第41話 休日の朝方にモーニングコールで起こしてきたのは(10)
「怖え。あんたを怒らすなんて馬鹿な奴らだね」
既に触れたが彼女は大人しい見た目に反して気が強いタイプだ。尚且つ友人のしょう子もいる。日奈達に怯むべくもない。
『ちょっと……人聞きの悪い事言わないでよ。厳しくったって怒鳴りちらした訳じゃないんだからね』
「そりゃ、図書室じゃなかったら怒鳴り散らかしたって意味じゃないのかい」
私は今電話越しに聞こえる彼女の甲高い声。それをキンキンと響かせて烈火の如く吠え猛る姿を浮かべながら言う。
『んー。そうだな。静かにしなきゃならない場所じゃなかったらもうちょっと言っちゃってたかもしんないね』
「やっぱ怖いじゃん。私もせいぜいあんたを怒らせない様にしないとね」
私はそれに対して本気半分おふざけ半分で答えた。
『何言ってんの、冗談に決まってんじゃん。勿論図書室でも伝えるべきことを伝えただけよ』
そうだ、本題は図書室での一件だったか。話を戻そう。
「それでみんな素直に従ったの?」
『不満そうな顔してたみたいだけど、渋々出て行った感じかな。流石にその場で言い争う気はなかったんじゃない』
香の言葉にその姿が目に浮かぶようだった。自業自得ではあるが、少し気の毒にも思えてくる。
「因みに、彼女らが出てったのは何時頃の事だったかは覚えてる?」
『えっと、十五時半前だったと想うよ』
「その後、彼女等は何時頃まで学校にいたんだろう。しょう子は少なくとも十六時過ぎまでいたわけだよね」
『んとね。結局、行き所が無くってね。階段の一番上の部分。屋上扉前にたむろっていたみたいよ』
「屋上扉前?」
『うん。それこそ十六時前くらいまでいたみたい。で、そろそろ帰ろうって話になった時にしょう子はおトイレに行きたくなって二人と離れたらしいの』
そして、香に捕まり強引に家政科室へと連行されたという訳だ。
「それって一応日奈達は彼女の事待ってたんじゃないのか」
『一応メッセージは入れさせたよ。家政科室にいるから時間があるならくればって』
しかし、日奈達から返信はなかったし、少なくとも校内で彼女等の姿は見られていない。
「エリナの転落した地点を取り巻いていた生徒の中に日奈達の姿はあったのかな」
『どうだろう。記憶にないし居たら気づいてるとは思うけどね』
確か警察はあの時点で日奈達の所在が不明であると言っていた。
という事はやはり事件当時彼女等は学校を後にしていたのだろうか。流石に今の時点ではそれを辿るのは難しそうだった。
『そういえば本宿さんは先に帰っていたんだよな』
四人組の内の一人本宿ゆりなは真っ先に帰ったのだという話だった。彼女は何をしていたのだろうか。
『そうそう、彼女はお家のお手伝いがあったらしくてね。早く帰ったんだって』
「ああ、そういえば。彼女は花屋の娘なんだっけか」
本宿生花店は町の繁華街、駅近にあるかなり大きなお花屋さん。
彼女はそこの娘で時折店の手伝いなどをしているという話は聞いていた。
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