茶色の狂咲

エリー.ファー

茶色の狂咲

 音を聞いている。

 静かに踊るしかないと思っている。

 謂れのない罪を背負って生きる真夜中に、自分を感じさせてくれるはずだと考えている。

 文字と、僕と、世界と、考えが浮かんでいる。

 きっと、このままずっと。

 何も変わらない世界がある。

 僕はこの旅をいつか終えるだろう。寂しさの中に自分の影を見つけて瞬きを繰り返すだろう。ただ、極めることだけに憑りつかれる自分の姿を鏡の中に見るだろう。

 でも、寂しさはない。

 寂しさは、最初からない。

 きっと、この旅は一人で始めたものなのだ。

 終わる時も一人。

 いずれ、一人ではないことを知るだけだ。

 光の中にいる自分が何者であるかを、誰かの目を通して知る時、世界が巡り始める。

 クライマックスは血塗れだ。

 きっと、誰の目に明らかだ。

 いつか死ぬための人生だ。

 悔いのない人生を生きる。

 無理だ。

 無理に決まっている。

 何故なら。

 そう、それが人生だからだ。




「私には夢があります。それは、多くの人が希望を抱き、前に進むことです。決して後ろ向きに、絶望に打ちひしがれながら、その命を浪費することではありません。連続した奇跡によって成り立つ世界であってはなりません。常に、ありふれた毎日によって構成されるべきです。今現在の世界は、奇跡が前提です。地球環境の分野で奇跡が起き、経済の分野で奇跡が起き、権力争いの分野で奇跡が起き、ようやくすべてが解決し、平和が訪れます。そうです。人類は世界というもののデザインを間違えたのです。失敗しても、ストッパーが機能してくれるようなデザインではありません。何一つ、サブルートが存在しないのです。いえ、場合によっては主となるルートが絵空事のままで、サブルートは主となるルートが一応あるということで手を抜いて作られた可能性があります。怖れるべきなのは、この状況を私たち人類は望んでいたということです。林檎を加工せず、食べもせず、放置しておいたのに腐ってしまった。そう怒る人はいません。トイレの蓋を開けずに用を足したら汚れてしまった。そう怒る人もいないでしょう。全く、同じです。少し考えれば分かることを放置し続けた結果が今なのです。いつか森が消え、海が汚され、人は血を流し、金に押しつぶされながら笑う人々が現れ、それでも特に案を出さず行動もしない人たちがこのように叫び出す訳です。いつか、きっとよくなるさ、そのアイディアはないし、僕が出す気はないけれど。絶望とは希望の光が見えていない状態のことではありません。まだ希望の光が見えている段階で、そのか細い光に甘えて何の行動もしない日々のことをさすのです。私たちは、人類は、絶望の最中にいます。もしも、気づくべき人が、気づいたのであれば、世界は、未来は、変わります。誰かが責任を持って、いえ、誰もが責任を持って行動する。いいですか、世界を変えるのは勇者ではありません。名もなき村人Aなのです」



「いやぁ、すげぇよな。これだけの奴らを集めてスピーチなんて、緊張しねぇのかよ」

「全然、しない。あと一時間はできる」

「マジかよ、本当にやべぇな。お前ってさ、なんでこんなに中身のない話をできるんだよ」

「中身がねぇからだよ」

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