第38話 お留守番

「お兄ちゃん。明日ユキナと一緒に日本に行って来るね」

「少し心配だ」

「大丈夫よ。私もあかりもユウヤのおかげで強くなったわ」


「大丈夫、きゅうも付いて来てくれるって」

「きゅう!」

「きゅう、いや、きゅう隊長、仲間のエレメントカワウソを指揮してくれ」

「きゅう!」


「任せろと言っています」

「俺はちょっと出かけてくる」


 村を出る。

 そして異界の入り口まで走った。

 魔力循環の力で感知したモンスターをすべて倒す。

 大丈夫だとは思う。

 だが念のためだ。




 ◇




【次の日】


「お兄ちゃん、行って来るね」

「気を付けてな」

「ふふふ、心配性ね」


 ユキナとあかりの後をきゅうを含めたエレメントカワウソ5匹がついていく。


「きゅう、やっぱり10匹に増やそう」

「きゅう!」


 きゅうは新たに5匹のエレメントカワウソを引き連れて日本に向かった。


「俺はダンジョン奥を探索してくる」

「ダンジョン奥は危険です。あまり奥には行きすぎないでくださいね」

「分かっている。慎重に進む」


 ダンジョンの奥からモンスターが押し寄せて来ていた。

 スライムの時も恐らくそうだった。

 俺はモンスターの数を減らす為ダンジョンの奥へと向かった。




【ユキナ視点】


「モンスターがいないわね」

「お兄ちゃんが昨日倒したんだよ」

「ユウヤなら、やるわね」

「お兄ちゃんならやるよ」


 私達は問題無く日本にたどり着いた。

 そしてあかりのお家にお世話になった。

 家に上がるとあかりの両親が暖かく迎え入れてくれた。


「まあ、友達のユキナさんね」

「はい、今日はよろしくお願いします」

「部屋は余っているからね。ゆっくりして行って欲しい」

「ありがとうございます」


「今日は部屋がすっきりしてるね」

「そうね。もう少ししたらB市にお引越しするのよ」

「そうだぞ。B市は税金が安くて、市のサービスも手厚い。2人で見てきたがいい所だった」

「あかりもきっと気に入るわ」


「うん」

「はっはっは、あかりは優也君の事以外興味がないようだな」

「まあ、将来孫が楽しみだわ」


「もう、からかわないで!」

「ふふふふ」

「ユキナまで笑って!」


「きゅ!きゅう!」

「いい匂いがするのよね?」


「そうだわ。早くお夕飯にしましょう。本当に可愛いわね」

「「きゅうきゅうきゅうきゅうゅうきゅうきゅうきゅう」」


「ユキナ、お父さんとお母さんの武器と防具を見せてもらおうよ」

「ええ、お願いするわ」

「「きゅうきゅうきゅうきゅうゅうきゅうきゅうきゅう」」


「まあ、最初にお夕飯からね」


 こうして私とあかりは無事に日本で過ごした。

 日本にある武具を見て、スーパーで買い物をして、あかりの両親と楽しく会話も出来た。


 街も案内してもらい、ヨウカが言っていたふぁみれすも体験し、ほーむせんたーも見て回った。





【異界の入り口】


 ヨバイの村に帰る為に異界に入ると、後ろから男冒険者達が付いてきた。


「あかり、走りましょう」

「うん、いやな感じがするよ」

「きゅう、行きましょう」

「きゅう!」


 私達は走った。

 いつもなら追いつかれる事は無い。

 そう思っていたのだけれど、追手の足が速い。


「前からイエロースライムが4体来るわ!!」

「きゅう!」


 きゅうの合図でエレメントカワウソが水を放つ。


「サンダー!」

「アイスアロー!」


 イエロースライム1体が集中攻撃で黒い霧に変わった。


「後2体だよ!」


 私達は魔法攻撃で残りのイエロースライムを倒した。

 その間に、追っ手に追いつかれた。


「おいおい!逃げるなよ!Aランク、やってくれ」

「任せろ、あの程度なら俺一人で十分だ。それに、全員ウイザード、俺の得意な相手だ」


「はあ、はあ、ジンさん、待ってくれ!」

「遅いぞハゲ!早く来い!」

「Aランクとジンさんに追いつける人間は、はあ、はあ、ほとんどいないぜ」


 100人を超える追っ手が追い付いてきた。

 数が増えている!


 倒しきれない。


「あかり!きゅう!」


 私はみんなに合図を送った。


「サンダー!」

「アイスアロー!」

「きゅう!」

「「きゅう!!」」


 魔法を放ち、そして全力で走って逃げた。


「甘い!」


 Aランクと呼ばれた男は銃を構えた。

 私は足を撃たれ、地面に倒れる。


「ユキナ!」

「逃げなさい!早く!」


 動きが止まったあかりの足を撃たれた。


「安心しろ、威力は抑えてある。おっと、回復魔法は禁止だ」

「はぎい!」


 またあかりが撃たれた。


「きゅう!!」


 きゅうが全力で水流を放った。


「遅い!」


 きゅうが撃たれ、地面に倒れた。


「きゅう!逃げて!」

「逃げなさい!」


 エレメントカワウソが被弾したきゅうを咥えて逃げる。

 背の低いエレメントカワウソなら草むらに隠れながら逃げ切れる。

 きゅうは仲間に回復魔法をかけて貰えば大丈夫。

 私は、薬をかけられて、気を失った。




【二重 陣視点】


「ユキナと東山あかりは無事捕まえた」

「ジン、あのカワウソを追……かなり遠くまで逃げられた始末しきるのは難しい」

「だろうな。それよりも、この2人は生きたまま日本に運ぶ」


「市長のお気に入りか」

「そうだ。これで俺もAランクも無駄に怒られる事は無くなる」


「ジンさん、薬を塗り終ったぜ」

「バックパックに詰め込んで運べ、転ぶなよ」

「分かってるぜ」


 俺達は2人を捕まえて、無事に異界を出て魔道カーに2人を乗せた。


「まずはユキナを市長の地下室に運ぶ」


 やっとあかりを手に入れた。

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