今から魔王と世界を救う
モリワカ
今から魔王と世界を救う
勇者と魔王は世界の命運をかける最終決戦の最中だった
「貴様、なかなかの力の持ち主だな さすが勇者を名乗るほどの力を持っている」
「そういうお前も俺相手になかなかじゃないか 魔王の名は伊達ではないということか」
二人はお互い剣を交えながら一進一退の攻防を続けていた
やがて、しびれを切らした魔王は勇者に提案を持ち掛ける
「勇者よ いつまでもこうしているわけにもいくまい そろそろ決着を付けようではないか」
「同感だ 俺もお前を倒し、温かい風呂に肩まで浸かりたいと思っていた頃だ」
二人は大きく距離をとり、今まさに決着を付けようとしていた
二人の間に静寂が訪れる
その瞬間だった
ビービービー!!
魔王城一帯に警報音が轟いた
勇者と魔王は構えていた剣を降ろす
「おい、なんだ 今の警報音は?」
「我にも分からん だが、この魔王城に何か異変が起きたのは間違いない」
魔王は一時休戦だ と言い放ち、他の部下たちに連絡を取る
「聞こえるか? 今の警報音は何だ?」
「魔王様! 我々にも何がなんだか 急に魔王城の城門が破られ、外から侵入者が――
お、おい 待て やめてくれ! ぎゃああああああああああああ!!!」
「おい! しっかりしろ! 何があったんだ? 返事をできる者はいないのか!?」
魔王は部下たちに声をかけ続けるが返事は誰一人として返ってこない
心配そうにする魔王を見て、勇者も事の重大さを感じた
そんな時、魔王城全体が突然揺れ始めた
「何があったのか分からないが、ここは俺も手を貸そう 魔王は俺の手で倒すと決めているからな それにこんな事で決着がついたら後味が悪すぎる」
「あ、ああ 助かる ではよろしく頼む」
勇者と魔王は魔王城で起きた異変について調査することにした
魔王城は所々が崩れており、見るも無残な姿になっていた
魔王の部下と思われる魔物たちが、そこら中で血を流し倒れている
「これは…… 一体何があったって言うんだ?」
「我にも理解不能だ しかし、我が集めた部下たちがこうも簡単にやられたことからして相当な力の持ち主なのだろう」
魔王は魔王城全体にサーチの魔法を使う
小さな反応が数十 その後ろに特大サイズの反応が一つあった
「我の部下たちが何者かに追われているようだ 急いで向かうぞ!」
「おうよっ!」
二人が急ぎ足で現場に向かうと、まさに何者かに襲われそうになっている魔王の部下がいた
その何者かは、全体が黒々としており四足歩行をしていた
「勇者よ あのようなものは見たことがあるか?」
「お前が見たことなければ俺にもないよ」
二人は未知の生き物に驚愕していた
だが、そんなことをしている間にも魔王の部下は殺され続けている
「行くぞっ! 一刻も早く、一人でも多く、我の部下たちを救ってくれ!」
「任せろ! 俺を誰だと思ってるんだ この世界を背負う勇者様だぞ?」
二人は未知の生き物につっこんでいく
未知の生き物に生半可な攻撃は通らず、それどころか反撃を受けてしまう
「ここは早めに本気を出すとするか 本当は魔王にとっておきたかったが、状況が状況だ!」
そう言うと勇者は剣を顔の前に構え、言葉を紡ぐ
『我求めるは、刃の閃き 純聖に器を与え、その鋭利な一撃を持って、立ちはだかる愚者を切り裂かん! 聖の一閃っ!!』
勇者が唱え終わると、勇者の持つ剣が輝きを放ち未知の生き物に向けて一閃した
その一閃は未知の生き物を真っ二つにするほどの威力で、さすがの魔王も思わずたじろぐ
「貴様、まだそんな隠し玉を持っていたとは 全く侮れんな」
「本当は最後まで隠し通すつもりだったんだが こんな感じで披露することになるとは思ってもいなかった」
勇者と魔王はがっちりと握手をした
