六十八話 無知のフリ
「おう、夕べはよく眠れたようだな。もうお天道様が真上を通過しようとしてるくらいだ」
適当に着替えて、顔を洗い、リビングに向かうとキッチンの下で換気扇をガンガンに回しながら煙草を吸うスタルギのおっさんに声を掛けられた。
「ああ、姪っ子のサンドバッグになりながら快眠したよ」
こう言うと、「つまり、全然寝られなかったんだな」と皮肉を言っているように聞こえるのかもしれないが、俺の場合は違う。
なんて言ったって、この肉体も、脳も俺の物では無く、スズランの物。
スズランは瀕死……というか、完全に脱力しているようだが、俺の疲労とは関係ない。
心の中で精一杯「スズラン、ごめんな」と言いながら、寝落ちしているスズランの肉体を操作している。
だから、この身体は今、俺の物と言っても過言ではないだろう。
もう一人、操作権を持っている奴が居るが、あいつはバツが悪いのか、全くコンタクトを取ろうとしてこない。
どうせ、「一仕事終えたし、私も休むか」なんて考えながらアニメを見ている所だろう。
「そりゃ良かったな。俺の娘はいつまで経ってもお前らが起きて来ないから心配していた。何せ、『人が増えたから食材をその分多めに買ってくる。彼らが起きるまで、貴様が見て居ろ。どうしても煙草を吸いたくなったら換気扇の下で吸え。というか、公園で吸うな』って俺みたいな奴にお守を頼んだくらいだからな」
「それは……フィーリアさんには悪い事をしたな」
いや、俺だろ俺。みたいな顔をしながら自分の顔を指すスタルギのおっさんを無視して、召喚獣達の様子を見に行く。
昨日、壁に張り付いたまま凍らせられていたアオイロは床に落下しており、辺りには水が滴っていた。
が、肝心な中身……アオイロはまだ半解凍といったところに見える。
ラフティリが本気でアオイロの事を凍らせたのか、それともアオイロが氷系の技に弱かったのか……真偽は定かでは無いが、こいつは静かな方が好ましいので胸ポケットに回収だけしておき、解凍はせずにおいた。
「ちょっと庭に行って身体を動かしてくる」とスタルギのおっさんに言い、外に出た。
あー、後でフィーリアさんにフィドロクア兄さんが来る事を伝えておかないとな……。
なんて考えながら、庭で軽くストレッチをする。
「……ゴギュ、ギュギュギュ」
身体をほぐしていると、泥んこがゴロゴロと転がり近づきながらそう言って来た。
おはようございます。遅いお目覚めのようですね。
と、言った所だろうか。
「ああ、おはよう。昨日は夜遅くまで話をしていたから寝るのが遅くなったんだ。……あー、ちなみに、スズランは今寝ているところだ」
泥んこの喋り方から、スズランの身を案じる感情を読み取った俺はスズランの状態も追加して話しておいた。
「ゴギュ」
それを聞いて満足したのか、泥んこはゴロゴロと転がり、軒下近くに並ぶ植木鉢が並ぶ方に向かっていった。
つられて見ると、植木鉢の数がいくつか増えている事に気付いた。
泥で出来た鉢植えに、泥で出来た植木が成っている。
樹木とは違った、大地の力強さを感じられる。
「泥の植木を作っていたのか……本物とは違った良さがあるな」
なんとなしにそう漏らした。
「……ゴギュ」
すると、「ほう」というニュアンスの言葉を漏らす泥んこの声が聞こえた。
まるで、こちらを品定めしているようだった。
とは言え、無事に居る事も確認出来たし、それ以上会話する事も無い。
まだ名前を付ける事も許されていない程に泥んこからは心の距離を感じる。
何も「話す事」だけがコミュニケーションになる訳ではない。
普段の何気ない行動で少しずつ段階を踏んで仲良くなれればそれで良い。
「……さて、試してみるか」
心の中の世界でアズモと話した事を思い出す。
「アズモの身体は特別、動かしづらかったんだっけか」
硬く、堅く、固い特別な身体。
長女の本気の蹴りでさえ崩壊せずに耐えた特別性な身体の代償は、圧倒的な動かしづらさ。
