第7話【裏・リサイクル拒否】

 時間をちょっと戻して三章5話開始時くらいの時期から始まります

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 二年の新学期が始まって間もない頃。


 本日の生徒会の仕事を終え、解散して帰宅する事にしました。


 私と恭一さんたちが同棲しているのはまだ内緒ですので、バラバラに帰るのですが。


 去年の今頃は私がやりたくて続けていた習い事のレッスンに行ったのですが、それらは同棲を期に全部やめました。


 少しでも恭一さんとの時間を増やしたかったんですもの。


 前々から恭一さんとイチゴさんが隣同士で住んでいて、放課後に私の知らない所で二人で睦み合ってるのかもと思ったら胸が張り裂けそうな思いでした。


 私が恭一さんと付き合っているとは言えど、実質二人の間に割り込んだようなものですから。


 それに特殊な事情で結局イチゴさんも恭一さんと付き合っているのと変わらないような関係になりましたので。


 二人が私に内緒で色々しているのかもと思って、何度自分で自分を慰めた事か。


 でももうそんな惨めな思いから解放されたのです。


 今ではほぼ毎日の放課後、私は恭一さんと睦み合っています。


 恭一さんの義妹のリナさんだけでなく、愛人のイチゴさんやユカさんも一緒ですが、まあ一緒に生活して色々便利な人ですから容認しています。


 イチゴさんに調べて貰った結果、恭一さんが私相手に大きくならない理由はまだ分かりませんでしたが、恭一さんが寝てる間ならレム睡眠のタイミングでちゃんとあそこが大きくなる事が分かりました。


 それで休み明けに合わせて大人しくなったと見せかけて毎晩……こほん。


 おかげで睡眠不足な日も多いのですが、それで成績を落としたりはしないので大丈夫です。


 今日も今日とて家に帰れば恭一さんと……。


 それを想像しながら楽しみな気持ちで校門を出た瞬間。


「アリア!」


 は?


 誰ですか。私の名前を呼び捨てに呼ぶ無礼者は。


 いえ、気のせいか、他に同じ名前の人を呼んだのでしょう。


 無視して進もうとしたら、男子生徒が私の前に立ちました。


「生……長岡。私に近付くなと何度も言ったはずですが?」


 私は、懲りずに現れる生ゴミながおかを睨みならが言い放ちました。


「それって、葛葉に弱みを握られてるからだろ?大丈夫。今のあいつはよくも悪くも有名人だから、アリアさんを勝手に扱う真似をしたら人気を逆手に取って返り討ち出来る」


 は?


 その人気は、私と一緒に練習して出たライブステージで上げた物ですが。


 それを逆手に取って私に近付いて恭一さんを貶めようとするとか、死にたいんですか?


 せっかく生殺しで勘弁してあげたのですから、死んだみたいに学校の平均点だけ上げていればいい物を……。


「あなたの用事が何かは知りませんが、私は今帰宅中です。そこを退きなさい」


「ああ、俺も手短に用件だけ言うよ」


 いや、あなたの用件はどうでもいいので、退けと言っているのですが?


「今は苦しくても待っていて欲しい。必ず俺が君を葛葉の魔の手から助けてあげるから!じゃあ!」


 生ゴミは自分の言いたい事だけ言って、走り去って行きました。


 幸い、今回は前もって生ゴミの妄言癖や不誠実さ、その他私を脅した事実(捏造)などを周知させて置きました。


 おかげて私と生ゴミの関係を誤解する人はおらず、下校中に私と生ゴミのやり取りを見た人たちは、生ゴミを精神異常者の如く扱い、私はその被害者として見られました。


「お嬢様も大変ですな」


「ご理解いただきありがとうございます。では出してください」


 校門の外に停まってた家の車に乗り込むと、運転手さんも私に同情してくれました。


 しかし、生ゴミの精神はユカさんやリナさんのビデオレターを送るという追い打ちまでして徹底して潰したはずですが。


 何故元気を吹き返したのでしょう。


 まさか精神面で被虐性愛者だとか?


