第3話 ダンジョン

 タワーに入ると部屋があり、中心に魔法陣があった。

 この魔法陣に乗れば、タワーに入れる気がする。


 力ずくで脱出できないんだ。 

 ここに入る以外に方法はない。

 俺は魔法陣で転移した。


 転移するとスライムが4体現れた。

 武器を使ってスライムを斬るとスライムが黒い霧に変わって消えた。

 地面に魔石が落ちる。


 そろそろ、武器の魔石を交換しておこう。

 俺は武器の魔石を交換した。

 途中で武器の魔石の力が切れたら危ない。

 そう思った。


 部屋が迷路のように入り組んでいる。

 行き止まりが多い。

 異界に来て閉じ込められてから何度も頭によぎる。


 俺は何でスライムの群れに突っ込んでクラスメートを助けに行ったんだ?

 人を助けようとして俺だけが取り残されてみんなは逃げた。

 鬼道は包囲を脱出して逃げる時に俺を見て不気味に笑っていた。


 何度も気絶するように眠って起きてモンスターを倒しても脱出できない。

 力が無いのに人を助けようとして俺は何回か死にかけている。


 


 前からそうだった。


 ギルド委員を押し付けられそうになったクラスメートが可愛そうだと思い代わりにギルド委員になった。

 その後言われたのが『無能に変わって貰えてよかった』だった。


 みんなの事を助ける為に冒険者になった父さんと母さんは異界に行ってその時に第二次モンスターパレードが起きた。

 父さんと母さんは帰ってこなかった。

 死んだんだ。


 残った周りの大人は自分では戦わずに自衛隊や冒険者に文句ばかり言っていた。

 人を助けようとした父さんと母さんは死んで、文句ばかり言って自分では動こうとしない人が結果生き延びた。


 こう考えてしまう時点で、俺は父さんや母さんのような立派な人間ではないのだろう。

 父さんも、母さんも人格者だった。

 でも、俺はそうじゃない。

 力も無い。


 今まで見た本や、ネットの言葉を思い出す。


『投資するのは頑張り屋さんだけや、サボって金だけ取ろうとする人に投資しとったらあかん。人は見なあかんで』


『自分はやって貰って当然、でも人は助けない、そんな人からは距離を取りましょう』

 

 ……そうか、俺が馬鹿だった。


 まともな人もいる。

 でも、鬼道のようなクズもいる。

 そういう奴を何度も助けようとした。

 俺が馬鹿だった。


 クズは、もう助けない。


 自分で何とかする!


 自分だけで出来る事だけを考える!


 俺はモンスターを見つけては倒しながら進んだ。


 次の魔法陣を見つけてその上に乗る。

 転移するとまた迷路のような道が続いていた。

 ゲームのダンジョンのようだ。


 道を進むとブルが出てきた。


 ブルは牛のモンスターで人を見つけると突進してくる。


 後ろから更にブルが出てくる。


 7、12,15!


 15体!


 15体のブルが俺に向かって走って来る。


「まずい!まずいまずいまずい!」


 俺は走って逃げた。

 狭い通路で突進攻撃をされたらまずい!避けきれない!


「バリア!」


 俺の体を光が覆う。


「シールド!」


 シールドは発動させた場所に大きい盾を作り出す事が出来るスキルだ。

 俺は通路に壁を作るようにシールドを発生させた。

 

 ブルがシールドに激突してダメージを受けた。

 だが後ろにいたブルが更にシールドに突進してシールドを破壊する。


「シールド!シールド!シールド!シールド!」


 何度もシールドを張るがブルは衝撃をものともせず突進を繰り返した。

 曲がり角まで走って、角に隠れてブルが曲がる瞬間に剣で斬り倒していく。


 行ける!

 俺はブルを斬り倒して全滅させた。


 ブル肉がドロップした。

 肉は助かる。

 チキン肉、ブル肉、肉は出来るだけ回収する。


 俺はすぐに肉を収納して歩き出そうとする。

 前から魔力の気配を感じた。

 スライムの群れが現れた。

 10体か。


 後ろに下がると、後ろからもスライムの群れが現れた。

 100体以上いる!


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


 俺は前にいるスライムに斬りかかった。

 何度もスライムを斬り、突き刺し倒していく。

 行ける!


 スライムの動きは速くない!

 前のスライムだけを倒して逃げれば大丈夫だ!


 前にいるスライムを倒して走って逃げる。


 曲がると行き止まり!

 後ろからスライムが追ってくる。


 剣が短くなっていく。


「なんでだ!魔石を交換したばかりなのに!」


 壊れた!

 今!

 こんな時に!


 スライムが俺を包囲する。

 壁を背にして立つ。

 俺は追い詰められた。


 まずい!

 攻撃手段がない。

 バウンドして飛び掛かるスライムにパンチで返した。


 バリアが解除された。


「バリア!」


 またスライムがタックルをしてくる。


 俺は何度もタックルしてくるスライムにパンチを繰り出した。


「バリア!バリア!バリア!来るな!来るなあああ!バリア!バリア!バリア!」


 腹にタックルを受けてバリアが解除される。


 何で攻撃スキルが使えないんだ!


 手をうっすらとバリアが覆う感覚があった。

 

「もっと出ろ!!」


 手を覆うバリアが強くなっていく。

 何度もパンチを繰り出した。


『スキル枠が拡張されました』


『新スキルを取得しました』


『新スキルを取得しました』


『新スキルを取得しました』


『新スキルを取得しました』


『スキル枠をオーバーしました。溢れたスキルを封印します』


 俺は戦い、意識を失った。

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