そうして、再び戦いに戻ろうとすると魔王の部下の一人が声をかけてくる
「こ、この生き物は!? 伝承でしか聞いたことが無かったが、まさか本当に存在するとは!」
どうやら部下の一人はこの未知の生き物の事を知っているようだった
勇者は詳しい話を魔王の部下に訊ねる
「お前、この変な生き物の事知ってるのか?」
「ま、まあ 一応その分野に精通していますから この生き物は神の使い魔とされています 邪の精神を持つ者に襲い掛かるという特徴があり、それでおそらく我々を襲ってきたのでしょう」
神の使い魔 この世界では噂程度にしか思われていないモノ
勇者も魔王もこの目で確認するまで、存在を把握することができなかった
「こいつの処理はお前に任せる 何か分かれば報告するように」
「はっ! 魔王様もくれぐれもお気を付けください 御武運を」
「我がこいつに負けるわけなかろう 心配するな」
魔王に頭を撫でられた部下たちは、奥に下がっていった
「さて、これでようやく本題に入れるな」
「ああ、これで気兼ねなく戦えるというものだ」
勇者と魔王は再び剣を構える
今度は誰にも邪魔されないことを願いながら――
《警報! 警報! 冒険者の皆さまはいち早くギルドにお集まりください! 繰り返します……》
今度は勇者の街の方で警報音が鳴った
なかなか静かに戦わせてくれないものだ と二人は呆れ、ため息をつく
「俺も様子を見に行っていいか?」
「ああ 何なら我も一緒に行こうではないか」
魔王は自分に姿が見えなくなる魔法をかけ、勇者と共に街へ向かう
街では黒い人影のような物体が街の人達を襲っていた
その黒い人影に飲まれた人も黒い人影になってしまい、無限増殖している
「これは早々に手を付けないとまずいな」
「我も力を貸そう この世界を征服するのはこの我だ 他の何者にも邪魔はさせん」
そう言うと、魔王は人影に向かっていった
だが、人影は武器による攻撃をすり抜けてしまいどれも決定打にはかけてしまう
街の人達も戦ってはくれているが、どれもあまり戦力にはならない
「おお、勇者様だ! 皆のもの、勇者様がきてくれたぞ!」
「やったー!! 勇者様だあ!!」
街の人達が勇者に気づき、声援を送る
その勇者も声援に応えようとするが、いまいち活躍できない
「仕方ない ここは我も奥の手を出すとするか」
「お前も持っているのか!?」
「あれが我の本気だと思っていたのか? 全く、笑わせるな」
そう言い放った魔王は両手に魔力を溜め、詠唱を始めた
『この世の果ては地に埋まる 熱心な墓堀の献身 木霊する怨嗟の声 そして始まる狂気の宴 底の見えない地の闇は、白き腕(かいな)を生み出した 見よ、あれこそが汝の業 暗き底よりの使者である 底深き裂け目の誘い』
魔王がそう言い、あたり一面に溜めた魔力を放出する
その瞬間、人影だけが白い腕に足を捕まれ地面にズブズブと沈んでいく
「な、なかなかの魔法じゃないか」
「貴様の一閃も侮れんぞ?」
二人はお互いの秘儀を見せあい、互いの強さを実感した
「勇者様? その者は魔王ではありませんか?」
一人の青年が勇者に話しかける
魔王が人影を地面に沈めた魔法を使ったときに、姿を隠す魔法を解いてしまっていた
「どうして、勇者様は魔王と仲良くしているのですか!?」
「そうだそうだ! 魔王はこの世界を恐怖と絶望の世界に変えようとしているんだぞ!」
「そんな奴と仲良くするのはいくら勇者様とて見過ごせませぬ」
街のみんなが口々に喚き、魔王に石を投げ始める
勇者も何か反論をしようと口を開こうとするのを魔王は制止する
「良い これが正常な人間の反応だ 我は魔の王、人類の天敵なのだ 簡単に人間に受け入れられては困る」
「魔王……」
魔王は逃げるように街の人たちに背を向け、魔王城に戻ろうとしたその時だった
