2053年の無料結婚式!!!

漢字かけぬ

第1話 無料の結婚式

 俺、詩絵夢しえむ ダイマは、彼女の広巣ひろす ラテと結婚する。

 スマホで結婚式場の見積もりを取ったけど、300万から400万だってさ。

 上京してきたから大学の友人しかこれなさそうだし、ご祝儀も雀の涙。

 親の支援はゼロ。こういうのって親がちょっとは出すんじゃねーの?

 彼女も手伝ってくれていて、俺にこんなネット記事を見せる。


 ”結婚式無料!!資金は1円も頂きません!!!”


 うわ、個人情報収集する詐欺なんじゃねーの?と思いつつ紹介動画を見る。

 何でも動画サイトと提携して結婚式をするんだと。

 いわばこの式自体が広告になるわけだ。

 彼女のラテに説明したら「式場浮いた分は家のローンに回せるね♪」と発言。

 それには賛成である。身内で集まる”家族婚”はだいたい50万円。

 手取り換算で2か月半が一瞬で消し炭になる。


 式場スタッフとメールで日程調整した後、オンラインでプランを決める。

 広告になるということで会場自体も立派なものだ。カメラ越しとはいえ

 ステンドグラスにパイプオルガン、日光が差し込み幻想的な雰囲気が漂う。


 「本当に全額無料でいいんですか?

 自分達インフルエンサーじゃないんで広告にはならないですよ?」

 「いえこちらは各社から広告を頂いてる側。

 いうなれば宣伝という形で商売が成り立つのです。

 例えば玩具のタイアップ目的の雑誌や、

 テレビのスポンサーCMと一緒です」

 「あー料理とか食べてる写真がネットに載る訳か」

 「察しが良くて助かります」


 スタッフは紳士的だった。いや結婚式をすればするほど利益が出る方式なら

 客を逃がさないために最高の営業マンをぶつけるはずか。

 彼女も質問していく。

 

 「結婚式の後車に缶付けて走る演出もありますか?」

 「ブライダルカーですね。

 当社スポンサーの結婚自動車社と結婚飲料社の缶なら可能です」

 「ウェディングドレスの質ってどんなものですか?」

 「流石に最上級の物はご用意できませんが、

 他の一般家庭でも用意できる最高の物を準備いたします」


 テレビ無い俺でも知ってるような有名会社がスポンサーなあたりまともそうだ。


 「他にご質問はありませんか?料理の方も隙はありませんし、

 エキストラも多数いますのでご友人が少なくとも映えはあります」

 「エキストラ?」

 「いうなれば”ご友人代行”です。ある程度の設定さえ用意して下されば

 スタッフが演技をします。勿論”上司様代行”や”ご家族代行”もです」

 「そ、そんなサービスまであるんですか」ドン引き

 「ええ、結構業界では有名ですよ?

 流石に広告は打ってませんので、一般の方はご存じないかと思いますが」


 退職代行みたいなノリか。


 「前日に軽いリハーサルを行います。

 その日まで、お2人共髪の毛は切らないでください。

 専属のスタイリストがバッチリ仕上げますので。

 ご要望の髪型があれば画像を添付していただけると助かります」

 「流石にそこはプロに任せます」

 「ではこれにて、お二人の門出を祝福する

 vanityヴァニティーユニオン社スタッフ、

 千乃せんの デンヤが担当いたしました」



 ー ヴァニティーユニオン結婚式場 リハーサル ー


 結婚式の流れとかの説明会。

 どうやら食事は各自好きなものを取るビュッフェ方式。

 まあ食べる順番とかルートは決まってるんだが。

 流石に全部覚えきれないのでカンニングペーパー用スタッフがいる。

 スケッチブックで俺達を誘導する係だ。


 突然肩を組み親しげに挨拶する男。俺の知らねえ奴だ!!


 「よッ!ずいぶんカッコよくなってまぁ。しかも美人な嫁さんとは!

 先越されちまったな~」

 「ええと。どちらさまでしたっけ?」

 「あん?大学ん時同じサークルにいた桜井だよ。もう忘れたのか?」

 「・・・・ああ!桜井ね。合コンで毎回王様になれない不幸属性持ちの!」

 「なんでんなことだけ覚えてんだよ!!!・・・・当日もこんな感じで」

 「マジで焦りましたよ。リアルすぎるウザがらみだったので」


 そういえば友人代行スタッフもいたんだっけ?


 続く

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