#042 : スクイズ

—— 大魔王サクラに…親友のサクラに会いに行こう。


そう決意した私は、身分証明書を作るために冒険者ギルドで冒険者登録をしに来ました。

おっソロさんが言うには、いろいろなギルドがあるけど、旅をするなら冒険者ギルドさね!まぁなんとかなるさね!行っといで!あはは!との事です。


うぅ…不安だよぉ…。



「失礼しまーす…うわぁ…完全に場違いだな…」

冒険者ギルドに着いた私は、おそるおそるギルドの中に入りました。

ギルドは強そうな人達がたくさん居ました。


受付で貰った登録用紙に必要事項を記入していきます。


(勇者って書くと大騒ぎになっちゃうから、こ、こんな感じかな!?)


 【カエデ / 人間 : 巨乳 / レベル1 / 備考:肩が凝るのが悩みです。】


「職業が…巨にゅ………へぇ…肩が……ふーん?」

受付のお姉さんが用紙を見てから私の容姿を見て、つぶやいたあとに書き足しました。


 【カエデ / 人間 : 巨乳 / レベル1 / 備考:肩が凝るのが悩みです。/ 受付注 : ナチュラルに人をイラッとさせるタイプ】


「はい!ではこれで登録は完了です!」

受付のお姉さんは書類を棚に叩きつけていました。


「え…あの…ちょっと…?今、何か良からぬ事を書き足してませんでしたか…?」

私は受付のお姉さんに問いかけました。


「はい!では次の人ー?オラァッ!早く来いよッ!…あ!巨乳の貴女はそこのイスに座ってお待ちくださいね。」

「…は、はい。」

受付のお姉さん機嫌がとても悪くなっていたので、おとなしく言う事を聞きました。



その後、ギルドマスターさんとの実技試験を行うことになりました。


「ふむふむ…れ、レベル1の人間…巨にゅ……な、何をしにここに来たんだ?」

ギルドマスターさんが私の登録用紙を見て驚いてました。


「えと…旅をするので、身分を証明するものが欲しくて…」

私はビクビクしながら答えました。


「レベル1の巨にゅ……が旅に出たらすぐにモンスターの餌食になるぞ?」

ギルドマスターさんは帰ろうとしているように見えました。


「でも!私は!どうしても…ラウワに行かなければならないのです…。」

私は真剣に訴えかけました。


「うーん…まぁ…うまいことラウワに行く冒険者を捕まえることだな…で、お前は何が出来るんだ?荷物持ちか?」

ギルドマスターさんが険しい顔で言いました。


あれ?私は…旅で何が出来るんだろう?

私は途端に不安になりました。

あれ…どうしよう…何も無い…私は空っぽ…空っぽなんだ…空っぽの巨乳なんだ…。


すると、ポケットから声が聞こえました。

『カエデ!俺たちを忘れてないか?へへ!ほら!そこのおっさんに言ってやれよ!』

…ふわぁ!ウィルソン835世!!

あぁ!そうだった!私には頼もしい仲間たちが居たんだった!


私の目は光を取り戻しました。そして!ギルドマスターさんに言いました!

「私は…私はッ!良い形の石を投げられます!」


私はポケットからウィルソン835世を出して見せました。


「は?」

ギルドマスターさんは驚いて言いました。


「見てもらった方が早いかな…うんと…そうですね…」

私は辺りを見回しました。


「あ!あそこのマトに石を当てれます!」

私は遠くのマトを指差して言いました。


「え?あそこまで200メートルはあるぞ?」

ギルドマスターさんはマトを二度見しながら言いました。


「大丈夫です!…いくよ!ウィルソン835世!」

私はマトを見つめ、首を縦にふってから振りかぶり、腰を目一杯までひねり、振り上げた足を真後ろに向けました。


「…と!トルネード投法!?…え?投げるの?ホントなの?マジで?」

慌てるギルドマスターさんがトルネードなんちゃらとか、よく分からない事を言ってます。


「のもッ!」

私はそう叫びながらウィルソンを投げました。


ビュッ!!!