心臓の鼓動や呼吸に至る細かい事まで一人では行えないコストの高い身体。
満足に生活を行えない代わりに、特別強い状態で産まれて来た……そんな身体で俺は六年間アズモと一緒に生きた。
時には、一人で身体を動かしたりもした。
助走を付け、地面に足を減り込ませる勢いで力を込め、空にジャンプする。
身体はグングンと上昇し、スタルギ邸をあっという間に超える。
そのまま、冒険者用の高層ホテルも超え、更に上昇する。
気付けば身体は、クリスタロスの外壁さえも超えた。
たぶん……本当にたぶんなのだが、俺が人間に戻っても馬鹿力を出せたのはアズモの身体で過ごしたおかげだろう。
出力……無理な動きで身体が故障しないように脳がかけるブレーキの感覚が壊れてしまっている。
そんな事を、クリスタロス街を上空から一望しながら考えた。
ただ、それだとしても、肉体の耐久力が上がった説明にはならない。
脳のリミッターが壊れて不可能な動きが出来るようになったのなら、対応する身体の部位は壊れて然るべきだ。
それなのに身体が何処も壊れないのは……また別の何かの力が作用しているのか、俺のこの考えが間違っているのか……。
……なんて、スズランの身体で試しながら考えても仕方ないか。
他人の身体の心配をする前に、自分の身体もどうにかしないとだな。
「……あ、やべ。どうやって着地しよ」
飛ぶ事だけを考えていて、その後の事を全く考えていなかった。
翼を生やして勢いを殺しながら降下していけばどうとでもなるのだが、この人間の街で翼を出すのは問題がある。
そもそも、俺はスズランの身体の扱いになれておらずこの状態で翼を出すのも博打。
このまま落下した所で大した怪我はしないだろうが、スタルギのおっさんの庭がめちゃくちゃになる。
泥んこの折角作った植木とか、スタルギのおっさんの盆栽コレクションが粉々になる。
そうこう考えている内に、身体が上昇をやめ、降下しだす。
降下するのは上昇と違い、徐々に勢いが強まって行く。
一か八かで翼を生やして勢いを殺すか、庭を破壊させないように祈りながら綺麗に着地するか、スズランの身体から飛び出て魂体の状態で翼を生やしながらスズランを抱えながら降りるか……。
――背に腹は代えられない、か。
「――良い目印だなあ、おい」
スズランの身体から出て魂体になる覚悟をすると、誰かが近くでそう言い、俺の身体を抱えた。
空中で俺を抱えた誰かは、そのまま落下する。
「やばい地面にぶつかる」とは思わなかった。
着地地点――スタルギ邸の庭――に水泡が作成されたから。
そのまま俺の身体は、何故か反発感が僅かにある水泡に吸い込まれるように包まれ、無傷で庭に戻れた。
勿論、スタルギ邸の庭も無事。
おかしな事に、身体が水で浸されている感じもしない。
突然現れ、空中で俺をキャッチした人の行動にビックリする……事は無かった。
それよりも、その聞き馴染んだ声に思考が持っていかれた。
先程、電話越しに聞いていた声と同じ声に。
「見た事の無い姿だ。別の姿だが、女の子って事だけは変わらないんだな」
その人は地面に俺を下ろしながら、そう言った。
「…………ふ、フィドロクア兄さん?」
たっぷり時間を掛け、絞り出すようにそう疑問を口にした。
青空のように透き通った青い髪に、白い肌。
強気そうなツリ目に、ニヒルな笑みを浮かべた顔。
よく通る、自身に満ちた声。
記憶の中のフィドロクア兄さんと同じ特徴。
……なのだが、記憶の中の姿とは一点だけ、どうしても違う点があった。
身長が、今の俺の身長+10cmくらいしかない。
恐らく、130cmちょいくらいのスズランの人間化した姿よりも少し大きいくらいの身長しかない。
記憶の中のフィドロクア兄さんの身長は、少なくても175cm以上はあった……はずなのに。
だから、必死に絞り出した声は疑問形になってしまった。
