・あの頃を思い返す:デイサービスにて


 時を現代に戻して、ここはデイサービス。

 高見三姉妹と言われるが、実際の三姉妹ではないアッコ、ミエ子、セツのおばあさん3人、そして筆者のコーノが机を囲んでいる。

 コーノは夢うつつかのように、「ほぉ~」と声を漏らしていた。


アッコ:こんな話されてもおもんないやろ?

筆者:い、いえいえ、なんだかドラマでしか聞いたことのない言葉ばかりでビックリというか、大変そうだなって……奉公とかよく分からないですし。

アッコ:今で言うヘルパーさんやん。


筆者:いや、でもまだ年齢が……アッコさんその時14才の子供ですよね?

アッコ:人間50年の時代やからね。仕事するんも結婚するんも早かったんよ。


筆者:そういうものなんですね。しかし、勤め先の奥さんがいきなり亡くなるだなんて不幸ですよね。そんなに急な話だったんですか?

アッコ:まぁ、もともと、先がよろしないから言う話で私が奉公に雇われたからね。

ミエ子:そうそう、あの年って流行り病が多かったから、村の外のモンをよこしてもらうんが常やったんよ。

セツ:今やったら簡単に治る病気やけんどな。昔はコロコロ倒れよったで。

ミエ子:ほんで、たしかあれ、冬の前やったんかな?確か。

アッコ:そうそう、雪もチラチラ降っとったよ。季節の変わり目が恐いな。

セツ:なんにせよ、ようけ人の亡くなる年やったんは覚えとるわ~。

ミエ子:せやから、なんやみんな葬儀に手慣れとってね、葬式が楽やったんよ。


筆者:あ、あの、それで、そこからアッコさんとトシさんとの恋の話はどうなったんですか?なんだかお葬式の話になりそうでしたけど……

セツ:そうやったそうやった。まあ、葬式もあってアッコさんの働き手が必要以上に増えて、んで、そのおかげでチョメチョメなんよな?

アッコ:そうやったかいな?

ミエ子:ここまでの事、よぉ覚えておいて、なんでボケるんよ。

アッコ:ワタシ介護度3やし。(介護が必要な度合い。1が軽く、5が重い)

セツ:先生(主治医)のええ加減な診断やからな。それより、ほれ、続き続き。アタシらも知らんトシ兄との恋路の話を聞かせてんか。

アッコ:せやから、そんなんちゃうてぇ~。流れでそうなっただけで……



 アッコさんは顔を真っ赤にして小さくブツブツとぼやく。そして息をつくと、大正時代の恋話の続きを皆に聞かせはじめた。


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