空から超高速で何かが降ってきたのだ
街にいた人達の視線が、一斉にその何かに集中する
「君たちィ なかなかやるねえ」
地面に大穴を開けた張本人が、軽い口調で言う
その女性は見た感じから悪者の雰囲気を醸し出していた
「どうしたのォ? せっかくこの私が直々に来てあげたっていうのに感謝の一つもないわけェ?」
「あ、あのー どちら様でしょうか?」
街の住民が空から降りてきた女性に話しかける
その瞬間、その住民の首が飛んだ
ゴロリと住民の首は勇者の足元まで転がり止まる
『きゃああああああああああああああ!!!』
住民がやられたのを見て、ようやく危機感を感じた住民たちは蜘蛛の子散らすように逃げる
「ねェー 私と一緒に遊びましょうよォ!」
勇者と魔王は女性に剣を向け、攻撃に備える
その女性はいきなり街の人達に攻撃をしてきた
勇者と魔王は間一髪のところで女性の攻撃を受け止める
「魔王、こいつはやばそうだ」
「ああ この我でも威圧感をビシビシと感じる 油断するでないぞ、勇者よ」
二人は顔を見合わせ、神経を研ぎ澄ませる
「あらァ? 今度は君たちが遊んでくれるのォ?」
「それよりそろそろ正体を現したらどうだ」
勇者が問いかけ、女性は思い出したかのように告げた
「申し遅れたわ 私は邪神よ この世界の邪の力を司るれっきとした神様ってわけ 分かったァ? 黒い人影は私の可愛い可愛いお人形ちゃんだったのに あっさり倒しちゃうなんて 邪神ちゃん困っちゃうワ」
自らを邪神と名乗った女性は、逃げ続けている住民の首を次々と飛ばしていく
これ以上被害が増えるのは困ると感じ、勇者が邪神に問いかける
「何が目的だ!?」
「目的ィ? そんなものないわよォ ただ神界で生活しているのも飽きたからちょっと下界に降りてきただけ これはただの遊び なのよォ?」
何のためらいもなく何の罪もない住民を傷つけながらいう姿に、二人は憤りを感じた
この時、勇者と魔王の目的は完全に一致した
『お前は(貴様は)俺が(我が)倒すっ!!』
二人は剣を構え、邪神に狙いを定める
そして互いに隠していた技を邪神に向けて放った
「聖の一閃っ!」
「底深き裂け目の誘い!」
魔王の魔法で邪心を足止めし、その隙に勇者が一撃を入れる
その計画のはずだった……
「甘いわねェ そんな攻撃が私に当たるとでもォ?」
邪神は捕まれている足を自ら切り離し、空へ飛ぶ
そして、勇者の一撃をあくびをしながら片手で止めた
「くっ…… 動かねえ!」
「ふわあァ…… 勇者ってそんなもんなのね つまんないの」
片手で勇者の剣を受けた邪神は勇者ごと地面に叩きつけた
「かはっ!!」
勇者の体は思い切り地面にめり込んだ
そのまま勇者はピクリとも動かなくなった
「勇者っ!」
魔王が慌てて勇者の元に駆け寄るが、かろうじて息をしている状態になっていた
このまま放っておいては命の危険すらある
「誰か! 勇者を治療できるものはいないのか!?」
魔王が街の人達に呼び掛けるが返事はない
それもそうだ いくら勇者のことを心配しているとはいえども相手は魔王
人間なら近寄ることすら嫌悪することだろう
「ちっ……」
魔王は自分の行いをひどく後悔する
こんなことになるならもっと人間と接しておくべきだった
魔王は勇者の前に防御壁を作り、邪神に再び向かう
「お仲間ちゃんがやられちゃったみたいだけど大丈夫なのォ? 見たところ誰からも信用されていないみたいだけど」
「あいつは仲間なんかじゃない 我の『戦友』 だ!」
そう言いながら魔王は邪神に飛びかかる
剣で攻撃するがどれも邪神に防がれてしまう
「くっ…… 勇者っ!」
その頃、一人の少女が勇者の元に向かっていた
少女もまた魔王に対し嫌悪感を抱いていた
でも、今の少女にはそんな気持ちは一切なかった
魔王にも人を思う心があることに気づいたのだ
勇者の事を思い、嫌われているのを承知で街の人たちに助けを求めている姿に少女は感動した
「勇者様 あなたのご友人があなたが帰ってくるのを待っていますよ」
少女はそう呟きながら、勇者に回復魔法をかける
少女のおかげで勇者の傷は癒えていく
全ての傷を癒し終えた少女は天を仰ぎ、言った
「これで、良かったんですよね お父様」
そう言うと、少女は涙を流しながら静かに消えた
その姿を見て、街の人達は皆一斉に勇者コールを始めた
「勇者様! 起きてください!」
「あの悪者を倒してください!」
「こんなこというのは心苦しいですが、魔王と共にあの邪神をやっつけてください!」
『勇者! 勇者! 勇者!』
一人、また一人と勇者コールは輪を描くように広がっていった
気づけば街全体が勇者コールで包まれていた
「何かやってるけれど私には関係ないわねェ さて私もあなたと遊ぶのも飽きてきたわ そろそろ終わりにしましょ そして終わったらこの世界の人達で遊ぶの! ああ、今から楽しみでしょうがないわ!」
「残念だが、その望みは叶わんぞ 何故なら貴様は我に倒されるからな!」
魔王は攻撃するスピードをさらに上げる
それでも邪神に簡単に防がれてしまう
「少しスピードを上げたくらいじゃ、私に傷一つ付けられないわよォ?」
戦う魔王の体はすでにボロボロだった
服はあちこちが破れ、自慢の角も片方折れてしまっている
「はは これが我の本気だと思うなよ?」
魔王は強がるが、これ以上戦うと本当に死んでしまう
こんな訳の分からない突然現れた邪神に殺されるくらいなら、勇者に殺されたい と魔王は思うようになっていた
「待たせたな」
その魔王の肩に手を置きながら、勇者が言う
傷は全て癒えており、完全回復した姿で勇者がそこにいた
「まだ眠っていても良かったのに」
「バカ言うな あのまま眠っていたら戦友のお前に失礼だろ」
勇者と魔王は共に笑いあう
「今さら一人増えたところで何だというの 私の邪魔をするなら容赦はしないわよ!」
邪神は巨大な魔力を生成し始める
どうやら本気で終わらせにかかっているようだ
「魔王、まだいけるか?」
「おうよ まだ貴様と戦うくらいの力は残しておる」
勇者は魔王の剣に自分の剣をあわせる
合わさった二つの剣は神々しい光を放ち、やがて一本の剣になった
「勇者! その剣は!!」
「ああ 俺の世代に伝わる聖魔の剣だ この剣で斬った者は、神であろうと二度とこの世界に戻ってくることはできないと言われている」
勇者はその剣を邪神に向けて言い放つ
「よく聞け! ここで引くというのならば俺はこれ以上お前に攻撃しない だが、引かないと言うのなら……容赦はしない」
「勇者…… 貴様……」
「魔王、今は休んでおけ この後、俺との戦いが残ってるんだから」
「ああ、そうさせてもらおう」
魔王は自ら防御壁を作り、休息を取った
魔王が眠ったのを見た勇者は再度聞く
「さあ、どっちか選べ! 俺と戦うか、ここで引くか!」
「そんなの決まってるじゃない このままおめおめと帰れるわけないでしょうが!!」
邪神はそう叫びながら、溜めていた魔力をさらに増幅させる
勇者は聖魔の剣を構え、神経を研ぎ澄ませる
「死ねええええええ!!!」
邪神が勇者へ向けて最大威力の魔力を飛ばしてくる
それでも勇者は落ち着いた表情のまま、邪神もろとも魔力を聖魔の剣で叩ききった
「永久に眠れ 永遠に」
邪神を倒した勇者はその場に膝から崩れ落ちた
疲労か緊張か定かではないが、勇者の目から涙がこぼれる
そんな勇者の周りに街のみんなが集まってくる
「さすが勇者様だ!」
「やっぱり勇者様は最強だ!」
再び勇者コールが始まりそうな気がした勇者はもう一人、大活躍した人を起こしに行く
「魔王、終わったよ」
「…………」
返事は無かった
まだ眠っていて体力が回復していないのかもしれない
勇者は魔王が張った防御壁を破壊し、様子を確認する
「魔王!? 大丈夫なのか!?」
そこでは血だらけで魔王が倒れていた
戦いの最中は気力で止血していたのかもしれないが、それにしてもこの血の量は命に関わる
「おい、魔王! まだ俺との決着がついていないぞ! 起きろ!」
「……あ、勇者か あいつは倒したのか」
「ああ、この聖魔の剣で倒したさ!」
「そうか それは良かった……」
魔王は今にも閉じようとしている目を必死に開きながら勇者に言う
「勇者よ 我の最期の願いを聞いてはくれないか?」
「最期なんて言うなよ これから戦うんだろ? だって、俺達は勇者と魔王じゃないか!」
勇者が呼び掛けるその声に魔王は、消えそうな声で小さく反応する
「はは そうだな だからこそ、ここでいま、その決着を付けよう その手に持っている聖魔の剣で我を刺せ」
「何を言ってるんだよ? ちゃんと戦って決着を付けるって約束だったじゃないか!」
「いいか? もう力の差は分かったようなものだ 我が満身創痍で貴様がこうやって生きている どっちが強いかなんて一目瞭然ではないか それに邪神を倒したのも貴様の力ではないか」
勇者が反論しようとするが、魔王がさらに話を続ける
「勇者はこの世界を守るんだろ? 魔王を倒すのが使命なんだろ? ならば今がそのいい機会ではないか」
「…………」
勇者は何も言えないでいた
確かに勇者は今まで使命のために動いてきた
だが、こんな形で魔王を倒して普通の生活に戻れるだろうか
考えている勇者のそばに一人の女の子が寄ってきた
「まおうさん このせかいをすくってくれてありがとう」
その一言を聞いた魔王はこの世界に生まれた事が間違っていなかった、と涙を流した
魔王には一人の娘がいた
生まれたその子は人間にそっくりだったため魔物と一緒に暮らすのではなく、人間として生活させた
それから魔王はこの世界を征服するために力を尽くした
そして、ついに勇者との最終決戦まで到達した
「さあ 勇者よ これが我と貴様の、正真正銘 最期の戦いだ」
そう言った魔王は血だらけの手を大きく広げた
勇者は葛藤しながらも、聖魔の剣を振り上げる
「魔王! 今まで悪い奴だとばかり思っていたが、いい奴だったんだな」
「ま、魔王にしてはよくやった方なんじゃないの?」
「魔王殿 あの時はすまなかった こんな形で申し訳ないが謝罪させてほしい」
皆が魔王に対しての認識を改めるようになった
その言葉を聞きながら、魔王はゆっくりと目を閉じる
(ああ 我の人生は無駄ではなかった、か)
魔王は聖魔の剣が自分に刺さるのを感じながらそう思った
勇者はにこやかな顔をしながら自分の手の中で死ぬ魔王を見て大号泣した
数日後 勇者はお墓の前に来ていた
あの戦いから数年の月日が流れた
街はすっかり平和になり、いつもの日常が戻った
「魔王 お前のおかげで少しずつだが人間と魔物が共存し始めたぞ」
あの戦いを見ていた人達の魔物に対する認識も変わり、人と魔物が共に暮らす世界に変わりつつあった
これも魔王が命をかけてこの世界を救ってくれたおかげだ
「本当にこれで良かったんだよな、魔王」
勇者は魔王の墓の前で、返ってくるはずのない返事を待つ
隣には一回り小さなお墓が並べられていいる
「そっちの世界でも元気に暮らしていれば俺も本望だよ」
そう言い勇者はお墓から立ち去ろうとする
『ああ 我も元気に暮らしているさ』
最後に魔王がそう言ったような、そんな気がした
FIN
今から魔王と世界を救う モリワカ @Kazuki1113
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