EP63【パレード開催! カエデの心境】

 昨夜は帝都エサバ内を何か所も回っていた為、宮殿内の私へ割り当てられた客室に戻ったは、日が昇る少し前になっての事であった。


 今更だけど、こんなに世遊びばかりの娘に育ってしまった私を見たら、前世の両親は悲しんでしまわないだろうか?


 今世の両親からどう思われても気にしないが、前世の両親を失望させる様な生き方はしたくないのだ。


 しかし、夜遊びと言っても自分磨きや、野望を叶える為の暗躍活動なので、何も後ろめたい事はしていない。


 睡眠不足も、いつもの成長ホルモン強制分泌や疲労物質の強制排出によってチャラに出来るから問題はない。


 しかし、最近気になるのは、街で見かける私と同年代の女の子達との発育状態の違いについてだ。


 身長や、、、、、他は断言しないが、とにかく私は、やはり同年代の女の子達に比べると少し小さいのだ。


 ハッキリ記録している訳では無いから確かな事は言えないが、何となく8歳ぐらいの時からほとんど変化していないように感じる。


 筋トレのお陰で、ムキムキに変化はしているのだけどね。


 まぁ、全ては幻影魔法でどうにでも出来るから、気にする必要はない。


 さて、気を取り直して、本日はとても大切なイベント事がある。


 私のご主人様の聖人就任祝賀パレードの開催日なのだ。


 午前中のほとんどを用いて、屋根の付いていない、2階建ての建物ぐらい大きい馬車へ乗り、聖人となったご主人様の姿を民衆へお披露目する日なのだ。


 このシチュエーションはひょっとすると、前世の超大国Aで昔に行われた、オープンカーで大統領が市内を巡った、あの有名なパレードに似ている気がする。


 確かあのパレードは何やら凄いことが起きていた気がしたが、今となっては調べようが無い事だ。


 こういう時はいつも前世の検索エンジン、GやYが無い事に不便性を感じてしまうね。


 この世界では調べ物をする際に、大きな町の貴族専用図書館を使用するしか手が無い。


 しかし当然ながら、前世の世界の情報など確認出来るはずもない。


 確認出来ないのだから、その時に起こった凄い事に対する備えなど出来ない。


 まぁ、何が起こっても、私の魔力感知ですぐ状況把握可能だし、遠距離スナイパーカトレアちゃんに、動体視力の化け物ライルさんが一緒にいる。


 何も問題はない。


 ただし、今のところ毒殺に対する防衛手段が無いため、ご主人様の口にするものは全て事前に毒見係が入らないといけない訳だ。


 以前、皇帝陛下の御前で試合をした際、私とカトレアちゃんが腹下し薬を盛られてしまった事がある。


 それ以来、私は薬物に対するお勉強も進めてはいるが、まだ完璧とは言えないのだ。


 この状態で毒物混入事件が起これば、たちまち私達は全滅してしまうだろう。


 誰にも知られてはいけない秘密。


 まさにトップシークレットだ!


 誰か薬学に秀でた人が仲間になってくれれば、私は不得意分野のお勉強をこれ以上しなくて済むのにね。


 どこかに薬学を極めし、野良奴隷はいないものかね~?


 いればその人材は、なんとしても私たちの仲間に引き入れたい。


 そう!


 本日加入予定となっている、私達のお友達の次に、5人目の聖騎士としてね!


