第4話 君を想う

やった!今日は好きな人と話せた!

しかもたくさん話せたし、その子のきれいな絵だって見ることができた!

僕の忘れ物がこんなことを呼ぶなんて、忘れ物をした僕、ナイス!

帰り道の道中だから今は郁乃さんはいない。

ホントはもっと郁乃さんと一緒にいたかったな。


…告白して付き合ったらずっと隣に居れるのかな?


いやいやいや、告白なんて恥ずかしいよ…。

でも、もし僕と郁乃さんがいま両思いだったら…?

ううん、それは多分ありえない。

視線を感じて郁乃さんの方を見るとそっぽを向かれてしまう。

僕…、嫌われてるのかな…。


いやいや、こんなことをぐだぐだ考えていても埒があかない。

一ヶ月後に当たって砕けようかな。

うん、それなら多分踏ん切りがつく。

よし、そうしよう。


〜一ヶ月後〜


うー。今日を迎えてしまった。

でも過去の僕が決めたことだ。ちゃんとやらなくちゃ。

でも…。振られたらどうしよう…。

当たって砕けるって言っても僕の心が持たないよ…。

頑張るしかないかぁ。



ガラガラッ


「おはようございまーす」

「よう、聖志。宿題やってきたか?」

「やってきたに決まってるじゃん。写させてやるから。」

「おう、よくわかってんじゃん。あざす!」

「だから成績上がんないんだぞ。今度は自分でやれよ〜。」

「へいへ〜い」


こいつは親友の夏生かい

いつも僕の宿題をうつしてくるけど、根はいいやつ。

僕の不安だった気持ちも、夏生のお陰で少し晴れた。


教室を見渡す。

あ、郁乃さんはもう来てる。郁乃さんの親友の咲綾さんはまだ来ていないから郁乃さんはまだ1人だ。今がチャンス!


「あ、あのっ、郁乃さん、おはよ」

「あ、聖志くん」

「今日、放課後って空いてるかな?」

「空いてるよ」

「あ、じゃあ体育館裏に来てくれるかな?話したいことがあって。」

「あ、うん。体育館裏で待ってます。」

「ありがと。」


よっしゃ。心のなかでガッツポーズ。

あとは返事だけだ。


〜放課後〜

タッタッタッ。体育館裏に僕の足音がこだまする。

ここを曲がれば郁乃さんがいる。

振られることも覚悟して道を曲がった。


「あ、聖志くん。」

「郁乃さん、もう来てたんだ。待たせてごめんね。」

「ううん、私も今来たとこだから。で、お話って…?」

「うん、あの……」


いけ、聖志。

緊張で胸がバクバクする。

郁乃さんの隣に相応しくはないかもしれない。

だけど、こんな僕の気持ちを伝えるんだ。

僕は本当に郁乃さんが好きだから。


「あ、あのっ、僕は郁乃さんのことが好きですっ!良ければ付き合ってください!」

「えっ………!」


郁乃さんは驚いた顔をして少し固まっていた。

どうしよう、振られちゃうかな…?


「わ、私も…。私も、聖志くんのことが好きですっ!」


………。

………………えええっ!


「い、今、なんて…?」

「だから、私も、聖志くんのことが好き…」

「えっ、まじ!?」

「こちらこそ、付き合ってください。」

「うん!」


まさか、両思いだったなんて。


12月の澄んだ空気の空の下。

小さな1つの恋が実った。

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