閑話10『0円でなれるVTuber!~マイク編~』
ヘッドホンとカメラは見繕ったし、あとはマイクだけだ。
しかし、出てきた検索結果は……。
「形も種類も多スギテ、ワカリマセン」
「ざっくりいうとコンデンサーマイクとダイナミックマイクの2種類だねぇ~。とりあえずは、コンデンサーマイクは高価で高性能でデリケート、ダイナミックマイクは安価でシンプルで頑丈って認識でいいかなぁ~」
「じゃあワタシの場合はダイナミックマイク、デスネ」
「そのとぉ~り! って、言いたいところなんだけどぉ~」
「ちがうのデスカ?」
ワタシは首を傾げた。
マイサンは「基本的にはそれで合ってるんだけどぉ~」と続けた。
「
「ヘェ~」
「とくに”オーディオインターフェース”がない場合はダイナミックマイク単体より、A/Dコンバータとかがついてるコンデンサーマイクを買ってUSB接続したほうが音質がいいこともあるみたいでぇ~」
「???」
「えぇ~っと、わかりやすくいうと、オーディオインターフェースは”音をきれいにする装置”だねぇ~」
ちなみに、A/Dコンバータはアナログの音をデジタルに変換する装置らしい。
基本はオーディオインターフェースにそちらも内蔵されているらしいが……。
「なるほどデス。ワタシは持っていないカラ」
「そういうことぉ~。けど、注意点。もし配信を続けていくなら、安いマイクは将来的に、ほぼ間違いなく買い替える必要が出てくる」
「これを使い続けテハ、ダメなのデスカ?」
「ダメということはないけど、マイクはとくに値段と性能がダイレクトに繋がってるからぁ~。もし音質を良くしたかったら、お金をかける以外の選択肢がほぼないんだよねぇ~」
マイサンは「ゆえに」とワタシの状況をこう評した。
お金をかけられない場合は――”どこまで誤魔化せるか”の勝負だ、と。
「そうなのデスカ……ハッ!? もしカシテ、イロハサマがASMR配信をしないノモ、これが理由なのデハ!? マイクが非常に高価ダカラ……!」
「ないない」
「デスヨネー」
けれど、ひとつ目標が増えた。
いっぱいお金を稼げたら、イロハサマにバイノーラルマイクをプレゼントしよう!
あるいは有名になって、ASMRコラボ配信を企画するのだ。
うぇへへ……想像してたらよだれが。
「ウェヘヘ……、ジュルゥっ」
「心の声もよだれも漏れてるよぉ~? けど、イロハちゃんのASMRについてはマイも協力にやぶさかではない」
「「……」」
ふたりでガッチリと握手した。
ちょっとだけ友情が芽生えた、そんな気がした。
「アノ、そういえばこのポップガード? っていうのはいらないのデスカ? 一緒に購入するのをオススメされていマスガ」
「基本的にはいらないかなぁ~? しゃべるときに、唾液が飛びやすいとか吐息が混ざるクセがあるとか、高いマイクを使ってないかぎりはぁ~」
結局ワタシは、いろいろと見比べてA/Dコンバータつきのコンデンサーマイクに購入を決めた。
このマイクが3000円でヘッドフォンが3000円、webカメラが2000円だったから……。
「アレ? これで全部デスカ? 合わせて8000円ですケレド」
「そうだよ。たったこれだけで配信は可能なんだよぉ~」
すごい、本当に1万円で足りてしまった。
余った2000円は……よし。イロハサマへのプレゼントに使おう!
日本でもバレンタインにプレゼントを贈る文化があるとのこと。
今から張り切って、材料などを準備しておかないと!
「あとは商品が届くのを待つだけデスネ!」
「機材に関してはそうかなぁ~。快適にゲーム配信をしたいなら、追加のモニターとキャプチャボードはやっぱり欲しいけどねぇ~」
「キャプチャボード、ですか?」
「そう。たとえばスウィッチのゲーム画面を一旦パソコンに取り込んで、それから出力しようとすると大きなラグが発生するの。だから、分配してモニターとパソコン両方同時に出力を……って、聞いてるぅ~?」
ワタシはプシュゥ~と頭から煙を上げた。
このあたりのことは2枚目のモニターを買って、ゲーム配信をするとなってからでいいかもしれない。
「まぁ、いざ買うとなったときのために言っておくと、モニターもキャプチャボードもゲーム機の性能に合わせて買うのがいいよぉ~。1080pの60fpsまででいいのか、4Kの120fpsまで必要なのかぁ~」
「……ハイ! わかりマシタ!」
「絶対わかってないでしょぉ~?」
「ト、トモカク! それジャア、しばらくはお休みデスカ?」
「ちょぉ~っと待った。商品が届くまでの間にやっておかないといけないことが、まだたくさんあるよぉ~? ハードの準備が終わったら……いよいよソフトのお話!」
「そうデシタ! というコトハ、マサカ!?」
ついに来るのか。
ワタシがもっとも気になっていた問題だ。
「そのとおり! じゃあ、教えてあげる……」
「――VTuberのモデルを”0円”で入手する方法を!」
そしてワタシは知ることとなる。
『0円でVTuberになれる』というマイサンの言葉が、決して大言壮語ではなかったことを――。
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