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「人間の皆さん!こんにちは〜!!」


その小さい生物はキラキラ輝くアイドルのような笑みを浮かべて、見える全ての学生達に話しかける。


『ねぇ?君は何?どんな設定なの?』

「あの、聞いてますか?」


困り顔のレプリアが再度聞き直す。学生のほぼ全員が何かのイベントが始まったと感じ注目している中、たった一人だけは⋯⋯全く別の表情を見せていた。


'マズイ──止めないと!!'


「詠視!何しようとしてんだ?」


雄大が詠視の片手を掴む。だが必死な詠視はそのまま強引に向かおうと足に力を入れて踏ん張る。


「お⋯⋯い!どうしたんだよ!」

「アイツが死ぬ!」

「はぁ?」


雄大が理解出来ないという表情を見せた。詠視はそのまま行こうとするが、雄大の人間離れしている握力がそれを止める。


「信じてくれ!あの人が───」


そう話している途中、突然詠視の背後から『グチャ』と何か柔らかいモノが潰れたようにも破裂したようにも聞こえる音が部屋を支配した。


詠視は振り返ってはいないが、なんとなく予測がついている。


'レプリア⋯⋯'

この生物は一見可愛らしい見た目をしているから気付かないだろうが、コイツは──異常だ。


その姿形からは信じられないくらい──強いのだ。何故なら、この世界の生物ではな●●●●●●●●●●いから●●●


『きゃー!!!』

次の瞬間、女子学生の悲鳴が上がる。地面には先程までチャラけた学生達だっただろうモノがバラバラになってブロック肉のように固形になり、血飛沫が上がった跡が窓や黒板にスプレーをかけたようにべったりついている。


レプリアのスーツには⋯⋯ワンパンで処しただろう返り血が付いている。


そして──。


「皆さん!僕の話を聞いてください!」


笑顔。そう。笑顔だが、その笑顔は邪悪で恐怖を与える恐ろしい形相へと様変わりし、学生達を一周見回しながら警告の言葉を口にした。


 一気に空気感が変わり学生たちがヘルプを言おうとするが、声を出そうにも呼吸もままならない位詰まる肺。突然目の前で小さい生物の短い腕とは思えない破壊力に可愛さなど微塵も残らない。


 一般人がそんな状況で冷静になれる訳がない。さっきまで陽気だった学生数人の顔は原型を留めてはおらず、ただ見たくもない臓物が誰のかもわからないほど乱雑に転がっているのだから。


「うん!⋯⋯うん!そうだよね?普通はこうだよ!さぁ!皆様!」

「ちょっと待って欲しい!」


レプリアの話に待ったを掛ける者の正体は教授だった。


「何が目的なんだ!?いっ、いきなりこんなことして──なんなんだ!」


完全に正気を失い、とにかく責め立てる事しかできない教授を見たレプリア。


「なんで?確かにそうかも知れません」


宙に浮いているレプリアが1回縦に頷く。そのままふわふわ教授の近くへと動く。


「人間の皆さん、自分達の生まれはご存知ですか?」

「⋯⋯は?」


「何がなんだか分からない」と言った教授の表情。


誰もがそう思った。自分達人間という種が何故生まれたのかなど──正確に誰も知らないのだから。


「ビ、ビックバンが起きて、それから⋯⋯」


教授は地球で基本となる世界史を詳細に発言した。それをレプリアは黙って聞いている。


「そして我々と同じグループである新人類が──」


話を続けようとした教授の言葉を嘲笑うかのように狂気的な笑い声を発するレプリア。


「ギャッハハハハハハ!!傑作だ!君達人類は本当にそう思っているのかな?その⋯⋯人類進化論だっけ?それを君は信じているって事だよね?」

「は、はい⋯⋯」

「そっか⋯⋯ぷぷ。そっか、なら仕方ないね。それはひとまず置いておこうね」


教授を上から嘲りながら座っている学生達の方へと顔を向けた。


「皆様、見れば⋯⋯良いお洋服、着てますね?体型から察するに、タダで親からお食事を頂いてますね?あれ?生物ってこんな楽してていいんですかね?」


静かに学生達に向けて説教地味た言葉を発するレプリア。


「いいんじゃないですか?だって、そういうものでしょう?」


一人の女子大生が当たり前のようにそう口にした。レプリアはその女子大生を見定めるように見つめ、口元を歪ませる。


「なるほど、なるほど⋯⋯良いですねぇ〜まぁ、皆さんがどんな事をほざき散らしても──今!!この瞬間!!安心安全な時間は終わりです!!

 昔の人間達はいいですよ!色んな対価を払っていたから見過ごされてきましたが、最近の人間達は見るに堪えません!!

 今のあなた達は⋯⋯なんの対価も払わず、ただ与えられる物を受け取って、しっかりしているトイレで糞して水を飲んで飯を食って仕事して、それで終わりなんですからねえっ!」


狂気的としか思えない程表情を変え、まるで愚痴をこぼすかのように叫び、学生達に向けてそう言い放った。


「皆さんの中にもいるでしょう?「なぜ今生きているのか?」「早く死にたい」「争いたい」大丈夫!これから私が良い世界を作って差し上げます!!皆さん今まで良い人生を送っていたようですが、もうそんな世界は無くなります!!遠慮せずに取り組みましょう!!!幸せを夢見るのはこれで終わりだよ!!人間!!!」


可愛らしい見た目だったレプリアの瞳が突然真赤に染まり、体毛で覆われていたはずがその上から血管が浮き上がる程レプリアの気が爆発的に沸き立っているように見える。


そしてそれに恐怖して呆然とその姿を見る者。

腰が抜けて軽く漏らしてしまう者。

好奇心溢れて目を輝かせながらその光景を眺める者。

友達同士抱き合いながら必死に紛らわす者。

知っていたとばかりに目の前の光景を見る者。

 そんな場合じゃない精神状況の中、更に追い打ちを掛けられて疲れている者。


この場にいる全員が様々な反応を見せる。レプリアはそのまま説明を始めた。


「さぁ!見せてくれ!お前達人間の物語を!!!!」


そう怒鳴り込むように荒々しい口調で言い放った後、小さく細い指でパチンと指を鳴らす。


ブゥン。


'⋯⋯っッ!'

詠視の表情が固まる。目の前には青いウインドウが現れ、そこには何か文字が書かれている。


[第10宇宙S-0@◎±◎≠⊆_@チャンネルがオープンしました]


[天の≧"【*└・から│−│↓『がやってきます]


そして、そのウインドウが閉じるのと入れ替えでもう一つのウインドウが現れる。


ピロン。


[メインとなるシナリオが届きました]


この場にいる全員の目の前に同じ文面のウインドウが現れ、全員に緊張が走る。


[メインシナリオ:灯台下暗し]


とにかく生き残ってください


難易度D

制限時間5日

報酬チュートリアル分、450GC

失敗時−−死亡

逃走時−−魂の処分


「では皆さん──生まれ変わった世界であなただけの物語ストーリーを見せてください!!」


そう言い残してレプリアが次元の穴らしきモノに入って行ってその姿は跡形も無くなくなった。

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