 それならそれでおぞましいですが、一応ちゃんと調べてみましょう。




 原因はすぐ判明しました。


 どうやら私がアイドル二人が生ゴミと仲良くしていて、それで生ゴミが謎の自信を取り戻した模様です。


 ならやる事は決まってます。


 今回も恭一さんを使って、アイドル二人を奪わせましょう。


 また恭一さんの愛人が増えるでしょうが、それくらいは恭一さんに男としての箔を付けると割り切って。


 早速家のリビングでその旨をイチゴさんとユカさんにも伝えましたが。


「アリア、あんた正気で言ってんの?」


 無言で同意したイチゴさんはともかく、ユカさんが反発しました。


「私は正気ですが、何か問題でも?」


「じゃあどうして恭一をそんな風に使おうと思えるのよ」


「私と恭一さんは恋人ですから。恭一さんも私の力になってくれるはずです」


 私の答えに、ユカさんは軽蔑する眼差しを向けて来ました。


「……勝手にすればいいわ。私は反対したからね」


 それだけ言い残して、ユカさんは厨房に入りました。


 確か今日の夕食の当番はユカさんでしたね。


 少し言い争っても、当番を投げ出さない所はいいと思いますよ?


 料理の味も、普段実家(上の層)のお手伝いさんが作ってくれる料理やレストランの料理よりは落ちますけど、段々良くなってますからね。


 将来的に、専属のお手伝いさんに雇ってもいいくらいには。


 ついでに私と恭一さんの子供のベビーシッターもやっていただきましょうか。


 その時になっても恭一さんの愛人のままにするかは……ちょっと迷う所ですが。まだまだ先の事ですね。




 恭一さんにアイドルの片方を奪わせるチャンスはすぐ訪れました。


 未来の義妹であるリナさんが、アイドルの内一人の島川トモリさんと仲良くしていて、週末に恭一さんを入れた三人で遊びに出掛けるのを誘って来たのです。


 ただ、リビングでその誘いを聞いた恭一さんは気乗りしない様子。


「恭一さん。リナさんの為ですから行ってもいいのでは?」


 それで私は横で話を聞いてた体で恭一さんの背中を押しました。


「いいのか?」


 恭一さんはユカさんにも尋ねました。


 ああ、普段週末は私かユカさんとデートしますから、私たちに気を使ってくれてたのですね。


「……いいんじゃない?先輩後輩の付き合いくらいなら」


 ユカさんは渋い顔をしまたが、私の邪魔はしないみたいで出掛けるのに反対もしませんでした。


 それで恭一さんもリナさんと島川さんの誘いを受ける事にしましたが。


「アリアさんがデートを被せて来ると思ったけど、送り出されるとは思わなかったな」


 不意にそんな指摘を受けて、内心動揺しました。


「……私も、いつまでも嫉妬して意地悪するばかりじゃないのです」


 何とか言い繕いましたが、危なかったですね。


 確かに普段の私とは違う対応でした。


 咄嗟に嘘をついてしまいましたが、嘘を真にする為にも今後は恭一さんの女性との付き合いにもう少し寛容になりましょう。


 週末になって、恭一さんとリナさんが出掛けました。


 特に私から介入する事はありません。


 恭一さんは世界一完璧な男性ですから、一緒に時間を過ごすだけで生ゴミよりも恭一さんに頷くに決まってますから。


 ふふふ、生ゴミが絶望に染まる様が楽しみですね。


 そう思って待っていましたのに。


 恭一さんを紹介した雑誌社の方から電話が来て、恭一さんの女性関係でネットで炎上してると聞いた時は驚きました。


 SNSをチェックして、早めに戻って来た恭一さんから事情を聞くと、どうやらあの生ゴミが往来で恭一さんについて勝手な事を吹聴したらしいです。


 生ゴミ……、生かしておけばまた勝手な事を……。


