俺の隣はすでに決まっていたはずなのに。 ~Catch the Glittering stars☆彡~
Mimiru☆
幕開け ‐turning point‐
すべてはここから始まった ‐one year ago event‐
雲ひとつない、晴れ晴れとした空が広がっている。
かなりの話の長さだったからか、歩いてるだけでもあくびが出てしまう。
「稀羅、お疲れ。今から帰りか?」
靴箱に行くと、彼の姿が目に浮かぶ。
茶色に染めた髪を目にかからないよう髪を右手で抑えた彼は、よっと手をあげた。
「おー、お前はバイト?」
「いや……実は卒業する先輩達が一緒にどこかいきたいって聞かなくてさ。とりあえず、お食事にでもってことになって」
「相っ変わらずムカつくことを平気で言うよなぁ、お前は」
「別に、リア充じゃないだけいいだろ?」
「昴君、バイバーイ!!」
「あ、またね」
整った輪郭と爽やかな笑顔が、今度は後方の女子に向く。
挨拶を返された女子は嬉しそうに、何人かの団体で去ってしまった。
身長175センチながら、バスケやサッカーなどのスポーツはお手の物。
女子全員を虜にさせる眉目秀麗さは俺の知ってる中で、かなぁりモテるリア充野郎だ。
にも関わらず、勉強がしたいから彼女は作らないだの、一人に絞ったら他の子がかわいそうだの意味がわからないことしか言わない。
ほんと、もったいない奴なんだよなぁ。
「お前だって人に言えないだろ? 僕から見れば、稀羅のほうが青春してると思うけど」
「そうかぁ~? そんなにかわんな……あ?」
「どうした?」
「いや……下駄箱になんか入ってる………」
靴を取ろうとした直後、くらいだった。
ノートの切れ端が、そっと上に置かれていた。
なんだろうと中身を見ようとすると、黒い物体が俺の視界を遮って……
「ふむふむ……上杉稀羅様、校舎裏に来てください、か。上杉稀羅は急用だから、かわって俺が行くことにしよう」
「待て待て待て。勝手に用を作るんじゃねぇよ、お前が行きたいだけだろ」
「稀羅……お前が持つそれは紛れもなくラブレターだ、ラブレターに違いない。今から行こう。その告白を受けて、華やかな2年生デビューを飾るのだ!」
「うん、少なくともお前宛じゃねぇから」
絶妙なタイミングでやってきた彼の首を、とりあえず掴んで動きを止める。
彼は
黙っていればそこそこいい奴だと思うんだが、頭の中のほとんどが彼女を作ることしか考えていない。
愛読書は『モテる男の流儀』、女性がいればとにかく口説きに行くなど、もはや常人の域を超えている。
さらに残念なのが眼鏡をしている奴はたいてい頭がいい、というイメージを覆すほど成績が悪いという……
とまあ、彼らが俺が普段関わっている友人である。
こいつらと出会ったのはバイト先のコンビニがきっかけだ。
この大学は三つの学部に分かれてるだけでなく、それぞれのやりたい事や学びたいことに沿って多様なコースに分かれてゆく。
ちなみに俺は日本文学コースといって、国語を主に学ぶもの。
昴は理数コース、北斗は社会学コースといった具合に見事にバラバラなのだ。
選んでいるものは違えど、共通科目もいくつかあり一緒になることもしばしばあるのだが……
今はそんなこと、どうでもいいか。
「へぇ、誰だろうな。宛先とかは書いてないみたいだけど」
「なんでわざわざ校舎裏なんだよ……めんどくせぇなぁ」
「そういうことなら俺が行こう。たまたま今日は何もないぞ」
「お前が暇じゃない日なんてないだろ……とりま行ってくる」
「あ、稀羅。その子を傷つけるようなこと、あんま言うなよ?」
昴が釘を刺すように言う言葉を、適当に流しながらその場を後にする。
そうこうしてる間も、北斗の嘆いているような声が聞こえてきたが……何も、気にすることはなかった。
ラブレター、か。
赤くなっていく空を見上げながら、徐に校舎裏へと向かう。
今日が卒業式というタイミングから、相手は四年生の誰か……というところだろうか。
別に、こう言うことは初めてじゃない。
なんてたって俺は、超がつくほどイケメンだ。
いや自分で言うなよ、なんて言われるかもしれないが、俺は歩いているだけで女の子がひそひそと噂をする本物のイケメンなのだ。
身長170cm、成績は中の上。家事も出来れば運動もできる、まさにモテる男の条件をすべて持って生まれた。
それもあってかそれもあってか初対面や、バイトのシフトに入ると声をかけられることの方が多い。
実際、今起こっていることこそ俺の美しさを象徴しているといってもいい。
まあ数的に昴の方がモテるのは、認めるが……
そんなことを考えていると、やっと人影が見えてくる。
うちの学校じゃ珍しい、透き通る金色の髪だった。
「すんませーん。あの、手紙くれたのって……」
「………あ。本当に来てくれたんだ」
細く伸びた手足、すらりと高い身長。
振り返ったその瞳は海のように青く澄んでいて……
一目見て彼女が誰か、わかった。
それと同時に、信じられないと言う感情も湧いてくる。
なんせ私だと言った彼女は、誰もが知るあのー……
「はじめまして、でいいのかな。私、
「……知ってますよ。有名な読者モデルさん、っすよね?」
「あら、知っててくれてるの? 嬉しい。やっぱり、やっててよかったわ」
髪を耳にかける仕草、風で舞う髪。
どこをどう切り取っても絵になると、そうメディアで紹介されていた。
この大学じゃ知らない人はいないほど有名な読者モデル、輝夜聡寧。
そいつがまさか、手紙の相手だったとは。
「あの……私実は、あなたのことを前からいいなぁって思っていたの。よかったら……私と、お付き合い……してみない?」
風が、吹く。
その女性は誰もが目を奪われるほど綺麗な金髪で、綺麗な青い眼をしていた。
誰もがこんな人彼女だったらいいなと、そう思うだろう。
だが、俺は違う。
「あー、すんません。あの、すげーお気持ちはありがたいんすけど。俺、好きな人いるから」
俺のことを知る人は、皆こう言う。
残念なイケメンだ、と。
(つづく!!)
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