『新・学校生活』(2)

「おはよう、グリアくん!」

「よぉ」

「おはようございます、グリアさん…」

「ああ、オハヨウ」


どうも、校門を過ぎてからグリアに挨拶をする生徒が多い。

しかも、女生徒。

その挨拶に素っ気なく短い返事を返していくグリアだったが、それでも女生徒達は頬を赤らめたり、恥ずかしそうにして足早に通り過ぎる。

どうやら、グリアはモテるらしい。


「驚いたわ…。これもあなたの力なの?」


本気で目を丸くする亜矢だったが、グリアは平然としている。


「何がだよ?」

「いいえ、別に」


確かに、グリアは黙ってさえいれば普通にカッコイイだろうが。

この死神の、人の不幸を楽しむような言動と、その時に見せる凶悪さを浮かべた笑みを皆は知らない。

その時、ドンッと亜矢の背中が軽く叩かれた。

亜矢がハっと顔を向けると、そこには見慣れた友達の姿があった。


「オーッス、亜矢!グリア!」


明るい笑顔を向ける、クラスメイトの白川加也。

だが、亜矢は逆に白川の言葉を聞いて、僅かに暗い表情になる。


(やっぱり、白川の記憶も操作されちゃってるのね)


無邪気な白川の笑顔が、逆に悲しい。


「最近仲いいよな、お前ら。じゃーな、先に教室行ってるぜ!」


そう言って、校舎に向かって走り出す白川。


「ちょ、ちょっと待ってよ白川!?」


引き止める亜矢の声はもう届かず。


「ちょっと、死神っ!」


キっと、隣の死神を睨み付ける。


「なんだよ?」

「あたしとあんたって、どういう関係の設定になってる訳!?」

「ただのクラスメイトだぜ。今の所はな」


ここまでくれば、グリアと同じクラスであるという事は読めていたし、半ば諦め気味に亜矢は思った。

そして、『今の所』って………。亜矢は嫌な予感がした。


「それとも、なんだ?もっと深い関係をお望みか?」


ニヤリとするグリアに、亜矢は必死になって否定する。


「いやっ!やめて、冗談じゃないわ!」


冗談では済みそうにない。

この死神は、不思議な力を使って何でも自分の思い通りにしてしまうからだ。


「しねえよ。今のままでも楽しめるしな。それに、オレの力でも出来ねえ事があるって言っただろ?」


その言葉に深い意味があるという事を、この時の亜矢はまだ気付かない。


(それに…自力で手に入れた方が面白えってモンだろ?)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る