第3話 合コンと柊楓似の女子-1

「あの子、無事かな」


 と、俺は映画女優である柊楓を見て呟いてみる。


 あれ以降、俺とあの美少女は一度も会ってない。


 警察に通報すれば、色々面倒なことになりそうで、そのままあの事件は自然消滅してしまったのだ。


 名残惜しさに時々事故現場に行っても俺が助けた美少女は現れなかった。


 ただ


『俺、こんなの初めてだったから、どうすればいいのか分からなくて……でも、俺がもっとしっかりしていれば、辛い思いせずに済んだかもしれないのに……だからこれは……!』

『っ!!!』

 

 俺の言葉に激しく動揺しながら俺を見つめてくるあの顔は、今になっても絶対忘れることはない。


 俺の瞳とあの子の瞳が一つになるような。


 まるで彼女の存在を俺の脳に上書きするような強烈な視線だった。


 在りし日に想いを馳せる俺。


 すると、テレビで柊楓と司会者が話す声が聞こえてくる。


『つまり楓さんは直接愛をもらうよりかは、誰かを愛することが好きということですね〜』

『はい。私、ですので』

『いや〜これは柊さんの恋人になる男性が羨ましいですね〜』


 柊楓は妖艶に笑った。

 

「っ!!」


 本当にやめてくれよ。


 映画にあまり興味がない俺でもファンになってしまいそうだよ。


X X X

 

翌日


大学のとある穴場


「合コン?」

「そうだよ!せっかく大学に進学できたわけだから、やってみるのもありじゃん?」


 昼飯を学食で済ませて俺は友達二人と緑がよく見える穴場で涼んでいる。


 そして予想だにしなかった合コンという単語を切り出しなのは桐谷悠生だった。

 

 こいつは高校ん時からの友達ですごく勉強ができて非常に頭がいい男だ。なので、俺もこいつ(悠生)に影響されてそこそこ偏差値のある国立大学に受かったわけである。俺の辛い過去を知っており、俺を理解してくれるいい友達だ。


「いや、お前の口から合コンの言葉が出るとは思わなかったよ。高校ん時はずっとガリ勉だったのによ。最近イメチェンしやがって」

「あはは!そりゃ、大学合格したら背伸びしたくなるじゃん!実はさ、この学校で結構イケてる男から誘われてたんだよね〜急に男二人が事情があって参加ができないってさ。んで、僕たちで行こうってわけだ。相手はあの名門女子大のめっちゃクラス高い女の子たちだって!」

「……つまり、俺たちは人数あわせってわけだろあれ……」


 俺はげんなりして悠生に話しかけるも、彼は目を輝かせて口を開く。


「司!お前はな……僕たちじゃ絶対手の届かない女子たちに会えるんだぞ!このチャンスを逃す手はない!偶然が奇跡を呼ぶんだぞ!」

「ったく……お前、口だけはうまいな」

「すでにお前の顔写真はイケてる奴に送っといたよ。すでに合コンに参加する女子たちも見てるんじゃないかな?」

「っ!おい!勝手に送るなんて、卑怯だぞ!」


 俺が猛烈に抗議するが、悠生は俺の肩に手を優しく添えて口を開く。


「司、一緒に行こう」

「……」


 一緒。


 こいつとは高校一年生からの知り合いだ。


 事故で両親を亡くした俺をずっと気にかけてくれて一緒に遊んだり勉強をしたりしてくれた。


 俺が正気を失わずこうやって大学に通っているのも、ある意味こいつの働きに負うところが大きいと言えよう。


 ずっとお世話になった。


 でも、


 女性と合コンか……


 うん……


 俺が悩んでいると、隣に座っていてずっとスマホゲームをやっている太った男(大志)が口を開いた。


「行ってみたら?行くと良いことがあると思われ。司くんは色々苦労したからな」

「大志まで……」


 こいつも高校一年生の時から知り合って、ドがつくアニオタだが、根は優しく、口数は少ないけどいつも俺のそばにいてくれる良いやつだ。


 ちなみにリアル女に一切興味を示さない。


「あ、でも日曜日に司くんちでアニメのBlu-ray観る約束は守ってほしいよ」


 と、大志がゲームをしながら一言加えた。


 アニメ。


 俺は悠生から勉強を、大志からはアニメの知識を叩き込まれたわけで、もちろん返事なんか決まっている。


「当たり前だろ」


 俺がサムズアップすると、悠生がドヤ顔をして、大志がメガネを掛け直した。


 こいつらと一緒にいると、なぜか心がとても落ち着く。


 本当に、俺は恵まれたやつだ。


 心の中でこいつらをもっと大切にしていきたいと思っていると、悠生が口を開いた。


「あ、女子たちの写真見る?一応プロ画はあるよ。みんなすごいんだけど、特に飛び抜けて可愛い子がいるよ。柊楓に似てるんだよな。まあ、十中八九あのイケてる奴が狙うはずなんだけどな〜」

「いいよ別に。俺、講義あるからそろそろ行くわ。後で日程とかアインで送ってくれ」

「あ、何かわからないことあればなんでも聞いてくれ!恋愛相談でもなんでもオッケーだぞ。俺は今全盛期だから!」

「童貞様が何言ってるんですかい」

「っ!!司!それは言わない約束だろ?ぐぬぬ」


 まあ、そう言ってる俺も童貞なんだが。


 俺は立ち上がり、午後の講義を受けるべく、歩き始める。


 すると、悠生が慌てるように言う。


「おい司!絶対参加だからな。なんかわからんけど、向こうは俺たちの組み合わせが結構気に入ってるってイケてるやつが言ったから!」

「わかったよ」






追記


 しばらくは一日2話投稿で行きます。4話も読んでね


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