 早朝、私はほとんど休息をとらずに、ご主人様とカトレアちゃん、ライルさんと共に、帝都エサバの入り口となる大きな門の前まで普通の馬車により送られていた。


 ここでパレード用の、どでかい馬車へ乗り込み、帝都エサバ内の大通りをいくつも通過して行く事になる。


 パレード中はご主人様を始め、私達聖騎士3人組まで民衆やご来賓の貴族の方々へ手を振り、笑顔を振りまく必要がある。


 とても精神的に疲れそうだ。


 本日は息子の晴れ舞台の為、はるばるハーネス侯爵領よりご主人様のご両親もパレードを見に来ているようだ。


 まだ親子の対面はしていないが、パレードが終了し、皇帝陛下の御前にて挨拶をした後、親子水入らずの時間が設けられている。


 ご主人様はパレードよりも、そちらの方を楽しみにしているご様子なのがよく分かる。


 いくら聖人として民衆から持てはやされていても、所詮はまだ13才。


 人によっては反抗期等もあるかもしれないが、ご主人様はまだまだ両親へ甘えたいお年頃なのであろう。


 私だって前世でアラサー女子になってからも、両親に甘えたいお年頃であった為、ご主人様の気持ちはよく分かる。


 その時は絶対に邪魔が入らないように、私達聖騎士3人組と数人の使用人にて部屋の外を固めてあげるとしよう。


 これは私達による善意であるから、特にご褒美には及ばないよ。


 くれると言うなら貰うけどね。


 さて、定刻となった。


 パレード開幕の花火や、空を埋め尽くす真っ白い鳩の演出、盛大な楽器の演奏と共に、聖人就任祝賀パレードが開催された。


 てか、花火があるという事は、あるんだね火薬。


 戦場では鉄砲や大砲、爆弾等の兵器を見た事ないが、この世界では火薬を兵器転用していないのかな?


 戦争ばかりしてるのに、頭が平和な人達だね。


 せっかくだから、ご主人様へ花火に使っている火薬は戦で使わないのか訊いてみた。


 ご主人様によると『大きな音がして馬が驚いてしまうし、花火を敵の近くで爆発させても少し火傷させたり、苔脅こけおどし程度しか効果が無い。 運んでいる途中で火事も起きやすいから戦向きでは無い。 せいぜいお祭りを盛り上げる花火や、鉱山の採掘を進める為の発破ぐらいしか使い道は無い』との回答をいただけた。


 確かにそう言われれば、その通りかもしれない。


 前世の戦争屋さん達はどうやって、火薬を上手に兵器転用していたのかな?


 今度色々試してみよう!


 試している段階で、私が爆死したら笑い話にもならないけどね。


 どうでも良い事を考えていたら、いつの間にかパレードは進んでいた。


 民衆より歓声が上げられ、それに応えるようにご主人様、カトレアちゃんやライルさんも手を振り笑顔を振り撒いている。


 あぁ〜、出遅れた。


 遅ればせながら私も他3人にならい作り笑い&手をフリフリしながら民衆へ応える。


 「きゃ〜、聖騎士カエデ様〜、可愛いー!!!」


 おっ!


 これは嬉しい黄色い声援だ。


 見ず知らずの町娘さん、ありがとう!


 私は声のする方へ元気に手を振り返し、今度は作りでは無い本当の笑顔を向けていた。


 何これ、結構楽しい!


 私は既にとても気持ち良くなっていた。


 「「「「カトレア様〜、可愛い〜!! こっち向いて〜!! きゃ〜!!!」」」」


 あれ?


 私への声援より大い、と言うか多くね?


 おかしいな気のせいかな?


 「「「きゃ〜、聖騎士ライル様〜! カッコいい〜!! ステキ〜!!!」」」


 さっきのカトレアちゃんの声援と比べるとこちらは少なく感じるが、私への声援より3倍大きい。


 あれれ?


 「「「「「聖人様、バンザ〜イ!!!」」」」」


 ご主人様への声援が1番大きく、多く感じる。


 こちらは野太い声の割合が多い気がする。


 あれれ〜のれ〜?


 私への声援、1番小さくね?


 ちらほら聞こえるが、他3人と比べると私への声援はどうしても小粒に感じてしまう。


 いや!


 考え方を改めよう!


 小粒でも私は人気者なのだ!


 他3人が異常に人気が高いだけだ!


 そうだ、気にしたら負けなのだ!


 それに私は、決してアイドルになりたい訳では無い。


 私はあくまでも聖騎士であり、ご主人様の奴隷ペットである。


 人気が他より低くても、全く気にする必要は無いのだ!


 私は色々と自分に言い聴かせながら、たまにある私への声援へ向けて全力で手を振り、満点の笑顔を返しているのであった。


 そんな時、遠くの方向から、パレードの花火とは雰囲気の違う爆発音が響いた。


 一瞬、皆んなビクッと身を怯ませたが、これもパレードの演出の一種だろうと思ったのだろう。


 すぐに皆んな、楽しいパレードの雰囲気へと意識を戻していくのであった。


 うんうん、始まったようだね。


 私が仕掛けた、とびっきりのサプライズ演出が、ね。

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