第301話会話 魔法属性の話その③・相性

「始まりました、第二回『教えて! 勇者さん』のお時間です。ぱちぱち~」

「…………乗っ取り?」

「違います。勇者でありながらあまり知識のないきみにぼくが勝手に情報を教えようと思いまして。得た知識を誰かに教えることでコーナー名が保たれるという仕組みです」

「仕組みとか言っちゃってますけど」

「記念すべき第二回の議題はこちら! 属性相性の話~。いえ~い」

「あいひょう? もぐもぐ」

「興味なさそうな顔。だるそうな声。頬張るはクッキー。耳だけこちらにくださいね」

「一応ちゃんとたぶん聞きますよ」

「基本属性をおさらいしましょう。火、水、風、光、闇の五つですね。魔法を使うすべての存在はこのどれかの属性を持ち、そこから派生した魔法を使っています」

「みたいですね」

「他人事のように……。こほん、属性には相性があり、たとえば光と闇はお互いに相性抜群かつ相性最悪です」

「私と魔王さんは相性最悪ってことですね。覚えました」

「切り取るとこぉ……。ええと、光は闇に強く、光は闇に弱いということです。火、水、風はこれと異なり、三すくみの法則が成り立ちます。火は何に強いと思いますか?」

「火は何にでも強いですよ。火をなめるな」

「そ、そうですけど、相性の場合の話ですよ。火は風に強いです」

「理解ができない……。意味がわからない……」

「火属性を実際の炎だと思うからではないでしょうか? 言い換えましょう。魔力の性質、と言えばわかりますか?」

「うーん、多少は?」

「すべての魔力は同一のものがありませんが、属する性質は同じものがあります。勇者さんの場合、闇属性の魔力を有していますが、魔力自体はきみだけのものってことですね」

「……なーーーる、ほど?」

「なんとなくでいいですよ」

「なんとなくでいいんだ」

「ここまで属性相性についてお話しいたしましたが、ひとつ注意点があります」

「なんれふか? もぐもぐ」

「属性相性の有利不利は魔力量や固有魔法、使い手の素質にかなりかなりかなりかなり左右されます。まじでかなり左右されます」

「つまり、常軌を逸した魔力量があれば、すべてを無視して圧勝できると?」

「そうなります」

「属性相性の意味……」

「星の数以上にある固有魔法の中でも強い弱いはありますからね。たとえば幻覚魔法」

「名前がもうめんどくさそう」

「幻覚魔法自体がすでに強力ですが、中身によってまじで厄介になります。相手に幻覚を見せるだけでなく、術者が創り出した幻覚の世界に連れて行くなんてことも可能です」

「うわぁ、絶対やだ」

「強い分、制約もありますけどね。他に、性質変換魔法」

「あまりピンときませんけど」

「これはかなり特殊な魔法でして、魔法や魔力の性質そのものを変える力があります」

「光属性を闇属性に……みたいな?」

「そのとーり。強いを弱いに変えることすら可能です。これまじで強いですよ」

「魔王さんに言われても説得力ないです」

「ここで、例の魔女っ子を思い出しましょう。彼女は少々ワケあって魔力量や素質が異常です。まじで厄介です。できれば会いたくないです」

「個人の意見が入り込んでいますよ」

「彼女は風属性ですが、秘めるあれこれによって属性関係なしに無双できるくらいです」

「アナスタシア、そんなに強いんですか」

「くれぐれも敵にしないように」

「それ、私が魔王さんに言うセリフですよ」

「勇者さんの味方が強いのはよいことです。強すぎるのは問題ですけど」

「あ、はーい」

「学びの精神! どうぞ勇者さん」

「勇者より魔法使いや魔女の方が強くないですか?」

「気づきました?」

「これが世界の真実か」

「ま、待ってください。勇者には勇者だけの力がありますから! セーフ!」

「魔法を使える勇者最強説。あれ? 勇者になると神様から魔法を授かりますよね」

「後天的な魔法ですから制限が多いですね。勇者さんもご存知だと思いますが、発動に準備がかかったり扱いが難しかったりなど」

「……生まれつき魔力を持った人間だけを勇者にすれば解決じゃないですか」

「そんなことを神様が考えていると思いますか?」

「思わないです」

「そういうことです。これが世界の真実です」

「今日は世界の真実を暴く回だったんですか?」

「『教えて! 勇者さん』のコーナーですよ。ということで、次は魔法陣についてです」

「えっ、まだ続くの……?」

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