「くっはっはっは! 面白れぇ顔しやがって! ああ、そうだ、俺だ! フィドロクアだ!」
小学生高学年~中学一年生くらいに見える子がフィドロクア兄さんの声で高らかにそう宣言する。
俺が驚いた表情を崩さない事を察したフィドロクア兄さんが、ご丁寧に説明を続ける。
「まだエクセレにやられた傷が完治……とまではいかなくてな、その分身体を縮めて対応してんだ。まあ、文字通り、身体の半分……いや、それ以上を持っていかれたからな。片腕と、下半身の大部分を奪われた……いくら俺でもたった十年じゃ、元の全盛期の身体には戻れねえからなあ……」
「な、なるほど……。無事……? で、なによりです。そして、久しぶりです。ラフティーに弟でも生まれたのかなって思いました」
なんとか、思考の渦から抜けられた俺は久しぶりに会う家族にそう返した。
「弟だとお~? そんな俺の事が若く見えるかあ? いやあー、身体が小さくなるのは不便だが、実際の年齢より若く見られるってのは悪くねえ気分だなあ! ……が、残念ながら弟はいねえ!」
相変わらず豪快な喋り方をする人だった。
あの日、教室でエクセレに襲われた日。
娘のラフティリに付けていた監視用の小魚を通して直ぐに助けに来た。
おかげで、被害は最小限で食い止められた。
しかし、そのせいで、俺がこの世界にいる間はフィドロクア兄さんがずっと目を覚まさなかった。
親父に聞いても、「良質な水につけておけば勝手に治る」の一点張りで詳しく教えてくれなかったが……想像以上に悲惨な目に遭っていた訳だ。
道理で目を覚まさないし、親父も詳細を放さない訳だ。
十年経っても治らない傷――というか、身体を奪われて完治する方がおかしいのだが――生きていてくれて良かった。
「なんと言うか、ほんと……フィドロクア兄さんに会えて良かったです…………」
何故か、倒れ込みそうになった。
スタルギのおっさんとは違い、知っている兄妹……それも、俺自身も俺の友達もを救ってくれた兄さんの突然の来訪。
それが、俺に与える影響がかなり大きかったようだ。
正直、泣きそうなくらい嬉しい。
それ程、この世界が俺に与えた試練と、情勢が大きかった。
「あー、おいおい、何言ってんだ。それはこっちの台詞だっての。おかえり、コウジ! ま、立ち話もなんだし、取り敢えず家に入ろうぜ!」
「……あ、それなんですけど、まさかこんな直ぐに来るとは思っていなくて、家の人――フィーリアさん――にまだ何も言えてないんですよね。しかもスタルギのおっさ……兄貴の話によれば今、買い物に行っているみたいで……」
「おいおい、ここはスタルギ兄貴の家だぜ? なら、スタルギ兄貴に言えや……まあ、あれか、初見であの兄貴を信頼するなんて無理な話か。まあ、どちらにせよ、兄貴の庭でこんな事をしていても何も言われない時点で問題ねえよ、確実にな」
電話をしてからまだ一時間も経っていない。
飛行手段、座標転移手段、水上移動手段……ありとあらゆる移動手段を持っているため、すぐに来るとは思っていたが、少なくても、数日は掛かるのではと思っていた。
それに「家族を連れて行く」とも言っていたから、そこら辺で更に時間が掛かるかと思っていたが……。
「あの、そう言えば、フィドロクア兄さんの家族は……?」
「あー、たぶん直ぐ来ると思うぜ。転移用の門は自宅と、この街の近くの森に出して置いたから準備が出来次第来るかな。俺は、先遣隊というか……何かいたら不味いから先に一人でやって来た」
「はあ、なるほど……?」
そう言えば、ラフティリも避難とかでこの街の近くに飛ばされたとか言っていたな。
アズモも、最強種が狙われていると言われていたし……フィドロクア兄さんのような実力者も狙われる立場にいるって事か……。
「……ところで、さっきからあそこで俺達の方を向いているあの魔物は? 敵じゃねえよな?」
先程までの楽しそうな声とは違い、音を下げた声でフィドロクア兄さんが泥んこの方を見ながら言った。
