第9話

硬いことばを

鍋で煮詰めたり

炊飯器で炊いたり

している

ボンボン時計が

3時を知らせる

カレーのルーは

野菜と牛肉のダンスであり

野菜と牛肉の風味だ

おれの風味のパラダイム

おれの味覚のパラダイムは

スプーン一杯で

見事に

崩れ去る

大根に入れる切れ目で

宇宙と対話をしつつ

形而上学と会話する

善の研究により

おれは小さな宇宙との

面談を果たす

ボンボン時計が

4時を告げる

腹一杯の思想

腹一杯の哲学

野菜と牛肉が

濃密な雨を

舌のなかで

降らせた

淡い風景が立ち上ぼり

密教の教えは

カレーライスによって

完成するのだ







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