地球ぐるぐる世界旅行記
浅香ユミ
イグアスの滝(アルゼンチン、ブラジル)
イグアスの滝へは2度行っている。ブラジルとアルゼンチンの2カ国にまたがるイグアス国立公園は木々の生い茂る広大な国立公園だが意外にも気軽に行ける観光地である。観光のメインとなる滝までは遊歩道がきちんと整備されており車椅子で訪れている人もいた。
イグアスの滝部分は東京都よりも大きい国立公園の中の僅か0.3%に過ぎない。それでも大小200を超える滝から構成され滝部分の幅は世界一を誇っているのだから、南米は広い。
滝はブラジル・アルゼンチン両国にありそれぞれ見どころはあるが、中でも一番迫力があるのはアルゼンチン側にある「悪魔の喉笛」だろう。
その名に相応しく、恐ろしいほどの轟音と水煙は一瞬足がすくんでしまうほどだ。
毎分30億リットル以上の水が流れ続けているから、滝の上部に設置された展望台に立つと、風向きによっては台風の中に身を晒しているかのように水飛沫を浴びることになる。
悪魔の喉笛は川の始点だ。大地から生まれた水が喉笛から落ち川となって流れていく。空中からの写真を見ると、大地が大きく裂け途方もない量の水がその裂けた割れ目へと吸い込まれていくように見える。圧倒的な水の量、広がる大地や豊かな木々。どれをとっても自然の力強さを肌で感じる。
力強いのは自然だけではない。激しく流れる滝の裏側の岩肌に巣を作るイワツバメという鳥がいる。巣へ帰るときは流れ落ちる水にできる僅かな隙間を狙い滝をくぐる。タイミングを間違えれば水の圧力で体が下に押されてしまう。天敵が来ないからという理由でこんなところに巣を作るらしいが、巣へ帰るのも命がけだ。
動物もまた力強く生きている。
最初に訪れたときはブラジル側の園内にあるホテル「カタラタス」に泊まった。宿泊者は閉園後に行われるナイトツアーに参加できる。満月で快晴の夜に行われるこのツアーの目的はムーンボー(ナイトレインボー)を見ることだ。月の光で作られる淡く白い虹のことなのだがとても神秘的だ。
漆黒の闇と轟音で囲まれた景色の中を、恐怖と闘いながら懐中電灯の灯りを頼りに歩く。展望台につき目が慣れて漆黒が濃紺に変わるころ、昼間見た滝の輪郭が見えた。更に眼を凝らすと満月の照らす仄かな明かりの中に、白く淡い半円状の虹が浮かび上がる。
空気の流れのせいか水飛沫の量なのか、気まぐれに途切れたり消えかけたりするが確かに虹が出ていた。
この旅では目の当たりにする景色にただ圧倒された。人類は地球の主役ではなく、宇宙に浮かぶ地球という名の雄大な大地を借りているだけなのだと強く実感した旅だった。
(2013年、2015年渡航)
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