「あー、あの子も説明が難しいんですけど、一言で言うと俺の召喚獣です。補足すると、俺の召喚獣のスズラン、の召喚獣のアオイロって奴が何処からか拾って来た魔物です」
「はー、これまた良く分からん奴を拾って来たな……。ま、敵じゃなくて良かった。何処からどう見てもあれはやばいからな」
自分預かりの召喚獣の事を言われているのに思わず、「へー……」と関心してしまった。
あの泥んこが戦う所を見た事がないので、俺もあの子に関してよく知らない。
周りが強そうって言っているだけで、俺自身はよく分かっていない。
……まあでも、強いのなら仲間として心強いか。
「ゴギュ?」
視線に気付いた泥んこが「どうした?」といったニュアンスの言葉を放つ。
「ジロジロ見て悪かった。この人は、あの雹水竜ラフティリの父親のフィドロクアって人だ」
「ゴギュ……! ゴギュゴギュ!」
「そんな畏まらなくても大丈夫だぞ。ちょっとした事で怒るような人じゃないからな」
「ゴギュギュ」
興奮した様子で音を発する泥んこを宥めて玄関に向かう。
フィドロクア兄さんの言葉通りに、勝手にスタルギのおっさんの家に人を招こうとしているが、果たして本当に大丈夫なのだろうか。
「おいおい、ちょっと待てい。え、コウジ、お前、今この魔物と会話したのか? なんて言っていたのか分かっているのか?」
ドアの前で少し躊躇していたら、フィドロクア兄さんにそう聞かれた。
「まあ、なんとなくですけど。『どうした? そいつは?』みたいな事を言っていたので、兄さんの紹介をして、それを聞いた泥んこが『え、あの綺麗で鮮烈な竜の子の父親ですか! すみません、変に絡んでしまって』と謝っていたようなので、気にしなくて大丈夫だぞ……って会話をしました」
不思議な物を見るような目で聞いて来たフィドロクア兄さんにそう返すと、泥んこも肯定するように「ゴギュ」と鳴いた。
「はーー……? よく分かるな。俺は全く分からなかったが……。コウジの特殊能力かなんかなのか……?」
フィドロクア兄さんは相変わらず不思議そうにそう呟いていたが、これに関しては俺自身なんとなくのフィーリングでやっているため、何も言えない。
強いて言うのなら、アズモとかいう表情を全く変えない言葉足らずと会話して来たおかげ……といったところだろうか。
ドアノブを捻り、スタルギ邸にお邪魔する。
勝手に招いて大丈夫なのか……?
などと、リビングにフィドロクア兄さんを通すと、換気扇の下で煙草の処理をするスタルギのおっさんの姿が目に入った。
スタルギのおっさんに、なんて言うか考えているとフィドロクア兄さんが俺よりも先に口を開く。
「よお、スタルギの兄貴! お邪魔しに来たぜ!」
フィドロクア兄さんに声を掛けられたスタルギのおっさんは、こちらを一瞥して溜息を吐く。
「お前はいつもなんでそう唐突に来るんだ……? で、今回は何の用で来たんだ? ……あー、一応聞いておくが、家族の事で来たんじゃねえよな?」
「毎回毎回唐突でごめんだけど、勿論家族……まあ少なくても、竜王家の事で来た訳じゃねえから安心してくれ。俺も兄貴に殺されたくなんてないから竜王家の事をここに持ち込むつもりはないぜ」
「まあ、それもそうか。ここでお前が何か厄介事を持ち込んで来ていたのなら、時空龍に妨害されているはずだからな。俺は、お前くらいなら簡単に殺せるから」
兄貴二人の発言に身体がゾワっと震えるのを感じた。
スタルギのおっさんが、濃密な殺気を放ちながら「家族の事で来たんじゃねえよな?」と聞いた事も少しあるが、俺が震えたのは別。
時空龍。
今、二人の会話の中に「時空龍」というワードが飛び出した事。
当然と言えば当然なのだろうが、二人は時空龍――イリス姉さん――の事を知っている。
恐らく、俺やアズモよりも、より詳しく知っている。
――なあ、アズモ。この身体だと口に出さないと聞こえないのは分かっているんだが、一つ良いか?
