フィアー・ザ・モンスターワールド
言乃葉
第0話 プロローグ
――宇宙はその時を境に法則や原理を大幅に“改変”されてしまった。
初めに言ってしまうと、この“改変”の原因は人類には決して手の届かないどうしようもないところに発端があった。
犯罪のように防止や捜査できるものではなく、自然災害のように予測や避難ができるようなものでもない。唐突に理不尽に不条理に人類はその“改変”に地球ごと巻き込まれてしまったのだ。
“改変”を行ったのは人類よりも遥かに高次元の存在。地球やら太陽系、銀河系、超銀河団、銀河フィラメントさえその存在にとっては自室のインテリアか庭の植木みたいな感覚で眺める。そんな人類にはどうしようもない存在の行動が発端だった。
その高次存在が“改変”をするきっかけも宇宙をインテリア感覚で観る存在らしく、単に『模様替え』をする気になっただけだった。その存在にとって宇宙の法則や原理の幾つかを“改変”するのは人間で例えるなら部屋の壁紙を替える程度、いや本棚の書籍の配置換えをする程度の労力でしかない。
“改変”をする動機も単純で、これまでの宇宙に飽きたから。なので存在にとってはお手軽に宇宙を“改変”しようとしたのだが、その矢先にある物が不意に目に留まった。
高次存在にとっては微生物以下の存在でしかない一個の惑星、地球だ。高次存在の目に留まったのは全くの偶然だったが、地球が内包している情報量にその存在は興味を引かれた。これも人間で例えるなら本棚の整理をしていて不意に面白そうな本を見つけて、つい読み耽ってしまったようなものだった。
高次存在は地球がもつ様々な情報、人類の文明文化に触れ、ほぼ一瞬で全てを理解する。高次存在なだけあってその情報収得能力も人類に推し量れるものではない。地球について、またそこに住まう人類について理解した存在は、これだ、と思いついた。高次存在が強い興味を示したのは、人類が生み出した数々のサブカルチャーだった。
宇宙には数々の知的生命体が生息しているが、地球の人類のように空想の翼を広げて創作活動をする生命体は実のところ少数派だった。さらに人類のように書籍やゲーム、映像作品など多種多様な表現方法で創作する知的生命体となればさらに少なくなる。
高次存在は人類が生み出した数多くのサブカルチャーの情報を収集し、理解すると強い関心を持つようになった。今からやる“改変”のテーマに使えそうだったからだ。
地球人類がその脳内の幻想世界で生み出した数々の幻想を現実のものにしてやろう。高次存在は人類が生み出されたサブカルチャーに強いリスペクトを受けて世界の“改変”に着手した。
銀河フィラメント規模で大改変されていく宇宙。当然ながらそこに属する地球も巻き込まれている。それを眺めながら高次存在は、再び軽い思い付きと“改変”のテーマのアイデアをくれた地球にさらに一手間加えることにした。
地球に住まう人類の文明度合いからすると世界が大幅に変われば人類の存続が危うくなってしまう。面白い文明が簡単に滅ぶのは高次存在としてもちょっと残念だからだ。
なら“改変”の片手間で少し手助けしてやろう。後は地球の人類の努力次第、そんな軽い気持ちで高次存在は地球に干渉した。
以上の出来事が起こった時、地球の暦は日本標準時で西暦2020年12月1日を示していた。この日を境に世界は変わった。
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