第39話 SMB-3

「うーわ・・・・・・・・・めっちゃシた」


もぞりとベッドから這い出して、まだ薄暗い窓の外を確かめてから足元のゴミ箱をひょいと覗いて槙は低く呻いた。


捨てられているソレは3つ。


二回目までははっきりと意識があった。


歩実が何度目かの熱を爆ぜさせて、びくびく腰の奥を震わせて、あ、それやばいってと言いかけて、無理だと思って両足を抱えて・・・・・・


これはそう、二回目の記憶だ。


二回目のくせにそう長く保たなくて、仕事が忙しくて抜いていなかった事と、徹夜のせいかとふやけた頭で考えながら溜まっていた熱を吐き出した。


胸は無いから嫌だと騒ぐ彼女を軽く押さえて、可愛いよと宥めて、熟れて来た胸の先を弄ってやっていたらすぐにその気になって来て、歩実の反応も良さそうだしこれならもう一回行けそうだなと思ったところまではちゃんと覚えている。


手のひらが余るサイズはお世辞にも豊満とは言えないが、その分感度は抜群にいい。


指の腹で優しく擦っただけで腰を震わせてくれるから、楽しくて仕方ない。


彼女の身体は、なんと言うか見た目通りというかイメージ通りの無駄な肉が付いていない綺麗な身体をしていた。


これといって運動を続けているわけでもないのに、贅肉が少ないのは体質なんだろう。


歩実は昔からよく食べるしよく飲む。


それでも細身の割には腰回りはまろやかで、抱き寄せても危うさは感じない。


腕の抱えるにはちょうどいいサイズ感だった。


片腕で簡単に腰を引き寄せてしまえるのも、色々と便利でいい。


何かにつけてベッドの端へ寄りがちな彼女を抱き寄せる時に片腕で済むのは助かる。


『も、それ・・・ば・・・っか・・・・・・っぁ』


いい子いい子と指であやした胸の先がだんだん凝って来て、両足の隙間を確かめようとしたら腰を捻って逃げられた。


それを片腕で引き戻して元通り仰向けに戻してから先に膝を割ってしまう。


内ももまで伝っているそれを指で掬ってやったら、歩実が分かりやすく目を逸らした。


『胸の先好きだろ?』


『す、きだけど・・・・・・あ、いや、好きじゃな・・・・・・っ』


『嘘つき・・・・・・ここひくひくしてるけど?』


忍ばせた指先を隘路の入り口で遊ばせてわざと水音を響かせたら、歩実が手首を押さえて来た。


その手を逆手に取って、気持ちいい場所へと導いてやる。


『自分でこっち触る?』


『ばかぁ・・・・・・もう・・・しないっ』


『明日休みだし、予定もないし・・・・・・俺はまだシ足りない』


見る間に熱を取り戻した腰を押し付けて視線を合わせると、歩実が本気で信じられないという顔になった。


『あんた・・・・・・どんだけ元気なの・・・?』


『・・・・・・週末だから?』


彼女から、立ち合い点検入ったから金曜の夜家泊めて貰っていい?と言われた時からそのつもりだったのだ。


恐らく歩実は、遅い時間に自宅まで戻るのが面倒で槙の部屋に泊まりたいと言っただけなのだろうが。


性欲は人並みだと思っていたけれど、実はそうでもなかったのかもしれない。


一度スイッチが入るとなかなかそれが切れないらしい。


ソファーで歩実を抱き寄せた時も、あんなにあっさり身体が反応するなんて思わなかった。


湯上がりの彼女に興奮するなんて、まるで妄想だけ膨らませている未経験の男子高校生のようだ。


どんなにしんどくても湯船には絶対浸かる派の歩実が喜べば、と適当に選んだ入浴剤のセット。


彼女がこの部屋に来なければ一生日の目を見ることの無かっただろうそれ。


女子の好きそうな香りのアソートだな、と思ってとくに深く考えずに購入したけれど、おかげで木蓮の香りを好きになりそうだ。


この匂いを纏った彼女の肌はより一層甘く感じられた。


ちゃんと反応を返す歩実の身体にいけそうだなと新しいパッケージを手繰り寄せて、背中を向けて来た彼女にこっちからする?と尋ねた、あれは妄想ではない。


そして、現在。


上掛けの中で丸まって微動だにしない歩実は、よく眠っている。


そろりと伺った寝顔は穏やかなものだったので、起きてから全力で機嫌を取ればまあ引きずる事は無いだろう。


歩実の良いところは見た目通りサバサバしているところだ。


あっという間に槙の部屋にも居着いてしまったし、最初こそ緊張した顔を見せていたが今では我が家同然にリビングで寛いでいる。


順応性が高いのだろう。


このままどんだけ居着いてくれてもいいんだけど。


ベッドに連れ込んだ時に外して、部屋着と一緒に適当に放り投げたヘアバンドをベッド下から救出して枕元に戻した。


あーそういやビール飲んでたな。


後片付けをすることなくそのまま寝入ってしまったので、まずはそれをどうにかしなくてはならない。


歩実が泊まりに来た翌朝は二人でパン屋に朝食を買いに行くのが日課になっていた。


が、起きた彼女は動けるのだろうか。


ふと疑問が浮かんで、それから壁掛け時計を確かめた。


ただいま朝の8時過ぎ。


このまま歩実が昼過ぎまで眠っている可能性もある。


適当に食べるものを買って来ておくほうが賢明だろう。


もともとも料理はしないし、食材は買っても無駄にするだけなので冷蔵庫はドリンクストッカー状態だ。


今日と明日の朝飯と・・・飲み物と、歩実が喜びそうなデザート。


丸一日部屋で引き籠れる位の食料をまずは調達してこようと、名残の残る身体で大きく背伸びをしてからベッドルームを後にした。


数時間後目を覚ました歩実が


「お腹空いた腰痛いお腹空いた!」


とぼやくのはまた別のお話。

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