第40話 休日の朝方にモーニングコールで起こしてきたのは(8)

「話は変わるけどさ、しょう子はエリナが落ちた時、まだ学校に居たんだよね」

『うん。私と、しょう子。ありさに美由紀とメイの五人は一緒にいたよ。丁度昇降口に着いた当たりかな。表から悲鳴が聞こえて、みんな驚いて外に出たら誰かが倒れてるのが見えたの』

「例のメッセージアプリの内容には気付かなかった?」

『うん。気づいたのはその後だったね。みんなほぼ同時にそれも確認して、呆然としちゃったよ』

 それもそうだろう。信じられない光景を見た後に信じられない様なメッセージ。

 遺書ともとれるその内容は普段なら冗談として受け取ってもおかしくないようなものだ。

 でも、香達はその現場を見てしまったのだ。そしてその場で遺書ともとれる内容を読んだ時の衝撃たるや凄まじい物だっただろう。

『その現場周りには、しょう子以外にひなや麻衣に本宿さん達っていたんだろうか』

『んっと、いなかったんじゃないかな。しょう子の話だと本宿さんは授業終わってすぐに帰ったみたい。で、放課後ひなと宮前さんとしょう子は一度図書室に来たんだよ』

 香が図書委員として図書室で受付をやり始めた時に彼女達がゾロゾロと入って来たらしい。

『図書室?』

 人を見た目で判断するのはよろしくない事だと思うが普段のクラスの中での様子からしても彼女等と図書館というのはかけた離れた様に思えてしまう。

『それがさ、結構来てるらしいんだよね。でも、別に本を読んだり勉強したりが目的じゃなくて、ただ屯う為みたいでさ』

 私の言葉に渋い声で香が返してくる。それで得心がいった。

『そか、確か前は教室でお喋りしてたのをみたけど、今じゃそれも出来ないもんな』

 エリナと揉めて以降、彼女等は放課後もすぐに出ていくことが多い。学校を出ているのかと想ったが場所を移していたのだろう。

『そゆ事。で、どこかに腰を落ち着ける先ないかって事で図書室に来てるの。しかもさ、結構声出したりもしてるんだって。他のクラスの子からすると、怖いと想う子もいるみたいでさ注意できなかったりするんだって』

 図書室というの当然無闇やたらに話をしていい場所なわけはない。本来なら受付係の図書委員が注意しなければならないのだろうが、それで揉め事になっても詰まらない。声を掛けるのに勇気がいるのは想像に難くなかった。

「そりゃ迷惑な話だね」

『まあ、でも、私には効かないからね。声出すなら出てけって厳しく言ってやったの』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る