第6話

言葉によって、宮沢賢治が構築した世界へ向かう。渇いた喉を癒すように、賢治の詩をむさぼる。明日には処刑されるのだ。賢治の詩によって、かろうじて、おれは自分の命を保っている。銀河鉄道に乗って、冬の大地を切り裂いてみたい。おだやかな老人たちと、魂の話をしてみたい。そう考えて、天井を見つめる。おれの罪は、言葉で架空の世界を作ったことだった。おれが作った世界は蒲公英が咲き乱れ、画家が気ままにそれをスケッチし、鶯は飛んでいる最中にいつの間にか消えてしまう。そして、人々は永久に労働から解放されている。そんな世界を詩にした罪で逮捕されたのだった。おれは殺される瞬間まで、美しい世界を作り上げていたい、と思っているのだ。

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