特待生には、荷が重い!

黒いたち

プロローグ

「入学式の日、野鳥のくびを折ったでしょ」


 ロイはノートから顔を上げた。

 髪の長い少女が、不機嫌そうにロイを見下ろしている。

 雪のような肌に、闇夜をあつめた黒髪が、ほどけるように揺れている。


 放課後の教室は、人がまばらだ。

 復習をしていたロイは、一拍おいて思い当たる。

 あぁ、そんなこともあったな、と。

 

 面倒なにおいに、ロイは後頭部に手をやる。

 茶色のくせ毛は、今日もふわふわとおさまりが悪い。

 こんな日は特に、と窓に目をむける。


 朝からふりつづく雨は、夕方になっても止む気配がない。

 窓にあたっては飛び散り、ながい線を描いて落ちる。

 はりついた雫は、左右の水滴を飲みこみ、ゆっくりと垂れていく。

 雨音に耳を澄ませ、ロイは問う。


「だから?」

「あなたは信用に値しない」


 信用してくれと頼んだ覚えはない。

 名前もあやふやな彼女を見返すと、険をふくんだ紺碧こんぺきの瞳が、強くにらみ返してきた。

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