第9話 美少女三人と俺とで、とあるゲームをすることになった

 東浩乃あずま/ひろのは今、とある場所にいた。


 今日は土曜日。辺りを見渡せば、かなりの人が集まっており、賑わっている様子だ。


 普段から訪れることなどないが、由羽の協力の元、そこに入場できていたである。


 現在いる場所。

 そこは街中から少し離れたところにあるテーマパークであった。


 テーマパークゆえ、色々な乗り物があったりする。


 ジェットコースターやコーヒーカップなど、他にも色々。


 ただ、今日のメインは、そういったモノに乗ることではない。


 今日、このテーマパークでは、イベントが開催されているのだ。


 むしろ、そちらの方に参加することが重要だったりする。


「浩乃君も、ちゃんと来たね」

「ちょっと遅かったかもしれないけど」

「大丈夫よ」


 桐野由羽きりの/ゆうは私服姿であった。


 制服とは違う雰囲気を放つ彼女の魅力に圧倒されてしまいそうになる。




「全員が集まったなら、早く参加しに行きましょう‼」


 しゃれた感じでありつつも、動きやすそうな服装をする、後輩の多岐川朱莉たきがわ/あかりもすでにやってきた。


 彼女は先ほどまで、アトラクション的なもので遊んでいたらしい。


「今日は絶対に負けないから」


 一番遅くにやってきたのは、大人びた服装に身を包み込んだ部長の南海果那みなみ/かな

 クールな佇まいで、強気な口調で、由羽と朱莉に宣戦布告をしていた。


 三人の中で火柱が散っているような状態。


 その三人は、誰が浩乃に相応しいのか、真剣勝負をしようとしているのだ。


 絶対に負けられない戦いが、今日、このテーマパークで行われようとしていた。




「それで、どんなことで勝負するんですかね?」


 浩乃は由羽に問う。


「私もまだわからないわ。主催者が、どんなイベントを用意しているかにもよるわね」


 由羽は辺りの様子を見ながら返答していた。


 どんなゲーム内容だったとしても、問題はないといった感じに、彼女は動じることなく淡々と話しているのだ。


 私こそが勝者といわんばかりの表情が垣間見れるようであった。


「私も負けたくないですから。私の方が、一番、浩乃先輩のことを知ってますし」


 後輩も負けじと、二人に対して、強気な姿勢だ。


「では、あなたは浩乃君の何を知っているのかしら?」

「それは、浩乃先輩の趣味です」

「趣味?」


 由羽は少し興味深そうに眼を光らせていた。


「それは興味深いわね」


 部長も、その話に食いついてくる。


 浩乃は普段から趣味についてはあまり口にしないのだ。

 そういうことも相まって、興味を持たれていた。


「浩乃先輩の趣味は」

「あッ、ちょっと待って」


 浩乃は後輩の口元を塞いだ。


「――」


 後輩は何かを話したがっているが、口を塞がれているため、うまく口にできていなかった。


 というか、なぜ、朱莉に趣味がバレているのだろうか?


 それがちょっとした気がかりであった。






≪では、今からイベントを開催します。参加の方は、テーマパークの中心へ集まってください≫


 その場にアナウンスが響く。


 四人は、現地に向かうことになった。


 今回の参加者は、ざっと見て、数十人といったところ。


 百人はいかない程度である。


「参加者もそれなりに多いわね」


 部長はまじまじと周りを観察していた。


≪では、全員が集まったみたいなので、今日のイベント内容を解説しますね≫


 多くの人が集まる場所。

 その一番前に立つ、司会者的な女性が、皆を見渡しながら事を進ませていたのだ。


≪今回のイベントは、二人一組でペアを組んで、色々ゲームをしてもらいます≫


 二人一組。

 だとしたら、ここには四人にいる。


 必然的に二つに分かれることになるだろう。


≪イベントで行われるゲームは複数ありまして、その一つがビンゴゲームになります≫


 ビンゴだったら、簡単そうである。

 むしろ、運要素が絡んでくるゆえに、競い合いという感じではなさそうだ。


≪ですが、ここでのイベントで行われるビンゴゲームが運だと思った方は、間違いですよ≫


 と、心を見透かされているような司会者の声が聞こえてくる。


≪ビンゴと言っても、ランダムに出た数字を揃えていくものではなく。ここのテーマパークに隠れている数字を集めるといったゲーム内容になります‼≫


 ということは、運要素というよりかは、推理しながらやっていくことになるのか?


 最初は簡単そうだとか思ったが、それは見当違いだった。


 かなりのハードモードになったと、司会者から、そのゲーム内容を聞いて感じるようになったのだ。






「では、ペアを決めましょ」


 由羽が仕切り始める。


「どんな方法で決めるのかしら?」


 部長は三人を見渡しながら言う。


「ここはじゃんけんでってことでよいのでは?」


 後輩が、提案してくる。


「その方が不正なくていいわ。では、じゃんけんってことで」


 浩乃を含めて、じゃんけんをする。


 最初に勝った二人と、残った人で組むことになるのだ。


 結果として――


「私が、東君と一緒ね」


 浩乃のペアは、部長であった。


 今回のビンゴゲームは推理が重要になってくる。


 この場合、かなり有利にゲームを進められそうな気がした。


「でも、ビンゴゲームは、あなたたち二人のペアね。次のゲームの時は、またペアを変更するから。今日は浩乃君とペアを組んで、そのゲームでの点数の多さで決めるんだからね。だから、ゲームごとにペアの順番は変えるから。そこはよろしくね。わかった?」


 由羽が三人の様子を確認しながら話していた。


「わかってるわ」

「了解しました」


 と、部長と後輩は、各々の返答の仕方をしていた。




「私は朱莉とペアを組むから、二人とも頑張ってね」


 由羽は、浩乃とペアを組めなかったことを根に持っているのか、少々嫌味な視線を、果那先輩に向けていた。


「頑張るも何も、私の圧勝だと思うわ」


 部長はそんな挑発を簡単に乗り越えるように、自信ありげに言うのだ。


 かなり頼もしい存在である。

 と、浩乃も感じていた。


 しかし、いくら有能だとしても、浩乃も何か貢献しないといけない。


 普段から部長には助けてもらってばかりだからだ。


「東君、行きましょうか」


 頷く前に、部長は浩乃の腕を引っ張る。

 ちょっとばかし転びそうになるが、何とか態勢を整えた。


 今、正面ばかりを向いて歩いている部長からは、絶対に勝ちたいというオーラが放たれているようである。


 二人はひとまず、先ほどの司会者近くの場所にある受付カウンターへと向かい、ビンゴカードと、今回のゲーム内容についての詳細を聞くことになった。


 そんな中、浩乃がチラッと辺りを見渡した時、知っている感じの子がいたのである。


 それは――


 奈月……?

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