!』
「バカにしてんじゃねぇか!! くっそ!! 腹立つな!!」
「学校の手続きとかは全部ばあちゃんがやっといたから。あんたは保護者として頼むよ! ヒジキ!!」
時計を見ると、そろそろ家を出なければならない時間だった。
「分かったよ。じゃあ俺、迎えに出るから」
『ヒジキ。茉莉子にはね、不思議な力が宿っているんだ。ご先祖様の神力が備わってるんだよ。ヒジキ。分かるね?』
茉莉子は子供の頃、と言っても10歳までしか知らないが。
かなり夢見がちな女の子だった。
自分は魔法の国から来たお姫様だとか言ってて。
可愛いものだったと少しほっこりする。
未だにその頃の話を引っ張っているなんて、ばあちゃんにとっては俺たち世代の孫はずっと小さいままなんだな。
「ああ。分かってる。分かってる」
『一族みんなが、ヒジキなら間違いないって信頼してるからね!! 遠縁だからって、食うんじゃないよ!! ヒジキ!!』
靴を履きながら俺は確認する。
「ばあちゃん」
「なんだい? 可愛い孫のヒジキ」
「俺、
『い、嫌だねぇ! あたしらがヒジキの事、秀亀って呼ぶわけないじゃないか!!』
「逆なんだよ! 秀亀って呼べよ!!」と叫んで、俺は電話を切った。
とりあえず駅へ向かおう。
きっと自動改札が通れずに茉莉子が涙目になっている。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「あの! これ、壊れてますよ!? だって、ピッてやっても開かないですし!!」
「で、ですからね。お客様のはただの切符なので。ピッてやりたい場合は、交通系電子マネーをご利用頂けないと」
「じゃ、じゃあ、あたしはどうすればいいんですか!? 田舎者は閉じ込められてろって言うんですか!?」
「いえ、ですから、あの。こちらの穴にですね」
「穴ってなんですか!! 田舎者をバカにしてますね!?」
「お客様、専門用語は分からないとおっしゃったので……。誰かぁー!!」
金髪の女の子が駅員さんにご迷惑をおかけしていた。
ギャルとまではいかないが、耳にはピアス。少し化粧もしている。
イマドキの子って進んでるなぁ。
「ああー!! おじさん!! おじさーん!!」
近くに身内がいるのだろうか。
まったく、保護者としての自覚はどこへやったのか。
嘆かわしい。
「なんで無視するんですか!! おじさん! 秀亀おじさん!! あたしですよー!!」
「……土下座しよう!! すみませぇぇん!! 申し訳ございませぇぇぇん!!」
ド田舎のイモっぽくて可愛かった妹のような少女が、なんかイマドキの子になっていたので、とりあえず俺は駅員さんに美しい土下座をキメた。
本当にこれ、俺の知ってる茉莉子かな?
「まったく。困ったものですね、近頃の鉄道は。御亀村では駅員さんが1人ずつ丁寧に対応してくれていたのに!!」
「あ。茉莉子だ。お前、なんか変わったなー」
小松
サイドテールに纏めた金髪。
いつの間にか習得している敬語。
なにより、俺のことをおじさん呼ばわり。
5歳しか違わないのに。
「あ。違いますよ? おばあ様が、年頃の男女が同居していたらご近所の目もあるだろうから、おじさんと呼びなさいって! あたしは姪と言う設定です!!」
「なるほど。相変わらず、恐ろしく察しがいいな。俺の考えってそこまで顔に出る?」
「んふふー。おじさんの事ならなんでも分かります! 大きくなったでしょ!!」
「おう。マジでビックリした。身長20センチくらい伸びた?」
茉莉子はサッと胸を隠した。
「そんなに大きくなってませんし!! それなりには大きくなりましたけど!! おじさんは爽やかだったのに、なんだか目がやらしくなりましたね!!」
「身長って言ったじゃん!? 全然胸って口に出してないじゃん!! あ、違いますよ!? 運転手さん!! もうここで良いです! はい、降りるぞ! 茉莉子!!」
なお、確かに高校一年生にしては結構ワガママな感じに育っていた。
もうバレないようにしよう。
◆◇◆◇◆◇◆◇
翌日。
昼過ぎに引っ越し業者が来る予定なので、俺は茉莉子と喜津音女学院へ。
ばあちゃんからの指示で、入学書類の提出と簡単な面談を俺が引き受けている。
私立のお嬢様学校だから色々とあるらしい。
応接室で待っていると、学年主任の先生が来た。
「お待たせしました。
「いえ。お時間を頂いて申し訳ありません。小松です」
「小松? ああ! 世を忍ぶ仮の苗字ですね!」
「……はい?」
日村先生は20代にしか見えないが、事務員の方によると31で初めて学年主任になるのだとか。
きっとお疲れなのだろう。
「では、マリー・フォン・フランソワさんとその伯父様。簡単な面談を」
「えっ!? あの、違う生徒とお間違えになられているのでは?」
次の瞬間。
隣に座っていた茉莉子がにっこりと微笑んでから、優雅に答えた。
「ええ。わたくしがマリー・フォン・フランソワですわ。よしなに」
「誰だよ!?」
お前、俺の知らない間に名前変わったの?
~~~~~~~~~
本日は一気に3話更新!
次話は12時に投稿! 3話目は18時に投稿です!!
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