第50話 日曜のランチタイムで過ごすひと時は(8)

「シロっていう事は二人共犯人じゃないっていう事ですよね」

「その可能性は極めて低いと言っていいんじゃないかと思うわ」

 滝田さんはやけに余裕ぶって返答した。その様子から、元々彼女等を疑っていた訳でないのではないかと思った。

「その後の二人の足取りは掴めているんですか」

 私も何となく彼女達が事件に直接関係は無いような気がしてきたが、一応尋ねてみた。

「秋田さんと宮前さんは二人でファーストフード店で食事をした後、カラオケに行ったそうよ」

「カラオケって言うと町の方に出たっていう事ですよね」

 この辺にはカラオケボックスは無い。一番近場でもターミナル駅周辺まで行かなければならない。そこまで歩いて二十分くらいはかかる筈だ。

「ええ。十九時頃にお店に入って出たのは二十三時頃ね。一応、お店の方にも確認をとったわ。担当した店員さんが覚えていたのでこれも間違いないわね」

「つまりカラオケに二人で四時間居たって事ですか」

 長い様な気もするが、カラオケを何曲か歌って途中会話をして、いつのまにやら時間が過ぎてるというのも無くはないか。

「うーん。入ったのは二人だったみたい。ただ、どうも最後まで二人だけって訳じゃないかったみたいなのよね」

「へえ。誰か合流したって事ですか」

 町の方なら本宿さんの家も近い。彼女が一緒に参加したりしたのだろうか。

「いえ。同年代のお友達とかではなくって、別な部屋にいた四十代くらいの男性二人と一緒にカラオケをしてたみたいなの」

「よ、四十代? 知りあいとかでもなくですか」

「そうね。まあ所謂ナンパって奴?」

 つまり、別室にいた男性が声をかけて合流したということか。

「ええ……。だって制服着た女子高校生ですよ」

 良い大人が女子高生に声を掛けてそれに二人も応じたという事か。何だか釈然としない。

「まあ、そういう事は昔から良くある事よ」

 滝田さんは私の言葉に軽い調子で答えたが、その表情はあまり愉快そうではない。

「そ、それって良いんですか?」

「ただ、四人仲良くカラオケを楽しんだだけっていうなら問題はないわよね」

 私は私で随分と抽象的な言葉を投げかけてしまったが、返って来た言葉は更に意味深なモノだった。

「それはつまり、だけ……じゃなかったっていう事ですか」

「いや、カラオケでどうこうあったっていうことはないみたいよ。ただ、清算の段階でも秋田さん、宮前さん。そして男性二人と四人一緒だった。更にお店を出る時も連れ立つように固まって出て行ったんだって」

「ちょっときな臭くないですか」

 未成年女子二人に四十代男性二人が固まって夜の街に消える。どうもよからぬ想像が搔き立てられるシチュエーションだ。

「キナ臭く感じちゃうわよね。一応二人にも男性の事は尋ねてみたけど、たまたまカラオケで意気投合しただけで、お店を出てからは別れたって話なんだけどね」

 何だか言い訳めいた話だった。

「その後、二人はどうしたって言ってるんですか」

「その後秋田さんは宮前さんの家に行ってお泊りした。翌朝自宅に帰ったみたいね」

 丁度その日、宮前麻衣の家は両親が家を空けていたらしい。それに合わせてひなが泊まりに行くという約束をしていたとの事だった。

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