ピアス

裏掟シニメ

ピアス

貴女に触れた時の痛みが忘れられない。明らかに触れているのに何故か内側から迸るような、第三チャクラのあたりが熱くて怖くなるくらいの、痛み。

皮肉にも私はその痛みに少し、もう少しだけ、身を委ねて溺れていたかった。


簡単なこと、言ってしまえば私は変態なのだ。貴女の耳に小さな穴を開けたくて、同時に開けられたくて、どうにかして貴女を身体に覚えさせたくて必死。

だって、貴女は綺麗だから。

恋をしたこともなければ、付き合ったことなんてないそうで、キスもなければもちろん処女で。そんな貴女に私が穴を開けられたらどんなに幸せだろう。願わくばそのままキスをして、押し倒して、処女を奪って、殺してしまいたいくらい、他の、特に男には触れられたくない。

何も知らずに微笑む横顔も、前髪で隠しているニキビも、全てが美しくて、好き。殺すのはやっぱり惜しいから、冷凍保存して飾りたい。


「ピアス、開けようよ」

高校を卒業した春休みに、私は貴女の家を訪れた。貴女が逃げられないように、もうピヤッサーを買ってから。貴女は痛いかどうかも考える暇なく、私に腕を捕まえられて、ベッドに寝かされてしまう。そのまま何も言わずにバチンとやると、貴女は一瞬顔を歪めた。綺麗。録画しておきたかった。

今度は私に開けて、と言うと、貴女は震える手で私の耳に手をかける。


結果的に、痛かった。

痛かったけど、初めて貴女に触れた時の痛みを超えることはなかった。

貴女は私に少女漫画ばかり貸してくれるが、一度も借りたものをまともに読んだことがない。あまりに暇すぎて帰って読んでみたら、どうもその痛みの正体は、恋と言うらしかった。

色んな漫画をパラパラと眺めて、どうやら私はただの恋ではなく、狂愛や偏愛という言葉が、とてもよく、当てはまるらしいことも知った。

冷凍保存して飾るのは、貴女が冷たくなってしまうのでやめにしたい。椅子に縛り付けて、一日中キスをしていたいと願う。


なんだかんだで次に貴女に会えたのは二年後で、白いドレスがとても似合っていた。私が開けた穴に小ぶりなパールを刺して、軽やかなベールを纏って。

でも私は知っている、貴女には赤色が一番似合うことを。式の前、親友の私には特別だと笑って、レッドカーペットを歩くのを見せてくれたのを、きっと後悔するだろう。その真っ白なドレスに赤を滲ませた貴女が最高に綺麗で、狂おしいほど愛おしくて。

赤いドレスの花嫁は、誰にも触れさせない。貴女に二個目の穴を開けたのも私なのだから。

この世界から遠いところまで、エスケープといこうか。貴女の胸に穴を開けたナイフで私の胸をも貫いた。貴女の耳元のパールがどす黒い赤に塗り変わるのを、薄い意識の中で見ていた。


貴女の人生に穴を開けたのも、私だ。

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