梨がおいしかったから

物部がたり

梨がおいしかったから

 ニュートンは家の庭でリンゴが大地と引き合うように樹から落ちるのを見て、万有引力の法則を発見した。れいは梨がおいしかったことで、循環の法則を発見した。

 どうして梨はこんなにおいしいのだろう。

 おいしくて食べ尽くされたら困らないのか。という疑問から法則性を閃いた。

 おいしくすることで、食した動物に種を運んでもらえる。

 おいしくなることで人間から保護され種として繁栄できる、と。

 別段、不思議なことではなかったけれど、れいにとっては大発見だった。

 この法則で考えれば自然界の相互作用の説明が付くのではないか。


 牛や豚や鳥はおいしく品種改良されることで種としての繁栄を勝ち得、犬や猫やプレーリードッグは人間から愛されることで種としての繁栄を勝ち得た。

 同じ法則で植物も様々な方法で、相互し合いながら繁栄できているのだ。

 目から鱗が落ちるようだった。

 この日を境に、れいの内面世界の見え方が大きく変わっただろう。

 れいにとってのコペルニクス的転回は、梨がおいしかったからだ。

 れいはこの大発見を、誰かに知らせたかった。ろんぶん? というので発表しなければと使命感に駆られた。善は急げとばかりに早速、ろんぶんに取り掛かることにした。 

 だがすでに、昔の偉い人たちによって循環の法則は発見されていることをれいはまだ知る由もなかった――。 

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