ライアル商会の航行記録

えでぃ

第1話

『出撃準備』




大きな警告音とスピーカーから聞こえる怒鳴り声で飛び起きた。




「おい、出撃だとよ」




3段ベットの下に眠る同僚に蹴りを入れて起こし、自分の機体が収められているB2ハンガーへと向かう。




「ちょっと待ってくださいよ」




先ほどたたき起こした同僚が追ってきて自機の上部に配置されている機体に乗り込んだのを確認して、整備兵と機体のチェックをしていく。




「先日の戦闘で左ウイングのジェネレーターが出力不良を起こしていたので交換していますが、微調整が終わっていません。バリアーが不安定になっている可能性があります」




「それは当たらなければいいってことだな」




「そういうことです」




整備兵と笑いながら最終確認を終わらせる。




「燃料の注入も終わりました」




「ありがとう」




整備兵が離れたのを確認した後、キャノピーを閉めて出撃のタイミングを待つ。




『敵、巡洋艦クラス3隻、戦闘機クラス60機の発艦を確認。各隊発艦してください』




「こちらバレット隊ライアル。敵さんは誰なのかわかるか?」




発艦準備をしながらオペレーターの女性に声をかける。




『U328共同公社の傭兵部隊と思われます』




「毎度のことながらご苦労なことで。と、なると上はアーセナル社かな?」




『負けたらわかることですが、勝ってくださいね』




「はいはい。頑張りますよ」




通信を終えるとすぐさま発艦して戦場へと向かった。


















狭いコックピットの中には機器に赤い点滅の光が反射して警告音と機械的な声が鳴り響く。








「Warning. Lock on. Warning. Lock on.」








「うるせぇ。わかってんだよ、このぽんこつAIが」








操縦桿を左手で握りしめ右手で多数あるスイッチを切りかえていた男が悪態を付きながらとあるスイッチを殴りつけると、警告音と機械音がなくなった。








一瞬静かになったコックピットの内部にはしばらくの間スイッチの切り替えの音と、何かが電気に触れたような音だけしか聞こえなかった。








コックピットの外は岩礁地帯となっており無数の岩石が漂っているが、時折いきなり光ったかと思ったら砕け散りほかの岩石に破片が当たり広がった隙間を縫うようにこの宇宙船が飛行しているようだった。




すでに味方機の大半は撃墜されてしまい、複数に囲まれる前に岩礁地帯に逃げ込もうとしたのだが、後ろを取られてしまい、逃げ惑うしかできない状況となっている。








宇宙船を先へ先へと進めていると岩礁地帯を突破した。




岩礁地帯を突破して見えてきたのは大きな惑星で、白と茶色のマーブル模様に宇宙からいくつもの柱が刺さっていた。








「あ、しまった」








男が、慌てて後ろを振り向き操縦桿を倒すと、強い衝撃が襲ってきた。




外を映すモニターには攻撃を受けた衝撃で機体が回転しているためか視界が回っていた。






「ぽんこつIAめ。なんで教えないんだ」








先ほど自分で音を消したのを忘れて怒鳴りつけ、殴りつけたスイッチをもう一度触る。








「Warning. Left wing左翼 dropout脱落. Warning. Left wing dropout.」








「嘘だろ?」








計器を見てみると正常なら緑色に光る左側の翼のマークが黒くなっておりセンサーが感知できない状態となっていた。




慌てて、右側のジェネレーターの活動を制限して、機体の体制を立て直すが片方の翼を失ったのが悪いのか、重力圏に近づきすぎたのが悪いのか、ゆっくりと惑星にひかれ始めていた。




そして現状この機体を使いこの惑星の重力から片方のエンジンのみで逃げるのは不可能とであり、このまま惑星に落ち圧死するのを待つか、追っている敵に嬲り殺されるかの2択しかない状態だった。








「救難信号を。だめだこの状況で救難信号を出しても無視される」








現在この惑星のメタンガス採掘権をめぐり戦闘になっており味方も敵も到底圧死する前に救出部隊を出せるほどの余裕はなかった。








『よお、逃げるだけしかない能無しもこれまでだな?助けてやろうか?』








追ってきていた宇宙船が横付けしてきており、短波によるオープンチャンネルを使いから連絡が入った。








「っけ、おめぇに助けられるくらいなら。親父のケツにキスする方がましだ」








『ほうほう、そうかよ。それじゃ残り少ない命楽しめや』








そう言うと回線を切り、宇宙船が離れていった。








その間もスピーカーから聞こえてくる音を無言でスイッチを切ることで消し、操縦桿で角度を調整し始めた。








「もうちょい。もうちょい。よし」








角度の調整が終わり、いくつかのスイッチを入れていく。




すると衝撃が襲い、計器の翼の部分が黒くなった。








「翼のパージを確認」








翼を切り離したことにより、角度が少しずれたのか、調整を行う。




調整が終わると、次の衝撃が襲ってくる。




計器には、後部の尾翼の部分が黒くなっていた。








「尾翼パージ確認」








外を映すモニターは少しずつ赤く燃え上がっている。




それにも動じず、計器の操作を続ける。








「スタブ翼展開。エンジンに燃料注入」








計器をみると尾翼があった場所にスタブ翼とエンジンのマークが追加され緑色になっている。








「エンジン点火。このポンコツAI何とか言いやがれ」








またもや自分で消したことを棚に上げ、悪態を付きながらスイッチをたたく。








「All green. Ignition」








スピーカーから機械音が流れると同時に体が椅子に押し付けられるような感覚と大きな揺れが襲ってきた。
















意識が持っていかれそうになりながら岩礁地帯をよけて翼を失くした機体が飛んでいく。














何とか首を動かし外の光景を見るとそこには母艦が爆発する瞬間が映し出されていた。








加速が止まり、ロケット部分を分離した後、救難信号を出してコックピットの中で体を丸め少しでも長く生きるために動くことをやめたが、どんどん機内の温度が下がっていく。






パイロットスーツについている温度調整用の電力はまだ問題ないのだが、機体の方の電力が徐々なくなり、最後には救難信号と赤い光を点滅させるだけの電力しか残っていない。


この電力も、残り5時間しか持たないためその間に救助させるのを祈りながら待つことしかできない。




パイロットスーツに搭載された電力も徐々に失われていくことに恐怖を覚え酸素循環機構と水循環機構のみに電力を回して温度調整に回していた電力をとめた。






徐々に目減りしていく残りの生存期間に酸素濃度が薄くなって遠のく意識の中強い光を見た気がした。










ーーTIPSーー




Hー300k(スーパーGO)




全長3mの機体胴体はロケットエンジンを積んでおり、単独での惑星離脱も可能(理論上)


通常時は翼の形をしたジェネレータで推進力をつくり、旋回時は両翼の出力を変動させることで可能とさせている。


重力圏での飛行も可能(理論上)




生産中止した後に、電磁バリアーを機体にまとわせる技術が戦闘機に搭載できるほどにコンパクトになるが、型落ちであるが人気な機体のために無理やり乗せるため事故が多く、メーカーが急遽対応部品を生産。




生産中止100年にメーカーが最新技術を用いて生産を再開。


安価なことと整備できる者が多いため生産が続けられている。

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