 金銭を使ってアレを闇から闇へと葬ってやりたいと思いますが、残念な事に私にその様な事が出来る伝手は無く、この国はそういう方面では無駄に治安がいいので難しいですね。


 合法か、違法でもバレないグレーラインまででアレのメンタルを叩き潰すしか……。


「どうするんだ?色々と」


 恭一さんに聞かれ、私は頭の中で組み立てた予定を説明します。


「雑誌社には、ただの同じ高校の友人付き合いだったと証拠や証言を集めて事情を説明します。あの生ゴミは侮辱罪で起訴してもいいのですが、それをすると被害を負うのはリナさんの両親なのですから……」


 本当に、何故アレがリナさんの義理の兄なのでしょうね。


 その所為で長岡家を追い詰めると、回り回って恭一さんの葛葉家にまで負担が掛かるのですから、こちらの足元を見て好き勝手振る舞うのが悪質です。


 リナさんは本当にいい妹ですのに、義兄がアレとか、同じ親に育てられたとは思えない違いです。


 教育に差がないのなら血かもしくは本人の気質……でしょうか。


 ともかく、今後このような理由で生ゴミを潰せない状況を避ける為にも、リナさんを長岡家から完全に引き離す必要もありそうですね。


「間接的だが、迷惑掛けて悪いな」


 考えていると、恭一さんに謝られました。


 まったく、恭一さんが謝るようにするとか、あの生ゴミは度し難いですね。


「いいえ、問題を起こしたのはあの生ゴミですから。この問題は私が片付けますので、任せていただけますか?」


「アリアさんが色々顔が効くだろうから、任せるよ」


 恭一さんが私に任せる?


 つまり恭一さんに信頼と期待されてるという事で、アピールのチャンス!?


「はい!全力を尽くします!」


 これは是が非でも頑張らねば!


 私は早速炎上の対応に動きました。


 まずは雑誌社に生ゴミが逆恨みで恭一さんをありもしない事実で侮辱したのだと伝え、イチゴさんが恭一さんのスマホに盗聴アプリを入れていたので、それで残っていた会話データも提出しました。


 それで雑誌社の方々は、ただのアンチのヘイトスピーチだったと納得してくれましたが、それでも一、二言苦情を言われました。


 何とも島川さんは雑誌社と付き合いのある芸能事務所社長の娘さんなので、気を付けて欲しかったとか。


 まるで恭一さんが悪かったみたいに言って、イラッとしました


 あの雑誌社との今後の付き合いを考えた方がいいかも知れませんね。


 ネットの方は得意そうなイチゴさんに任せたら、イチゴさんは恭一さんがアイドルの夢川アカリに手を出そうとした訳ではなく、むしろ夢川アカリが二股しようとして修羅場になったと世論を操作しました。


「まあ、こんなもんでしょ」


 それで恭一さんに対する批判はほとんど収まり、ネット世論のヘイトは夢川アカリに向きました。


 あのアイドルさんには悪いですが、このままスケープゴートになっていただきましょう。


 炎上の次は生ゴミの処分です。


 私は学校の人を動かし、リナさんと生ゴミの両親を呼び出して生ゴミの処遇について話し合いました。


 まあ、言うまでもなくアレは退学です。


 既に問題を起こして退学させる所を、温情で残したのにまた問題を起こしたのですから。


 ついでに、長岡家のお二人に私と恭一さんの関係を話し、生ゴミの横行がリナさんを通して恭一さんと私への負荷になると言い、遠回しにお二人の離婚を勧めました。


 お二人が離婚してしまえば、リナさんと生ゴミの関係も過去の物になりますから。


 最近の生ゴミの振る舞いに思う所があったのか、お二人は意外なくらい前向きな返事をくれました。


 これで目障りな生ゴミも私の学校から消えますね。


 生ゴミ、家族を離散させた責任に苦しみながら生きていきなさい。


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