ギュイーーーーーン!!!

ズガンッ!!!!!

…パラパラパラ……

200メートル先のマトは砕け散りました。


「ひでおッ!?」

ビックリしたギルドマスターさんも叫びました。


「やったー♪ ありがとね!ウィルソン835世!迷わず成仏してね!」

私は手を叩いてピョンピョン跳ねました。


ウィルソン835世の声と同時に天の声が聞こえました。

『へへ…ありがとうな…カエデ…先にヴァルハラで待ってるぜ…』

(カエデのスキル : 【ウィルソンを投げつける】のレベルが835に上がりました。)


「…え?あ、あれ?…あのマトは魔法試験用でかなり頑丈に作ってあるんだけど…?…石で粉砕?…ちょっと色々追いついてこないんだけど、とりあえずさ?野球やった方が良くない?ご時世的にもさ!」

ギルドマスターさんは混乱しているようです。


「あの…試験はこれで終わりで良いですか?」


「え?あーうん…いや、ちょっとこのナイフを今度はあっちのマトに投げてみてくれる?」


私はギルドマスターさんからナイフを受け取りました。

「はい…いきます!」


「…チクショイ!…ワクワクしてる俺がいるぜ!」

ギルドマスターさんが固唾を飲み見守っています。


「えいッ!」

私はナイフを投げました。


ぴゅー……ストン……

ナイフは5メートルほど先で落下しました。


「…ん…あれ?なんだ?…全然ダメだな…」

首を傾げるギルドマスターさん。


「あの…私のスキルは【ウィルソンを投げつける】なので…ウィルソン限定なんだと思います…」


「えぇ…?」

さらに首を傾げるギルドマスターさん。


その時!私に閃きが!

「あッ!そッ!そうか!ち、ちょっと待ってくださいね!」

私はさっき投げたナイフを拾いました。


そしてナイフに言いました。

「よろしくね?ウィルソン836世…。」


『London bridge is broken down ♪ broken down ♪ broken down ♪ London bridge is broken down ♪ My fair lady ♪ カエデ様。ご機嫌よう。紅茶はいかがですか?』

ジャック・ザ・ウィルソン836世の声が聞こえました。


目を丸くするギルドマスターさん。

「え?まさかそんな緩い条件でイケるの?」


「行くよ?ジャック・ザ・ウィルソン836世!」

私はセットポジションで肩を揺さぶり始めました。


「…ゆ!ゆりかご投法!?」

ギルドマスターさんがまたよく分からない事を言ってます。


「オータニッ!」

私はそう叫びながらナイフを投げました。


シュッ!!!

ギュイーーーーーン!!!

ズガンッ!!!!!

…パラパラパラ……


「ショーヘイッ!?」

ギルドマスターさんも叫びました。


「ぉぉ…」

私は驚き、小声を漏らしました。


そしてまた、ジャック・ザ・ウィルソン836世の声と同時に天の声が聞こえました。

『My fair lady…カエデ様。…私も一足先にヴァルハラでお待ちしております。』

(カエデのスキル : 【ウィルソンを投げつける】のレベルが836に上がりました。)



「え?マトもナイフも粉々に…やば!カエデさん?だったかな!凄いよ!このスキルは世界を救えるよ!」

ギルドマスターさんが私の両手を掴み、ブンブンしてきました。

これは令和の社会では完全にセクハラです。


「ちょ!な!なんなんですか!いきなり!…すくう…?…す、スクール水着でスクイズをしろ!?…け!ケダモノーーッ!?…い、今までで一番理解出来ない要求よーッ!!!…あれ…ちょっと待って…?…[スク水]で[スクイズ]って韻踏んでる!?…ひぃ…ち、近寄らないで!…助けて………助けてよーッ!サクラーーーーーァッ!!!」


私は胸をおさえながら叫びました。


「…。」


ゴチンッ!!!!!

「ぎゃふん!」


—— その後、私はゲンコツをくらいました。(一応、無事に冒険者カード=身分証明書は発行されました。)




(つづけますか…これ?) ※不安になったので確認

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