歪んでいる彼女の邪悪さが止まる所を知らない
無尾猫
第一部・序章
第0話『俺の彼女が歪んだきっかけ』
最悪だ。
俺、中学二年生の
別に今の彼女に愛想を尽かしたからとか、他の女に目移りしたからでは無い。
脅されたのだ。
自分とデートしろ、さもなくば彼女を害する、と
元々俺は同い年かつ幼馴染の
理由はルックスの差。
自分で言うのもあれだが、俺は中学一と言っていいくらい顔立ちが良くて、モテる。
彼女がいると言いふらしてもたまに告白されるくらいに。
で、俺の彼女のイチゴは見た目が地味で、交友関係は無いに等しい。
その状況でイチゴが俺と付き合ってるのがバレたら、あっという間に女子からイジメの対象になってしまうだろう。
だからイチゴにお願いされて、彼女と付き合ってるのを隠していたのだ。
しかし油断があったのか、ついこの間デートに出掛けていた時の写真を撮られてしまった。
イチゴの身を案じた俺は結局脅しに屈して、脅迫して来た女子とデートに出掛けた。
そしてその帰り。
無性にイチゴの顔を見たくなって彼女の家に訪れ、イチゴにすべてを話した。
理由があっても浮気は浮気。
これで振られてしまっても文句は言えない。
……と思っていたのだが。
「そんな事があったんだ。それは仕方ないね」
と丸眼鏡に三つ編みの地味な見た目の俺の彼女、イチゴは許してくれた。
「……いいのか?」
「うん。だって、きょーくんが一番好きなのは私でしょ?」
「それはもちろん」
「じゃあいいよ。私はきょーくんがモテモテだって自慢に思う事にするから」
「でもそれだと俺がいたたまれないんだが……」
「じゃあ今度私とデートしよ。今日あの女と行った場所を全部回って、上書きしたいから」
俺はイチゴのお願いを拒む理由もなかったのですぐに承諾した。
デートではイチゴの事だけ考えようとするも、脅して来た女と回った所を後追いするせいで常にあの女の事が頭にちらつき難儀した。
でもイチゴは楽しめた様子なので俺も納得する事にする。
しかし、いつまでも脅されたままではいられない。
俺は週が変わってすぐに色々動いて脅して来た女子が二度と俺とイチゴに絡む事が出来ない様に徹底して追い込んだ。
もう俺に絡む事も、イチゴの事を暴露する事も出来ないだろう。
これでまた平穏な日常が戻ると思ったが……そうはならなかった。
「ねえ、きょーくん。お願いがあるんだけど……」
ある日、イチゴがそう切り出してお願いして来た。
「これからね、たまに他の子ともデートして欲しいの」
………。
………。
………。
はい?
詳しく聞けば、今後もし女の子からデートのお誘いがあれば脅しが無くても返事を保留し、どんな相手から誘われたのかイチゴに知らせて欲しいとの事。
そしてイチゴが許可を出したらデートに行って、その後イチゴとも同じコースでデートして欲しいとの事だった。
「この前のデートでね。きょーくんが他の女の事を思い出しながらも必死になって私に気を遣ってくれてたのが凄く楽しかったの。どんな女がきょーくんに言い寄っても私が一番だってのに満たされた感じがして。出来ればまたそんな気持ちになりたいなーって」
と前回の事で新しい性癖に目覚めた事を説明しながら。
………。
………。
………。
うん。
色々理解が追いつかないが、イチゴのお願いなら受け入れようと決めたのだ。
そもそもの原因が俺の浮気だった訳だし。
ものすごーーーく微妙な気分ではあるが、要約すると彼女が浮気や女遊びを容認してくれるという事だ。
その代わりにイチゴの浮気も容認してくれとの話だったら絶対嫌だが、それは無いと言ってるし、普通の男なら飛んで喜ぶ事だから俺も前向きに捉えるとしよう。
……それが歪んだ愛情だとしても。
後になって思えばここでならまだイチゴの歪みを止められてたかも知れない。
しかしこの時の俺は歪んだイチゴの邪悪さと、その邪悪さが向かう先を知らなかった。
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