愛さなくても結構ですわ。政略ですから!

蒼珠

愛さなくても結構ですわ。政略ですから!

「悪いが、君を愛することは出来ない」


 マッケラン公爵家嫡男ルイージ・アルッフテル・マッケランは、静まり返った寝室で重々しく宣言した。

 寝室のベッドには華奢で可愛らしい顔立ちの元ウィステリア伯爵令嬢、現次期マッケラン公爵夫人パウラが、薄い夜着にガウンを羽織って座っていた。

 つい数時間前に結婚式を挙げた所で、今は通常なら初夜だった。


「はい。政略ですから構いませんわ」


「……そ、そうか。

 …いや!構うだろう!何のための政略結婚だと思ってるんだ!」


「あなたの気持ちはどうでもいいというお話ですわ。

 そもそも、政略結婚で求められてるのは何か、お分かりでしょうか?

 家同士の結び付きや派閥の強化、そんなものは結婚なんかよりお互いの信頼関係を築けばいいだけです。

 代々血筋を重視して政略結婚して来た理由、それは当然、優秀な子を作るためです。教育だけではどうにもならないというのは、歴史が証明しておりますわ」


「そ、それがどうしたんだ?だから、君を抱けと言われても私には心に決めた相手がいる。裏切るワケにはいかんのだ!」


「そんなこと申してませんわ。政略結婚の理由を確認したまでです。

 誰も裏切らなければ、あなたは子作りに協力しますね?

 子種を採取する魔道具がございますの。

 大丈夫、痛みはないと聞きますわ。眠ってる間にすべて終わりますので。

 ……【スリープ】」


 パウラの魔法でルイージはすぐ眠り、その場にひっくり返る。弾力のある絨毯が敷いてあるので、打ち所が悪いといったことはない。


 パンッパンッ!


 パウラが手を叩くと、控えていた使用人たちが寝室へと入って来て、ルイージをぞんざいに担いでどこかへ連れて行った。


 結婚間近でも恋人と別れず、まったく隠さないルイージだったので、初夜を拒否するのは予想していた。

 パウラもまっぴらなので、ちょうどよかったとも言える。


 子種を採取する魔道具はブラフではなく、本当に実在しており、パウラの卵子を採取したのも魔道具だ。

 そして、受精する前に変異遺伝子、障害を持つ遺伝子を除外し、優良遺伝子だけで受精卵を作り、人工子宮で育てる。

 その人工子宮はマジックアイテムで、人体を模したものではなく、植物型で専用の鉢に種を蒔き、魔力を専用じょうろで注ぐことで育て、時が満ちれば実が出来、その中に赤子が入っている。

 巨大な実になるのではなく、実の中は異空間になっており、実のサイズはプラムぐらいで、生まれる時は自然に実がなくなり、標準サイズの赤子になる。

 実の色付きで赤子の成長具合が分かるので、今か今かというワクワク感も味わえる、という。


 性別を選ぶことは出来ないものの、母親の胎内で育てないメリットの方が多いので、この先、主流になるだろうが、誰でも使える方法ではなかった。

 注ぐ魔力は赤子と魔力の相性が合う必要があり、親の魔力が少なければ、親は常に枯渇ギリギリで辛い状況になる。

 画期的な技術なため、どうしても高額になり、一部にしか公開してない。


 パウラが手に入れたのは、たまたま運が良かっただけの話で、モニターも兼ねていた。


 さて、無能な嫡男ルイージはいずれ廃嫡にして、パウラの子を跡取りにしてもらう計画を立てよう。

 今日は眠いので明日から。


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愛さなくても結構ですわ。政略ですから! 蒼珠 @goronyan55

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