本棚のむこうに

もずく

第1話 夢

なにか壮大な夢をみた。しかし、具体的には思い出せず、ただとてつもない夢をみていた感じだけが残っている。なんとも言えぬこの夢の残滓は登校する間に消えていた。今考えると、この夢は僕の人生を一変させる巨大な夢だった。


「夕太!今日本屋よっていこ」

「おう」

こいつはコースケ。唯一の友達である。高校に入ってから中学での友達とは高校が同じであるコースケ以外絶縁状態、高校で新しく友達も作れずにいた。ていうか、普通にコースケだけで友人は足りていた。同じクラスだし、結構席も近い。今日はコースケの好きな漫画の新刊発売日だそうである。僕は久しぶりに本屋に入った。

「あ!あったあった」

「あってよかったね、あと1冊だけだった」

「あぶねー」

あっ、今来た同い年くらいの女子が明らかにしょんぼりしている。絶対新刊欲しかった人じゃん……。気まづくなり、僕たちはさっさと会計し、外へ出た。

「あの子かわいかったし、あげたら?」

「ばかいえ!オレだって楽しみにしてるんだぞ」

「コースケの楽しみはオナニーだけだろ」

「それだけじゃねえよ!!」

「あの子をおかずにすんなよ」

「しねえよ!」

「あの子のおっぱいでかかったな。胸揉ませてもらう代わりにそれあげたら?」

「それなら……、ってあげないわ!!」

あほな会話をしていると、さっきの女子がこっちを本屋の窓越しにみているのに気づいた。ずっとみていたのか?それだけこの新刊が欲しかったのかもしれない。また気まづくなってしまい、コースケとはそこで別れた。この本屋はコースケの家に近く、僕の家からは離れているので、通学路的には遠回りしている。僕は帰り道であの子のことを思い出していた。どこかで見たことあるような……、ないような……。うーん、ないかな。あの子うちの学校の制服じゃなかったし……。まあいいや、帰ってシコろ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る