――今回のループで色々沢山話してくれたアズモには悪いんだが、無知のフリをして二人に時空龍の事を聞いても良いか?
『……はあ、しょうがないな』
俺の心の声は届いていないはずなのに、アズモがそう言うのが聞こえた。
「……気になっていたんだが、時空龍ってなんだ? なんかそんな物騒な存在なのか?」
俺はフィドロクア兄さんではなく、スタルギのおっさんにそう聞いた。
陣営の事を聞いてきたスタルギのおっさんに聞く方が自然だと思ったから。
幸い、言葉を喋り終わった後も今世とお別れする事は無かった。
「ああ、コウジは時空龍を知らねえのか?」
フィドロクア兄さんが食いついた。
「はい。なんか、スタルギの……兄貴にどこの陣営の竜かって聞かれて、その時に初めて『時空龍』ってワードを聞きました」
「あー、はいはい。懐かしいな、その質問。そう言えば俺もその質問で半殺しにされたっけか。あれだろ? 『無限龍の陣営か、時空龍の陣営か』って聞かれる奴だろ。ちなみに俺は『あー? 何を聞きたいのか分からんが、強いて言うなら無限龍かあ?』って答えたら真っ二つに斬られたな。あの時は流石に死ぬかと思った。というか、スタルギ兄貴はあれまだやってたんだ」
フィドロクア兄さんはそう言い、スタルギのおっさんの方を向いた。
それにつられるフリをして、俺もスタルギのおっさんの方を向いて口を開く。
「俺も『無限龍の陣営』って答えて心臓を撃ち抜かれました。あの時は流石に死んだかと思いました」
スタルギの面倒そうに煙草を取り出し、控え目な火炎ブレスでそれに火を点け一吸いし、吐き出す。
「俺からしたら、それで死なないお前らがおかしいんだよ。人に『あれは何だったんだ?』とか聞く前に己のおかしさに気付け。……んで、あれはそうだな、選別だ。どの竜に対しても同じ質問をして、何て返しても一旦殺す」
「おいおい、って事は答えなんかねえじゃねえか。というかなんて、なんて答えようが一旦殺すんだよ」
「ああ? 俺は『無限龍』も『時空龍』も嫌いだからそいつらとつるんでいる奴は全員殺すんだよ。勿論、今は『光線龍』もな。一応言っておくが、気に入った答えがあったら見逃すようにはしているつもりだ。……まあ、偶々今までそれに出会った事が無いだけでな」
――だってよ、アズモ。正解なんて無かったらしいぜ?
『……はあ、やっぱりこいつ嫌いだ。無駄に試行回数を増やさせやがって。許さん。……まあ、コウジは一回だけ自力で正解を引いたがな』
――どこの陣営でもない。別の目的で来た。
アズモ曰く、そう言い、それを証明するのが答えらしい。
そして、俺はそれを一度成功させた……らしい。
まあ、別の択を試していないと思っていたから、その時の俺は「アギオ兄貴」と答えたが。
――アズモは本当に反省してほしい。
どうせ、スズランの身体だからこの心の声は届いていないのだろうが、説明を色々と省かれると余計な事をしてしまうので説明するのならちゃんと全部説明して欲しい。
『あー、あー、何も聞こえない』
本当に何も聞こえていないんだろうな。
俺がなんて考えるかを読み切って、絶妙なタイミングで話しかけて来ているって本当か?
「……それだと、殺されても死なない俺達なら良いんだろうが、他の竜だったら死んでしまうんじゃないか?」
アズモへの文句をやめ、会話に戻る。
「いや、そこら辺は大丈夫だ」
俺の疑問にフィドロクア兄さんが答える。
「何故なら、俺達竜王家の面々は死なない……というか死ねないからな。親父の言った呪いの言葉『俺よりも先に死ぬな』ってのを忠実に守る竜が居るからな。……んで、その竜が時空龍って奴だ」
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