晴眼の魔人
沼田フミタケ
存在証明
存在証明 0
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三日前の水曜日。
僕が学校から家に帰るときに、白いワンピースを着た少女が
小学校低学年くらいだろうか。黒く長い綺麗な髪と、雪のように白い肌が特徴的な、かわいらしい女の子だった。
季節外れの装いでも、寒そうに感じてなさそうなところや、血色が悪く、生気の感じないその姿から、僕は最初、幽霊だと思っていた。
しかし、彼女の身体は透けておらず、ワンピースのスカートからは素足が見える。
彼女は『生きている』と、僕の脳は処理した。
しかし、いや、彼女が生きている人間だからこそ、この少女は異常だと思った。
今は一月の後半。気温はとても低いし、時々雪を含んだ冷たい風が吹くような季節だ。
そんな中、彼女は素足で、下着もつけずワンピース一枚でここにずっと佇んでいたのだろうか。
「……大丈夫?」
半ば無意識に、僕は少女に話しかけていた。
明らかな異常なのだが、それでも、僕は少女を放っておけなかったらしい。
これはまた師匠に怒られるなと思いながら、一切反応を示さなかった少女にもういちど話しかける。
「大丈夫? こんな格好していたら寒いよ?」
またも、少女からの反応はない。
しかし、こんな格好をしていて寒くない、なんてことはないと思うので、僕は着ていた上着を脱いで、少女に羽織らせた。
すると、それが功を奏したのか、少女は、ずっと見ていた公園跡に、ぽつねんとある、新しそうな木の小屋にむかって、指をさした。
僕はその指に導かれ、視線を少女から小屋へ移す。
「あそこに何かあるの? ――!」
気配も、予兆もなかった。
小屋から少女に視線を戻した時、そこに少女の姿はなく、少女がいた場所には、よく見慣れた僕の上着が落ちているだけだった。
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