第53話 延長戦に挑む冬音。
本土中の化け物ってこんなに居るの?というくらいいて倒した。
もう馬鹿じゃねえの?
6時間も戦っていて流石に食べても食べても化け物が出てきてしんどい。
そもそもここ2日は発電所で仕事してから風を飛ばして小夏達を探した。
野良村の除染や副総裁のおじさん達の治療もしたわけで限界近い。
俺がキツいんだから周りもヘトヘトになっている。
「異常者だ…」
遂に夢野勇太は規格外だの非常識を越えて俺を異常者と呼ぶようになる。
死屍累々。
だけどこっちの被害は日影一太郎と楠木恋の財布のみで人的被害はゼロ。
褒めてほしいし、時折全体攻撃の体裁でSNS君と火を放ってそこそこ綺麗にした。
俺は肩で息をしながら「楠木ババアー、終わった?」と聞くと楠木恋はスマホを見て「ふむ。先程のが山口で確認された個体だ。終わりだ。良くやったな」と言ってくれた。
「良かったー。もう胃もたれだよ」
「そりゃあな。あれだけ食えばそうなろう」
「小夏もお疲れ様。配膳ありがとう」
「ううん。やったね冬音」
そう。俺たちはやりきった。
本土だけだが人里を襲い人を都市部から出さなくする化け物達は倒した。
後は広域に除染して化け物どもを倒してしまえばいい。
「でも今日は疲れたから明日やる」
「うん。十分だよ」
小夏が母さんに声をかけると「本当、十分よ。撤収準備をしましょう?」と言ってくれる。
終わった事が何となくわかると皆が落ち着くのがわかる。
トンカツさんと銘菓君が肩を貸しあって笑い合っていてあれ?付き合ってるの?と思ってしまった。
トンカツ父さんが目を三角にしていて銘菓君は死ぬんじゃないかと思う。
そんな時大神茜が「待ってください!」と慌てる。
「何?まだ化け物?」
「本土は倒したんだから無いだろ?」
そんな声が聞こえてくる中、「その化け物です。北海道の南に生息する個体です!」と大神茜が言う。
「何を言うか、海は再生力でいち早く浄化されたから化物どもは海を越えられない。だからこうして冬音はマグロを…クソ高いマグロを私と一太郎の奢りで食べたんだ」
「だから私も捨て置いたんです!でも今追ったらもう仙台を越えて…今は福島です!」
慌ててスマホに向かう楠木ババアの見立てでは30分でここに到達する事、だいぶ微弱になってきたが相変わらず俺の身体から誘発効果が出ている事なんかの説明があった。
「北海道の化け物かよ」
「北海道って大きいんだよね?」
「北海道ってラーメン美味いらしいぜ」
「食べてみたいね」
小夏と話した俺はこの先の事を楠木ババアから聞く。
「恐らく13倍の濃度だ。時間も13倍だとすれば後30分で効果が切れる。だが逃げれば良いという問題ではない。効果切れの時には北海道の化け物達が無闇矢鱈に辺りを破壊する。後どのくらい戦える?もうヘトヘトで限界間際だな?食も細くなっていた」
この言葉に俺は少し困る。
正直言って食い過ぎている。
俺の表情を見た楠木恋は「30分で至上委員会の能力者と地方都市の能力者を集めて総力戦で殲滅するしかあるまい…」と言って周りを見た。
皆、覚悟を決めた顔をして居る。
「……パス」
「はぁ!?何を言うか!」
「やだよ。能力者にだって家族がいる。こんなヤバいのに出て両親死んで2歳で放り出される子供に仕方ないなんて言いたくない」
「だが冬音!」
怒鳴る楠木恋には「仕方ないのは俺だけでいいや。胃はヘトヘトだから食べられないけど北海道の奴らくらい倒すからさ、片付いたら迎え寄越してよ」と言い、皆にここまでありがとうとお礼を言う。
そして小夏に「悪い。行ってくる。煮込みラーメンは野菜マシマシで用意しておいてよ」と声をかけた。
「冬音?」
「んー…俺は1人で嫌だったからさ、秋斗とは一緒に居てやってよ。後は俺の願いは…腹一杯飯は食べさせてよ」
俺の真意を察した小夏は怖い顔で泣きながら「バカ!」と言うと「春は?春だって待ち遠しいんだよ!そんなのダメだよ!」と言って掴みかかってくる。
俺は手を払って「んー…、俺って気にしいだから死んじゃった人とか見て生きてらんないからごめん」と言ってあまり食べたくない餃子バーガーを5個取ると重力制御で皆を重くして俺を軽くすると走り出した。
15分走って背後に人が見えないようにしてから能力を止めて無理矢理餃子バーガーを胃にぶち込むと胃は迷惑そうにそれを拒否してくる。
「喜べって、散々吐くまで喰いたいって言ってただろ?」
俺は吐き気と戦いながら餃子バーガーを食べて化け物達を待つ。
もう日は傾いていて夕方になっていたがうっすらと見えていた月を隠すように化け物達が飛んできている。
「あれ?北海道ってツルとか居るんだっけ?確かツルは音波で攻撃とか言ってたから気をつけないと…火炎竜巻!」
俺の火炎竜巻である程度数の減った化け物達、まあ目的が俺で後10分は俺を狙う。
その間にとにかく全部倒せば終われる。
それだけを考える。
泣いていた小夏の事は後回しにしよう。
滅茶苦茶怒られるから一日中キスをして許して貰おう。
大神茜に汚染されたエロ知識で一日中セクシー下着でうろつかれたら怒らずにセクシーだと褒めよう。
春か…。
言われてからずっと名前を考えていた。
小春、春斗、春子、春雄。
まあ雄の字は英雄を思い出すから使いたくない。
なんだ?何でこんなに考えてるんだ?目の前の化け物達は?
そのことに気付いた時、俺の目の前には地面があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます