First 短編集

ねむねむ

言葉遊び

なくしもの

ない。

どこを探しても、ない。

先日は財布を、一昨日は家の鍵を、先週は自転車をなくした。

でも、今日はもっともっと大切なものをなくしてしまった。

またどこかに置き忘れてしまったのだろうか。

最後にいつ持っていたかを必死に思い出そうとする。

だが失くし物は、それが思い出せない。

故に失くし物と呼ぶのである。

どうしよう。思い出せない。見つからない。

とても、大切なものだったはずのに。

泣きそうになりながら探し続けるが、どうしても見つからない。

途方に暮れていると、不思議そうに私を見つめる彼と目が合った。

「また何か失くしたの?」

視界がぼやける。

どうして、どこで、失くしてしまったのだろう。

「何を失くしたの?」

ぽろりと、涙がこぼれ落ちた。


まるでそれは、私の手の平からこぼれ落ちてしまった―――――










「あなたへの、恋心。」

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